トラックカスタムの改造ポイントと法規制チェックリスト

デコトラという言葉が有名なように、トラック運転手がトラックを自分好みに改造していることが多いです。
長距離・長時間の仕事の相棒となるトラックを改造することは、愛着が湧き、便利になる一方で、知識なく違法な改造をしてしまうと自分だけでなく会社側にも迷惑をかけてしまうことがあります。

国土交通省は、トラックなどの車両を改造することに関して「道路運送車両の保安基準」内で、「合法」と「違法」の定義を明確にしています。
今回は、この道路運送車両の保安基準に外れないようにトラックを改造するポイントや規制リストをご紹介します。

目次

トラック改造の基本知識

トラックといえど様々な種類や特徴がありますが、改造するのであれば利用用途に適したものにし、業務の効率化にもつなげたいところです。
まずトラック改造とは、実用部分(荷台など)を利用用途に合わせたり、各パーツを好みの色やブランドのものに変えたりすることを指します。
車体部分に関しては基本的にどのトラックも同じ構造ですが、業務内容などの用途に適したトラックに改造すれば、運送・業務効率も向上するでしょう。

トラックカスタマイズの魅力とは?

トラックカスタムをする魅力・メリットとしては以下が挙げられます。

機能性、操作性が上がる
既存のトラックは万人が使用しやすいようにシンプルかつ最低限の機能しか持ち合わせてない車両がほとんどです。
各種パーツを自分仕様かつ業務に適したものに替えることで、より使い勝手のよい機能性をもったトラックになるでしょう。
例えば、荷台のルームミラーを大きくする、シフトノブを標準装備のものから長くするなど、少しの改造でも使い勝手は大きく変化するはずです。

運転時の居心地が良くなる
長距離かつ長時間運転するドライバーにとって、走行時の居心地の良さは必要なポイントの1つ。
特に、早朝輸送・納期の仕事を受注する場合は、運転途中にパーキングエリアを使用し、仮眠をとることもあるでしょう。シートにカバーをつけたり遮光カーテンをつけたりと、カスタマイズすることで快適に業務できるでしょう。

個性を強調し、愛着も湧く
総合してカスタマイズを行うことは、自分のトラックの個性を強調できます。
例えば、自分の好きな色味で塗装を統一してみたりすることも可能です。
実際、業務効率や機能性の改造を行うことよりも、理想の外装や内装を作り上げることに力を注ぐドライバーは少なくないです。
このことで仕事の相棒であるトラックに愛着が湧き、メンテナンスも定期的にして長持ちさせたり、安全運転にもつながるでしょう。

改造前に知っておくべき法規制の基礎

トラックで公道を走行する際は、国土交通省が定める保安基準に適合した部品などを正しく装着しなければなりません。
しかし、トラックを改造した場合、下記の点で大幅な変更が生じることがあります。
・外寸(幅、長さ)
・車高
・重量(最大積載量)
・乗車定員
・形状
・排気量、燃料の種類

基本的にトラックを含めた国内の全ての車両は、新車登録時に国土交通省に登録した構造を変更することなく定期的な車検を通過することで運行可能な状態とみなされます。
仮に新車登録時に登録している構造に、手を加えてパーツの変更や外装などの改造を行い構造に大きな変更が生じる場合は、国土交通省の陸運支局で「構造変更手続き」を行い再登録しなければいけません。

さらに大きな変更が行われた車両は継続車検では対応できないので、車検の有効期間が残っている場合だとしても、新たに車検を受ける義務があります。構造変更手続きを行わずに車両の改造を行い走行し続けると、違法改造車として検挙され「6ヶ月以下の懲役か30万円以下の罰金」が科せられるリスクがあります。

改造できるポイントと車検対策

トラックの改造によって構造変更が必要であることを上述しましたが、改造できるポイントは決まっています。
そのため決められたポイント・パーツ以外を改造すると違法になり、車検も通らず、公道を走行できなくなるため注意しなければいけません。

