トラックのパワーステアリング、通称「パワステ」は運転手が軽い力でハンドルを操作できるようにするシステムです。
30年ほど前までは、トラックを運転するために腕力が必要だった時代がありました。ハンドル操作がとても重かったからです。パワステに対して「重ステ(重いステアリング)」という俗称があったくらいです。
1990年くらいからパワステが標準装備となり、ハンドル操作は飛躍的にラクになりました。
パワステの基本的な知識からメンテナンス・故障対策などを説明します。
トラックのパワステとは?
パワーステアリング(Power Steering)はドライバーが軽い力でも楽にハンドル操作ができるようにアシストしてくれる、操舵補助システムの名称です。
「ステアリング」は「ステアリングホイール」の略で、ハンドルだけではなく操舵装置全体のことを指します。
手で握るハンドルの部分と、その先に延びるステアリングシャフトやギアなどの操舵装置全体が「ステアリング機構」です。
パワステは油圧や電力の力でステアリングの操作をアシストします。このアシストによって運転者がハンドルを回す労力を減らし、よりスムーズに、疲れにくく運転できるようになるのです。
パワステの役割
もしパワステがなかったら、ハンドル操作はとても大変になるでしょう。車の重量と摩擦の抵抗があるため、ハンドルがとても重くなるからです。
特に車が停止した状態での操作が重くなり、ハンドルを切るのにかなりの力が必要となります。
車体重量の重いトラックでは、さらに重くなります。昔のトラック運転手に筋骨隆々の男性しかいなかった所以(ゆえん)ですね。
油圧式と電動式の違い
パワステには「油圧式」と「電動式」の2種類があります。トラックでは主に油圧式が使われています。
以下にそれぞれの簡単な仕組みを説明します。
油圧式パワーステアリング
油圧式は昔からあるパワステのシステムです。動力はオイルによる圧力で、油圧ポンプからステアリング内のパワーシリンダに油圧を送ります。
エンジン動力によって油圧ポンプを動かし、オイルによる圧力を使って操舵(ステアリング)を補助します。エンジンが停止しているときは、パワステ機能は働きません。
電動式パワーステアリング
比較的新しいシステムです。電動モーターが回転する力を使って操舵を補助します。電源が供給されていれば、エンジンの状態に関わらずパワステ機能は作動します。
電動式パワステは、アシストする部分によって名前が変わります。主に以下の3種類があります。
コラム式・・・ステアリングコラム内部でアシスト。主に小型車で使われており、車内にある
ピニオン式・・・ピニオンギヤをアシスト。操舵感が良く、幅広い車種で使われる。車外にある
ラック式・・・ステアリングラックをアシスト。主に大型車で採用される、車外にある
トラックのパワステは油圧式が多いですが、近年では電動式パワステを搭載したトラックも登場しています。
いずれのシステムも、ハンドルを回す労力を減らしてくれます。車をよりスムーズに、運転者が疲れにくく運転することが可能になります。
パワステのよくある故障の原因
ハンドル操作を軽くしてくれるパワステ。このシステムが故障するとハンドル操作は重くなり運転が大変になります。
操舵が困難になったり、坂道や傾いた地面などではハンドルが勝手に動いてしまったりすることもあり、とても危険です。
故障が起こる前に予兆を見極める方法を紹介します。
パワステの故障のサイン
パワステが故障したときの、最もわかりやすいサインは「ハンドルが重くなること」です。
ステアリングの外部動力アシストによって軽かったハンドル操作が途端に重くなったら、パワステシステムに異常が発生した可能性を疑ってください。
故障の原因は以下のようなことが考えられます。
パワステオイルポンプの不具合
ベルトの劣化や破損
オイル漏れ
異音の種類によって故障箇所の見当がつくことも
ハンドルが重くなる以外に、故障のサインとしては「異音」があります。
音の種類によってパワステの故障した箇所に大まかな検討がつく場合があります。以下は参考程度にご覧ください。
「ウィーン」など・・・オイル不足
「ガクッガクッ」など・・・ステアリングジョイントの不具合
「キュルキュル」や「キーキー」・・・ベルトの損傷
電動パワステの故障には、コントロールユニット、モーターやスイッチセンサーの不具合が考えられます。
パワステオイル漏れの原因
油圧式のパワステはオイルの圧力によってアシスト機能を駆動しています。油圧に使われているオイルが漏れ出してしまうと、本来のステアリングアシストが弱く、または不能になります。
油圧パワステの効きが悪くなったときは、まずはオイル漏れを疑ってみてください。オイル漏れの原因には以下のようなことが考えられます。
オイルポンプの不具合
パワステオイルの劣化・不足
水害(浸水など)
故障の原因がオイルの劣化や不足であれば、パワステオイルを交換すれば改善します。
経年劣化や衝撃など、システムそのものに異常が起こっている場合は部品交換や修理、または買い替えとなります。
効果的なパワステのメンテナンス
「パワステが故障して急にハンドル操作が困難になった」という事態にならないようにするためには、どうすればいいのでしょうか?
運転者ができることで重要なのは「メンテナンス」です。
パワステだけではなく、毎日使うトラックには日々のメンテナンスが欠かせません。
パワステのメンテナンス方法
パワステのメンテナンスで重要なのはオイルの交換です。
パワステオイルが劣化したり不足したりすると、本来のアシスト機能が働かなくなります。
オイルの交換時期の目安は以下です。
走行距離2万km
または2年ごと
上記を目安にパワステオイルを定期的に交換するようにしましょう。
自分で交換をする人もいますが、専門的な知識がない人は専門業者に依頼することをおすすめします。
パワステの修理方法
パワステが故障したとき、修理を素人がするのはリスクがあります。修理に慣れている人や知識がある人は可能な場合もありますが、できれば専門業者に任せた方が確実です。
急にハンドルが重くなったりしたら、パワステの装置が故障した可能性があります。ハンドルが重くなる原因にはパワステの故障以外にも、タイヤの空気圧の減少なども考えられます。
異変を感じたときは、早急に最寄りの修理工場やガソリンスタンドに立ち寄って、点検や修理をしてもらうようにしましょう。