トラックを含めて自動車には「ファンベルト」という部品が使用されています。不具合が起きると走行不能になってしまうため、ファンベルトは自動車にとって非常に重要なパーツといえます。
普段から定期的な点検や交換をおこない、正常に作動するようメンテナンスが欠かせません。
ファンベルトの適切な交換時期や、交換の手順・注意点について解説します。ぜひ参考にしてください。
ファンベルトとは何か?
ファンベルトとは、エンジンの動力を車両の各種装置に伝えるためのパーツで、「Vベルト」や「リブベルト」とも呼ばれます。
エンジンのクランクシャフトの回転から動力をとり、車を動かすのに必要なエンジンの機構を駆動させる仕組みになっています。
ファンベルトという呼称ですが、近年では電動式のファンが一般的で、ファンベルトでファンを回している車はほとんどありません。
元々ラジエーターの冷却ファンを動かす役割を担っていた名残で、現在でもファンベルトと呼ばれています。
ファンベルトとよく似た部品に「タイミングベルト」があります。エンジン内部に組み込まれているタイミングベルトに対し、ファンベルトが取り付けられているのはエンジン外部です。目視で状態や動きを確認できるため、比較的メンテナンスがしやすい部品といえるでしょう。
ただし、ゴム製のファンベルトは長期間の使用で摩耗・劣化するため、定期的な点検・交換が必要です。
ファンベルトの主な機能と重要性
ファンベルトには、主に「エンジンの冷却」「バッテリーの充電」「パワーステアリングとエアコンコンプレッサーの作動」という3つの役割があります。
車のエンジンはそのまま稼働し続けると温度が上昇し、高温に耐えきれず故障につながる恐れがあります。
そこでエンジンの温度が上がらないように冷却するのがファンベルトの役割です。また、ラジエーター内の冷却水を循環させるウォーターポンプにエネルギーを伝える重要な役割も担っています。
また、オルタネーターにエンジンの回転を伝えて作動させるのもファンベルトの役割です。自動車はオルタネーターを回して発電し、エンジンスターターやライト類の電装機器を動かしています。
そのため、ファンベルトがなければ車としての機能を果たせないといっても過言ではないでしょう。
ハンドリングをサポートするパワーステアリングやエアコンを正常に機能させているのもファンベルトです。
一部の車種では、パワーステアリングやエアコンが電動化されていてファンベルトを必要としないものもあります。
ファンベルトの交換時期とサイン
異音がするとファンベルトが劣化・損耗している可能性があります。通常時には聞こえない「キュルキュル」という音がする場合、ファンベルトが伸びてしまっていたり、硬くなって切れかかっていたりするサインです。
そのまま放置しているとファンベルトが切れて走行不能になってしまうため、すみやかに整備工場やディーラーで交換・調整をしてもらいましょう。
走行距離も交換時期の目安になります。トラックの走行環境や保管状態にもよりますが、3万km〜10万kmごとの交換が推奨されています。
あくまでも目安であり、これより早く交換が必要になるケースもゼロではありません。
トラックの使用年数からも交換時期の判断が可能です。こちらも目安ですが、おおよそ5年から10年以上経過したら行うようにしましょう。
ファンベルト交換の手順
ファンベルトは手順さえ把握していれば自分でも交換可能です。
自分で交換する場合は、新品のファンベルト、スパナやラチェットレンチなどを用意し、以下の手順で交換します。
- バッテリーのマイナス端子を取り外す
- スパナやラチェットでオルタネーターのファンベルト調整用ボルト、オルタネーター固定用ボルトを緩めてファンベルトを取り外す
- ファンベルトをかける各プーリーに摩耗や傷、変形などがないかを確認する
- 新品のファンベルトを取り付けベルトの張り具合調整をしてプーリーのボルトを締める
- バッテリーのマイナス端子を取り付けて1~2回ほどクランキングする
- エンジンをしばらく回してファンベルトの動作と張り具合を確認する
ファンベルトの張り具合は、目一杯張るとベルトやベルト関連パーツに負荷をかけてしまう可能性があります。
緩すぎず、きつすぎずという調整が必要ですが、感覚的な部分が大きいため、慣れていないうちはプロの整備士に調整してもらうのが確実でしょう。
ファンベルト交換時の注意点
新品のファンベルトは同じ品番のものになっているかをよく確認しましょう。
ファンベルトの交換は1度行えばそれほど難しい作業ではありませんが、エンジンの中はパーツが多いためさまざまな工具が必要です。
車種によってエンジンルームの構造も異なるため、作業内容やかかる時間が変わってくる点も考慮しておく必要があります。
また、車両をジャッキアップして車の下から取り付けや調整を行わなければならない場合もあるため、交換に慣れていない場合は手間や時間もかかります。
状況によっては、無理をせず業者に依頼したほうが確実かつ早く交換がおこなえるでしょう。
交換における一般的なコスト
ファンベルトの交換にはファンベルト自体の費用と工賃がかかります。
どこで依頼するかや、ベルトの本数によって費用は変わってきますが、車種別の交換費用の目安は以下の通りです。
ファンベルト代 | 工賃 |
軽自動車 | 3,500円〜 |
普通車 | 4,000円〜 |
トラック | 6,000円〜 |
ファンベルトの張りを調整する費用は、トラックで約3,500円〜4,000円程度と交換費用よりは安く済みます。
工具があれば自分で調整も可能ですが、正しい張りの調整にはある程度の技術が必要です。慣れていない場合はプロに依頼するのが無難でしょう。
よくある質問とトラブルシューティング
走行中にファンベルトが故障したらどうすればいい?
基本的には、すみやかに運転を中止し、JAFやロードサービスに依頼するようにしましょう。
ファンベルトが切れてしまってもしばらくの間は自力走行が可能です。
ただし、急激にハンドルが重くなり、思ったように運転できなくなります。
また、充電・畜電系統に不具合が出てエンジンが止まってしまうと再始動できません。
長距離・長時間の走行は控え、安全な場所で停車する、もしくは近くのディーラーや整備工場までゆっくりと移動しましょう。
ファンベルトはどこで交換するのがお得?
費用を抑えたい場合は、オートバックスやイエローハットなどのカーショップでの交換がおすすめです。
純正品の使用が多いディーラーや整備工場に対し、カーショップではOEM部品という安価なパーツを扱っているため費用を抑えられます。
安全性を重視する場合はディーラーや整備工場で、安く交換するならカーショップを選択するとよいでしょう。
専門家からのアドバイス
ファンベルトを含むエンジン周りの整備は危険をともなうため、ファンベルト交換時には細心の注意を払って作業をおこなう必要があります。
また、ファンベルトの張り調整は一定の技術を要することに加え、張り方の手順を間違えるとテンショナーやプーリーなど他のパーツに負荷がかかり不具合につながるケースも少なくありません。
自分で交換すれば費用は抑えられますが、失敗して余計な費用がかかってしまっては本末転倒です。
少しでもファンベルトの交換に不安がある場合は、整備業者に依頼した方が結果的に無駄な費用を抑えられます。
依頼する場合、交換工賃が比較的リーズナブルなお店を選ぶなどの工夫をすれば、費用を抑えることも可能です。
事前に複数の業者に問い合わせて費用を確認し比較・検討するのがよいでしょう。