人気の改造ポイントとその方法

トラックカスタムの人気ポイント・パーツとしては以下が挙げられます。

ウイングタイプの荷台
基本的にクレーンを使って荷物を積めないため、人力で運べないほどの大きい荷物や重い荷物を積むのは難しい作業です。

そこでウイングタイプの荷台に改造することが人気のポイント。具体的には荷台の後方部だけでなく両側面も羽を広げたように大きく開くように改造できます。
このウイングタイプに替えれば両側面も開閉ができるため、クレーンでの荷物の積み下ろしが可能になります。
人力や台車で積めないほどの大きい荷物や重い荷物を積む作業が多い場合は、ウイングタイプに改造するのがおすすめです。

テールランプ
トラックのテールランプのカスタムも人気で、定番となっている角型をはじめとして、LEDをふんだんに使用したものまで、あらゆるテールランプがあります。
会社の規則などが厳しい場合は、レンズのみの交換という手段もあり、丸ごと交換が難しいというドライバーに、おすすめなテールランプのカスタム方法もあります。

ナットカバー
普通乗用車とは違い、商用トラックのホイールとなると、ファッション性よりも強度を必要としています。そのため露骨なナットがむき出しになっていて、見た目に関してはスタイリッシュではありません。
そんなナットをワンタッチでカスタムでき、改造初心者にもおすすめなのがナットカバーです。

形から長さ、ナットカバー自体の装飾が豊富にあり、トラックのカスタムのジャンルはもとより、自分の好みのものでカスタムできます。
また走行時にも、光を乱反射させて存在感を出してくれる効果もあるので、夜間走行業務が多いトラックドライバーに人気です。

車検をクリアするための改造ポイント

初めてトラックを改造すると車検に通らないのではないかと心配になるドライバーの方も多いでしょう。
しかし、改造しても保安基準をクリアすれば車検に合格することはできます。また保安基準を満たさなくても、構造変更という重要な手続きを行い検査に通れば、今まで通り公道を走行することもできます。
トラックを改造する際は、保安基準の内容やクリアする改造ポイントなどを知っておくことが大事です。

車両の大きさ
車検の指針となる保安基準には、車の大きさが規定され、トラックのような大型車両には重要なポイントです。
保安基準で定められたトラックのサイズは、

小型トラック:全長:4.7m以内全幅:1.7m以内全高:2.0m以内
中型・大型トラック:全長:12m以内全幅:2.5m以内全高:3.8m以内

上記の規定されたサイズを超えてしまうと、それだけで車検に合格しないので注意が必要です。

タイヤ、ホイールのサイズ
保安基準の中にはタイヤやホイールのはみ出しに関する規定もあります。
以前はタイヤがフェンダー部分から少しでもはみ出したら即不合格でした。しかし現在は、地面へタイヤの中心を通した垂直な直線を延ばして、その直線とフェンダー外側部分から前方に30度、後方に30度の角度で測定を行い、この角度の範囲内ならタイヤがフェンダーから突出しても問題ないという内容に改正されています。つまり、10㎜のはみ出しが認められています。

ただし、タイヤのサイズを変更すると、スピードメーターが正しく表示されない可能性があります。車検では速度メーターの表示と実際の速度が適合しているかの検査も行います。
その際にタイヤの大きさが合わないと、速度メーターにズレが生じるため、交換する場合はサイズに注意しましょう。

ガラスとフィルムの透過率
車両のガラスの透過率も安全面で重要なポイントであり、保安基準内にも規定はあります。
まず運転席、助手席、フロントガラス、側面ガラスは可視光線透過率が70%以上なくてはいけません。
着色フィルムをいずれかのガラスに貼っている場合、ガラスとフィルムを合わせた透過率となります。フィルムを購入する場合は、後部座席は問題ありませんが、運転席や助手席側は保安基準に適した透過率のフィルムを選ぶことが必須です。

ヘッドライトの色
ヘッドライトに関する規定も保安基準で定められており、2015年からは規定が改訂され、それまでよりも検査基準が厳しくなりました。
まずライトの色は基本白色ですが、2005年12月31日以前に車検登録された車なら黄色でも可能です。
光軸の位置としては、前方に10mライトを照らした際にエルボー点が規定の位置になければいけません。また、光量を示すカンデラが1灯で6,400以上必要とも決まっています。

