物流業界の脱炭素化を進める!中古トラックが拓く新たな物流の形

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脱炭素とは何か?

カーボンニュートラルとの違い

「脱炭素社会を目指す」「カーボンニュートラルの取組み」・・今や誰もがこの言葉を耳にしたことはあると思いますが、どちらも我々が生存していくうえで達成不可避なものとなっております。
しかし、この「脱炭素」と「カーボンニュートラル」では少し中身が違います。
「脱炭素」とは温暖化の原因である温室効果ガスの内、大部分を占める二酸化炭素(CO2)の排出を一切ゼロにするというものです。
対して「カーボンニュートラル」は、森林や植物が吸収できるCO2の量を超えない排出量に抑えてニュートラル(均衡)を保とうとするものです。

そしてこれらの取組みは当然世界全体で行われています。
世界全体で、どのように、どうやって、いつまでにを具体的に話し合い国際協定にしたのが2015年12月に採択された「パリ協定」です。
ここで掲げられた目標は「世界の平均気温上昇を産業革命前に比べ2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」といった目標が取り交わされました。

日本では東日本大震災の影響により原発稼働に対する議論があり、気候変動問題への取り組みが大幅に遅れていました。一方2020年に、中国による国連総会での突然の2060年脱炭素宣言、その後アメリカのバイデン大統領就任により、アメリカも脱炭素への舵取りが本格的に開始しました。
これらの動きを受ける形で日本も、2020年10月26日、菅首相が「2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロ」にする、いわゆる「カーボンニュートラル」という目標を掲げました。
これにより約5,900億円もの予算を投じ、政府が本腰を入れた環境問題への対策が始動したのです。
そしてこの「2050年カーボンニュートラル」実現に向けて、物流業界にも具体的な目標が立てられ、さまざまな取組がはじまりました。
運輸部門の国内でエネルギー起源CO2(燃料を燃焼することで発生する温室効果ガス)の排出量は、生産部門の約40%に次ぎ約22%に及んでいます。
その運輸部門のうち、貨物輸送に関わる排出量は約44%を占めています。

環境省が提示している「地球温暖化対策計画」では、下記のような取組が記載されています。
・環境に配慮した自動車使用等の促進による自動車運送事業等のグリーン化
・トラック輸送の効率化、共同輸配送の推進
・物流施設の脱炭素化の推進 など

また経済産業省が提示している「第6次エネルギー基本計画」では下記のような取り組み内容が記載されています。

・物流分野のデジタル化
・AI・loT等を活用したサプライチェーン全体の大規模な効率化
・省力化を通じたエネルギー効率向上
・モーダルシフト、共同輸配送、輸送網の集約を推進
・サプライチェーン全体での輸送効率化の推進 など

いずれも「2050年カーボンニュートラル」達成に向けて、これらの運輸部門が対応すべき目標や具体的な取組が始まっております。

日本と世界の最新の脱炭素政策

では日本以外の国ではどのような取組がなされているでしょうか。

まずEUでは、2020年10月に、2021年~30年の10年間に官民含め1兆ユーロ(約122兆円)を投資する「グリーンディール投資計画」というものを発表しています。
また「水素エネルギー」にも注力しており「EU水素戦略」として大幅な温室効果ガス削減に期待できる産業として水素活用技術も進展しています。

アメリカでは「ゼロエミッション(排出物を一切出さない)」技術を駆使し「ゼロエミッションカー」で排出量の実に30%を占め物流業界の温室効果ガスの削減に注力しています。

そして世界全体の温室効果ガス排出量のうち約30%を占めている中国ですが、中国共産党政権は「五大発展理念」という理念に基づいて、経済成長至上主義から転換を図ろうとしています。さらに発展の不均衡を是正していき、持続可能な社会システムに向けさまざまな取組がなされています。
前述した2020年の国連総会において習近平氏が「2060年にカーボンニュートラルを目指す」とした発言では世界を驚かせました。
これらはあくまでさまざまな取組の中からのごく一部の抜粋ですが、EUならびにアメリカ、中国などの大国が巨額の予算を投じ、この環境問題に取組んでいます。

