個人事業主がトラック購入時に気をつけたいポイント

個人事業主がトラックを購入する際の注意点や必要な手続き、そして事業経費としての活用方法について記述します。

目次

トラックの購入と経費計上

個人事業主がトラックを購入する際のトラックの選び方、予算設定、経費計上などについて記述します。

事業目的に応じたトラック選び

トラックには、積載量によって小型、中型、大型があります。
小型は積載量が2~3トン程度のもの、中型は4トン程度のもの、大型は10トン程度のものです。形状としては、荷台がフラット型で汎用的な平ボディ、荷台が箱型のバンボディ、バンボディの両側が開くウィングボディなどがあります。

また、トラックには、ダンプ、タンクローリー、ミキサー車といったような特殊な形状・仕様のものもあります。
ダンプは、荷台の前の部分が持ち上がり、土や砂利などをすべり降ろせるようにしたトラック、タンクローリーは、石油などの液体を運ぶために重心が低くなるよう荷台を楕円形にしたトラック、ミキサー車は、生コンクリートを運ぶ車で、生コンが固まらないよう荷台を回転させながら走行することができるトラックです。

トラックでは運べない大きな荷物や、よりたくさんの荷物を一度に運ぶことのできる車をトレーラといいます。一般的にはトラクタ(けん引車)とトレーラー(被けん引車)を合わせて全体でトレーラと呼ばれていますが、正確には、荷物を積む部分をトレーラといい、これを引っ張る車の方はトラクタといいます。
トラクタ1台で複数のトレーラをけん引することが可能なため、トラックよりも輸送効率を高めることが可能です。

各個人事業主としてトラックを使用して運送業を行う場合には、荷物の量や状態などを考慮して利用しやすいトラックを選択する必要があります。また、事業用として経費計上が可能な車はあくまで仕事で車を使用する場合だけです。
個人事業主の場合、たとえば、仕事以外の私用で使用する分は経費計上できず経費を事業用分と私用分に分けて計上するのが原則となっています。

購入予算と経費計上

個人事業主が車を事業用に使用する際には、減価償却費として経費計上することができ、計上した経費には税金がかかりません。経費計上する方法は、車の購入費用を車の耐用年数に基づいて複数年にわたって費用計上する「減価償却」を行ない会計処理します。また、車を維持するための費用、たとえば、ガソリン代、自賠責保険と任意保険、自動車税、駐車場代といった費用も経費として計上することができます。

トラックの法定耐用年数は、ダンプ式の場合は4年、それ以外は5年となっていますから、事業用だけに使い私用には使わない(購入費を100%経費計上)ダンプ式のトラック(耐用年数4年)を購入する場合には、購入費用を4で割った金額を毎年減価償却費として計上することができます。
この減価償却費に所得に応じた所得税率と住民税率と事業税率を掛け合わせた金額分に対しては税金がかかりませんので、これを考慮して購入予算を設定すると良いです。

リースとの比較

トラックを用意する方法としては購入とリースがありますので、両者の比較を行ってみます。

リースと購入の比較と税務処理

トラックを購入する場合には、先にも述べましたが、購入費用の減価償却をはじめ、ガソリン代や駐車代など、自動車使用に関わる費用を経費に計上することができます。リースする場合には、リース会社と契約して毎月リース費用を支払っていきますが、このリース費用を経費として計上することになります。

カーリースは、初期の資金負担をしなくてもよいだけでなく、経費としてはリース費用を計上するだけなので、経理処理の手間も省けます。
このリース費用の中には、車両本体価格をはじめ、新車登録諸費用、自賠責保険料、車検基本料、自動車税、自動車重量税なども含まれています。これらの費用をリース費用として取りまとめて経費処理できるので、経理事務の負担が軽減されることになります。

また、トラックの所有権はリース会社にあるので、個人事業主の資産に計上をする必要もありませんし、減価償却の計算も不要です。つまり、リースの車は税金のかかってくる固定資産には該当せず、車にかかる各種税金に関しても基本的にはカーリース会社が対応してくれるので、個人事業主にとっては大きな節税対策になります。

金融機関やディーラーとの交渉

一般的に個人事業主は、収入が安定していない等の理由によりカーローンの審査に通りにくいといわれています。しかし、審査の基準を満たしていれば利用できる可能性もあります。
カーローンには種類があり、それぞれによって審査基準が異なりますので、カーローンを種類別に説明します。

銀行系カーローン

銀行系カーローンは、銀行などの金融機関が提供しているもので、金利は低め(1~4%)に設定されていますが、比較的審査が厳しい傾向にあります。このローンは、利用目的を自家用車と定めていることもあるので、事業用の車を購入する場合には注意が必要です。

ディーラーローン

ディーラーローンとは、車のディーラーが信販会社を通して提供するカーローンで、銀行系カーローンに比べると審査に通りやすいですが金利は高め(4~8%)です。さらに、車の購入手続きといっしょにローンの手続きもできるので、各々の手続きを別々に行うのに比べると簡単です。
ただしこのローンでは、購入した車を担保にするため、ローンの返済が終わるまで所有権はディーラーにあることになります。

自社ローン

自社ローンとは、車の販売店が信販会社を通さず独自に提供しているカーローンで、信販会社を通さず独自の基準で審査をしますので、審査に通りやすいです。
自社ローンはローンという言葉がついていますが、実際は金融商品ではなく、購入代金を販売店に立て替えてもらい、分割で返済していくというしくみです。金利がかからない代わりに車両価格の10〜20%程度の費用が上乗せされるのが一般的です。