法規制と安全性への配慮

単に運転するだけなら既製のデフォルト車でももちろん良いですが、さらに機能性や効率性を追求するとなると、改造車なくして語ることはできないでしょう。
法的な範囲内での改造は十分に可能で、車検に通れば今まで通り業務・走行できます。ただ、安全性を配慮するために改造における規制はあるので、ルールを理解した上で改造を実施することが大事です。

改造に関する法規制の詳細

間違った改造をしてしまわないように、トラックの改造は何がよくて何が違法になるのか、詳しく法規制を見てみましょう。

突入防止装置を取り外す
トラックの後部に、バンパー(突入防止装置)がつけられていますが、これを故意に切断したり、取り外すことは禁止されています。
バンパーの目的は、車両やバイクなどと接触した場合に、車体の下に追突した車両がもぐり込むことを防ぐためで、安全面で必須のパーツです。

基準外のマフラーの装備
消音装置であるマフラーを基準に合わないタイプに変更したり、取り外す行為は禁止されています。これを行うと周囲に騒音を発し、多大な迷惑を与える恐れがあります。

ガラス部分に指定以外のステッカーや装飾板を取り付ける
フロントガラスや窓ガラスに指定以外のステッカーをむやみに貼り付けたり、装飾版を装着することは、運転手の視界を狭くし、事故につながる恐れがあります。
また、後部座席以外のフィルムも可視光線透過率が70%未満のものを貼り付けることが禁止されています。

灯火類の色変更
ブレーキや右折左折時などで点灯する灯火器で法令で認められている色として、
・ブレーキランプ:赤色
・方向指示器:オレンジ色
・番号灯:白色
これらを勝手に変更してしまうと、後続車が誤解を生むので禁止されています。

スピードリミッターの解除
全てのトラックには、常時時速90kmを超えて走行しないように、スピードリミッターが標準で装着されています。
走行速度とガソリンの供給を安定させる効果がありますが、外すことで危険運転へつながります。また、リミッターを装着していることを表すステッカーを故意に外すことも禁止しています。

これらに違反したり不正に改造したトラック事業者は処罰を受けることとなり、この間は営業停止となるので、十分に注意しましょう。

初回違反:20日×違反車両数
二回目以降:40日×違反車両数

また、トラック運転手自身も下記のように罰金などの罰則が課せられます。

不正改造
運転手は、改造する際も車両を基準内に適合させなければいけません。
これに違反した場合、6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が課せられます。

不正改造車の整備命令の無視
不正に車両を改造したことが検挙された場合、正常な状態に戻すように命じられます。命令後、15日以内に整備を行い変更し、地方運輸局長に報告しないといけません。これを破った場合は、50万円以下の罰金をかせられます。

安全性を確保するための改造ガイド

トラック改造をする際は、同時にメンテナンスも不可欠です。
整備不良のトラックは、改造後の走行時に事故を引き起こす・巻き込まれる原因となります。特にブレーキ、サスペンション、タイヤなどの重要な部品の整備は、安全走行に直結します。

タイヤの点検と交換
タイヤはトラックの安全性と運転効率に直結する部分です。
ホイール部分などを改造する前と後に、タイヤの溝の状態や空気圧もチェックし、必要な場合はただちに交換または補充を行いましょう。

電気系統の点検
人気の改造パーツであるライト、ウィンドウワイパーをはじめ、バッテリーなどの電気系統は改造の前後に定期的に点検し、劣化や故障があれば修理または交換を行うことが重要です。

ブレーキシステムの点検
ブレーキは長距離・長時間走行のトラックにおいて、最も重要な安全機能の一つです。
改造後は走行仕様も変わることがあるため、ブレーキパッドやローターの摩耗はこまめに確認し、必要に応じて交換しましょう。

改造・メンテナンス記録
改造後は購入時と車両の装備や機能が大きく変わるため、すべての改造・メンテナンス作業を記録し、履歴を管理しましょう。
これは将来の改造計画や車検時、売却時にとても役立ちます。

トラックは普通乗用車にくらべて、過酷な条件で使用されることが多いため、改造前後は適切な整備が不可欠です。
メンテナンスを怠ることなく、安全で効率的に改造したトラックで走行しましょう。

参考記事:不正改造の具体例 | 自動車|国土交通省
安全対策 | 全日本トラック協会 | Japan Trucking Association

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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