物流業界の脱炭素化

物流業界のCO2排出問題

日本が一年間に排出する温室効果ガスは約11億2,000万トンにのぼります。(環境省2021年確報値より)
そのうち物流業界が属する運輸部門は17%にあたる約1億8000万トン。「貨物車・トラック」はその40%を占める7400万トンものCO2を排出しています。
ここ数年コロナ禍により自宅で過ごす時間が大幅に増えたためECサイトの利用が爆発的に増えました。それにより配達の頻度と小口化(小さい荷物)も大幅に増えました。
再配達の増加、さらには燃費の不効率化といった問題が顕在化し、脱炭素化への足かせとなっているのが現状です。
そしてこれらの排出量を具体的にどのような取組で抑えていくかを考える必要があります。

まず1つ目が「共同配送」という方法です。
これは複数の企業が同一の納品先(スーパーやホームセンターなど)に配送する場合、各企業が個別に納品するのではなく、商品を一か所にまとめて1台のトラックに積み込み、納品先を回っていくという方法です。
これによりトラックに空きスペースを埋めることができ、配送するトラックの数も減り、CO2の排出も抑えることができます。
2つ目は「EVトラックの導入」です。ガソリンを使わない電気自動車(EV車)に変えることで、CO2の排出ゼロで(ゼロエミッション)配送することが可能になります。

物流業界の具体的な脱炭素化施策

2014年に全日本トラック協会は、環境問題の対策に向けた具体的な取り組みとして「新・環境基本行動計画」を策定しました。
この計画は物流業界に携わるすべての企業が取り組んでいく指針となりました。
中身は下記の10項目となります。
① エコドライブの普及促進
② アイドリング・ストップの徹底
③ 先進環境対応車の導入促進
④ 輸送効率化の推進
⑤ 騒音の低減
⑥ 廃棄物の適正処理およびリサイクルの推進
⑦ 環境啓発活動の推進
⑧ 国等への協力要請
⑨ カーボン・オフセットの活用
⑩ 関係行政機関および団体との協調

これらの項目に基づき、各企業が、地域差や事業規模、業態などの特性に応じた取り組みを行っています。そして自主点検や自主評価を行い、各社のホームページに取り組みを紹介するなどの変化が現れています。

中古トラックと脱炭素化

中古トラックが脱炭素化に貢献

「新・環境基本行動計画」のなかの「先進環境対応車の導入促進」は、EV車(電気自動車)の活用になります。
しかしながら新車のEVトラックは、従来のガソリントラックに比べ車体価格が2倍強高く、まだまだスムーズな導入には及ばない企業がほとんどです。
そこで中古トラックを使いガソリンエンジンなどをそっくりEV車の仕様に再生する方法があります。この方法は車体を再生する時に出るCO2がガソリン車に比べ9割近くも減らすことができます。物流業界は他業界に比べて脱炭素が遅れているとの指摘も多いため、この中古トラック再生のEV化で、遅れからの脱却を進めています。

EVトラックを用いたシェアサイクル配置

「シェアサイクル」というサービスをご存知でしょうか?
これは文字通り「自転車を共有」できるサービスです。利用者は、設置された自転車ステーションからスマートフォンやICカードなどを使って借り、目的地まで利用した後、別のステーションに返却します。
CO2を排出しない移動手段としておもに都市部で普及しつつあります。
しかしながら、利用者は目的地付近に返却するため、どうしても各箇所の設置自転車数にバラつきや偏りが生じてきます。
この問題を、EVトラックを使って最適配置しようとする実証実験が東京都中央区とドコモ・バイクシェアが共同で運営する「中央区コミュニティサイクル(シェアサイクル)事業」で23年1月から2月にかけて行われました。
このEVトラックの充電は、同区晴海の倉庫に設置された太陽光パネルで蓄えられた電気で行われます。そしてこの実験を通して、CO2削減データをはじめ電力供給能力の測定や、電池の使用量の測定などさまざまなデータを回収しその効果について分析が行われています。