事業用ローン(ビジネスローン)

事業に使う車の場合、事業用ローンが利用できます。
事業用ローンとは、カーローンではなく、事業を行うために必要となる資金全般について借り入れを行うことができるローンで、法人や個人事業主しか利用できません。
事業用ローンは、銀行、信販・クレジットカード会社、消費者金融などが取り扱っており、融資基準や金利などはそれぞれで異なります。例えば、銀行の事業用ローンの金利は1~15%程度です。

このように、事業用の車を購入する際には、多様なカーローンがありますので、審査基準や金利などを調べて申し込むと自分にあったローンが見つかります。

次にディーラーとの価格交渉ですが、一般に事業用であるトラックは乗用車に比べて値引額は小さいです。これは、最初からメーカーやディーラーの利益を乗用車に比べると小さくして販売価格を設定しているからです。
トラックメーカーやディーラーは数を売って利益を上げることを目指しています。ですから、価格交渉をしても大きな値引は期待できません。しかし、中古トラックであれば、新車よりは値引きを期待することができます。そのためには、「値引きをしてもらえれば即決することを伝える」、「メーカーやディーラーの決算期に購入する」、「車両本体の値引きではなくオプションの方の値引きをしてもらう」、「ディーラーローンを利用することを伝える」といった交渉をすると良いです。

保険と維持費

車の保険には自賠責保険と任意保険がありますが、事業用トラックの自賠責保険の方は、保険期間、積載量、によって定額となっていますで、任意保険についてその選び方を記述します。また、トラックの維持費についても記述します。

保険料の比較と選び方

自賠責保険は対人賠償に限られ、保険金額にも制限があるため、それだけでは対物賠償はできませんし、対人賠償の全額を賄えないケースが多くあります。また、自分側の死傷や車両の補償も受けられません。そうした自賠責保険では補償されない内容の補償を受けられるように加入するのが任意保険です。
ちなみに、普通貨物自動車、最大積載量2t超、事業用、保険期間24ケ月だと、自賠責保険の保険料は55,450円です。

任意保険の補償内容や保険料は保険会社との契約によりますが、保険会社によって様々な任意保険を用意していますので、複数の保険会社の保険商品を比較してみることをおすすめします。

任意保険には、個人向けと法人向けのものがありますが、個人事業主は一般にどちらの保険にも入ることができます。個人向けと法人向けの違いは、保険料は、一般に、個人向けの方が法人向けのものより安いですが、法人向けには個人向けにはない特約も用意されています。

例えば、車で運んでいた商品が損害を受けたときに補償される「事業用積載動産特約」や、事故のときに相手に支払うお見舞金などが補償される「見舞い費用特約」などは、法人向けの任意保険でしかつけられません。ちなみに、任意保険の目安については、大型トラックの場合は年間でおおよそ40万円程度とされています。

個人事業主が任意保険を選ぶ際には、複数の保険会社の商品や個人向けのものや法人向けのものを比較検討すると自分にあった保険を見つけることができます。

維持費の計画

トラックを維持していくための費用は大きく分けて「税金」、「固定費」、「変動費」に分類されます。税金には自動車税と自動車重量税があり、固定費には自賠責保険料、任意保険料、車検代、駐車場代などがあり、変動費には燃料代、タイヤやオイルなどの消耗部品代、その他修理費などがあります。

税金と固定費は定額ですので、維持費の予測をしたり計画を立てたりする際には、変動費について考慮することになります。維持費を低く抑えたい場合には、燃料代が安いスタンドを選んだり、車の走行距離を抑えたり、使い方を工夫したりといったことを検討します。また、固定費であっても、任意保険や駐車場代などは見直すことがきます。

年間の維持費の目安を、事業用10tトラックを例に示すと次のようになります。
税金 自動車税38,900円
自動車重量税26,000円
固定費 自賠責保険料27,725円
任意保険料400,000円
車検代210,000円
駐車場代:?
変動費 燃料代:?
消耗品代:?

上記について、数値が記入されている車検代までをたすと、702,625円になり、燃料代や消耗品代などは千差万別なので例示できませんが、大型トラック1台の年間維持費は100~150万円程度かかるといわれています。

関連法律と登録手続き

トラックを所有したときの法規制や自動車税について記述します。

トラック所有に関わる法律

トラックを所有して事業を行う際に最も大切な法律が「貨物自動車運送事業法」です。この法律は、貨物自動運送事業を正しく行うことを目的に制定された法律で、運送事業者は必ず守らなくてはいけません。貨物自動車運送事業法では、営業所、車両数、車庫、休憩、仮眠施設、運送資金について規制をしています。

たとえば、営業所に関しては、「建物が都市計画法や建築基準法や農地法などの法令に反していないこと」、「営業所として適切な広さがあること」、「借入の場合は1年以上の使用権限を持っている事」といった条件が設けられています。また、車庫に関しては、「保有している車両がすべて収容できる広さがあること」、「車庫の立地が営業所から10キロ以内であること」等の条件が設けられています。

自動車税や登録手続きの注意点

自動車税は、車の所有者が納める税金で、毎年4月1日時点での車検証上の所有者に対して課税されます。車の所有者の登録手続きは、所有者を管轄する陸運局へ行き、窓口で手数料納付書および申請書を入手し、手数料分の印紙を購入し、申請書に必要事項を記入し提出し、新しい車検証の交付を受ければ終了です。この手続きを経て自動車税の納付書が送られてきます。

事業用自動車の自動車税は経費として計上することができます。その勘定科目は「租税公課」とか「車両費」を使います。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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