脱炭素化の税制と物流業界

地球温暖化対策税(炭素税)とは

企業などから排出される温室効果ガスに対して削減義務と環境問題の促進を促すために、排出量に対して課税しよう、というのが「地球温暖化対策税(炭素税)」です。
日本ではほとんど知られていませんが、温室効果ガスを税制化し抑制を促そうとする政策は、すでにヨーロッパで1990年代から始まっています。
とくにフィンランドでは1990年から炭素税が導入されております。
排出量1トンあたりの税率はスウェーデンが約16,000円と最も高く、スイスが約9,860円、フランスが約5,500円などEU諸国は高水準であるのに対し、日本は約290円と低水準となっております。

炭素税が物流業界に与える影響

今後、世界の潮流として日本でも炭素税(地球温暖化対策税)の税率が上昇していくことになっていくでしょう。そうなれば当然のことながらどの産業、業種であっても大きなコストアップにつながる事になります。
脱炭素化が遅れれば遅れるほど、この炭素税による影響が大きく出て、経営を圧迫し価格転嫁に繋がり、収益の悪化にというシナリオになりかねません。そして税率の変更はいつやってくるか分かりません。
したがって、この「炭素税(地球温暖化対策税)」の本来の目的である「温室効果ガス削減義務と環境問題の促進を促すため」に従い、脱炭素化への速度を早めることが急務であるといえるでしょう。

脱炭素化のための中古トラック

中古トラックのメリット・デメリット

物流業界の脱炭素化の一歩として、中古トラックをEVトラックへの移行することは大いに期待できる分野です。しかしながら、デメリットも存在するのも現実です。ここでメリットデメリットを考えてみます。

中古トラックEV化のメリット

・CO2を排出しないため、環境問題に大きく貢献できる
・エンジンが無いため、停車時、走行時が非常に静音である
・無段階での変速なので加速が強く上り坂も強い
・日々変動するガソリン代に左右されず、燃料費が下がる。(夜間充電を活用)
・ガソリン車に比べ整備費用が安価である
・エコカー減税の対象となり、自動車重量税が免税。また「グリーン化特例対象車」として自動車税が初年度概ね75%の減税が受けられる

中古トラックEV化のデメリット

・充電設備の設置費用が高額である
・走行可能距離がガソリン車に比べ短い(冷暖房の試用、渋滞での電力消費もある)
・充電時間が長い(急速充電でも約90分強)毎日充電が必要。
・自社整備の場合、整備の技能習得が新たに必要

デメリットの内容を見てみると、まだまだ環境整備が広く行き渡っていないという状況が見られます。

中古EVトラック活用のためのAI

しかしながら物流業界は、上述で挙げたデメリットを乗り越えて脱炭素に取り組んでいかなくてはなりません。しかし、AIやICTを上手に活かすことで、更に活用を進めることができます。

走行可能距離・ルートのシミュレーション

EV車は走行距離が短いというデメリットがあります。しかしながらあらかじめ1日の走行スケジュールやその距離、走行ルートの勾配の有無、冷暖房の稼働時間、積載量などすべてをシミュレーションし、またデータとして蓄積し、充電切れなどのリスク管理を行うことができます。AIやICTを組み込むことによってより精度の高い運用が実現するものと期待されます。

充電時間の管理

走行距離などのシミュレーションを立て、その中に充電時間を組み込むことで、より走行距離を延ばすことができ、パフォーマンス向上につながります。
また企業の電力量状況に合わせコストパフォーマンスの向上も期待できます。

バッテリーの劣化、交換管理

EV車にもバッテリーが搭載されています。経年による充電量の低下や交換時期をモニタリングする事によりそれにかかる費用の探知などがより早く正確に把握できます。

このように、これらのシミュレーションやマネジメントに、AIやICTを組み込むことによって、より精度の高い運用が実現していくでしょう。
物流業界の脱炭素化にはまだまだクリアしなければならない問題が山積しておりますが、業務の中核である「中古トラック」を活用する事で、新たな物流のかたちが次々と実現していき、よりよい地球環境に育っていくことが期待されています。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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