AIで解決する物流の課題と最新事例を紹介

物流業界の課題はAIを導入することによってどのように改善がされるのでしょうか。
AI導入のメリット・デメリット、AIがもたらす効果、そしてAIを提供している企業と、その製品について順を追って見ていきましょう。

目次

AIと物流業界

まず物流業界の現状や課題はどのようなものが挙げられるのでしょうか。その現状・課題に対しAIの導入によってどのように改善されるかについて解説していきます。

物流業界の現状

近年、物流業界ではいくつか課題とされていることがありますが、ここでは、人手不足と再配達の増加という2つの課題に焦点を当てて紹介します。

厚生労働省の調査では、トラックドライバーは他の産業平均と比べると、平均所得がおよそ1割~2割低いにもかかわらず、年間労働時間はおよそ2割長いことが分かりました。
この労働環境下で、ドライバーの高齢化も進み、年々人手不足となっています。
少子高齢化が進んでいる日本社会において、このような労働環境から、若い人材は物流業界を敬遠しがちになっています。
今後もドライバーの年齢が上がるにつれ、激務での事故の発生率の増大や心身に支障がでてくるドライバーの増加などが深刻になってくるでしょう。
さらに宅配便の配達では不在の家が多く、再配達するケースが増加し、配達員の労働量が過剰になってきていることも課題として挙げられます。

AIの導入と物流の改善

AIが浸透すると、まず到着予想時刻の予想ができるようになるため、配達前の事前連絡ができ、再配達の労力が削減できるようになるでしょう。
実際にECサイトで商品を購入した場合には、運送業者からLINEなどのアプリを通して消費者の希望する配達日時や時間を確認するシステムが構築されていますが、AIがさらに進化すると、パーソナライズドされた確認や行動の予測ができるようになるので、再配達の件数を削減することができるようになります。
人手不足の課題に関しては、AIの導入で在庫を一括管理することができるようになることで、ヒューマンエラーを無くし、労働力が削減できることが期待されています。

AIが物流業界にもたらす効果

AIが物流業界にもたらす効果はさまざまですが、ここでは倉庫業務の省力化と、配送ルートの最適化の2つ観点を紹介します。

倉庫業務の省力化

物流業務には倉庫への入庫作業があります。入庫作業は人間が商品のパッケージやタグなどを目で確認しなければなりません。
確認した後に、商品名や型番などを倉庫管理システムに入力しています。
これら一連の作業をAIに任せることで、倉庫業務の省力化が図れます。人間による目視とシステム入力作業を自動化することで検品業務を半分以下の時間でこなせることができるようになります。

配送ルートの最適化

AIの活用により、より効率的に配送を行えるルートを予測することが可能になりました。
これにより、ドライバーの業務時間短縮を実現することが可能になります。
2024年からは時間外労働時間の上限が制限されてしまうため、このAIによる配送ルートの効率化はさらに注目されるでしょう。

AI導入のメリット・デメリット

ここまでで、物流業界におけるAI導入のメリットが理解できたと思います。
ここでは、更にAIを導入するメリット・デメリットを確認してきいきましょう。

AI導入によるメリット

AIを導入するメリットは労働環境の改善と配送ルートの最適化です。

今日、物流センターの作業人員シフトの最適化やトラック輸送の人員配置の最適化などで省人化や効率化はすでに実現されています。
それに加えAIの導入によって、省人化や無人化を実現することができるようになります。これにより物流業界による人材の労働環境が劇的に改善されることでしょう。

また、複雑な要素や制約条件が絡む業務もAIによって最適化が図れます。それのみならずIoTによってモノをインターネットに繋げることで、さらなる効率化や、小型の電子装置の1つであるRFIDタグを活用した商品管理などで検品作業も効率化されます。
今後5G環境の整備が進むにつれて大容量のデータを取り扱えるようになるほか、画像認識による商品やラベルの高速検品も可能になるでしょう。
このように、AIの導入によって労働環境の改善が見込まれます。

配送ルートに関しては、上述のようにAIの導入を導入することにより交通の予測に基づいて渋滞予測や回避ルートの選定などができるようになり配送ルートを最適化することができます。
さらに現在は、自動走行システムを活用した高速道路でのトラック走行の実証実験が行われており、実施されれば物流業界にとって大きな戦力になるでしょう。

AI導入のデメリット

AIの導入は、メリットがある反面デメリットも生じてしまいます。
導入費用のコストとマニュアルのデメリットについても紹介します。

業務効率や生産性向上を実現してくれるAIを導入するには、導入のコストが欠かせません。
そのコストは決して安価なモノではなく、また導入にはある程度の時間がかかってしまいます。
ただ、これらは初期投資のようなものであり、AIの導入に成功することができれば、コスト以上の成果を得ることができるでしょう。
物流業界は社会問題にもなる課題を抱えているため、このような手立ては必要なはずです。

またAIを最大限活用するには、従業員の一人ひとりがAIを正しく理解し活用していく環境を整えておく必要があります。
そのためにも、適切なルールやマニュアルを作り、習得していなければなりません。このマニュアルの作成や習得にも時間が必要になるため、デメリットと捉えられています。
しかし、これらも、長期的な利益を考慮するとルールやマニュアルの習得のコストを超える利益を得ることができるはずです。

AIを提供する企業

AIを提供している企業とその商品には、どのような物があるでしょうか。国内外の主要なAI提供企業と物流向けのAI製品について紹介していきます。

国内外の主要なAI提供企業

株式会社NTTロジスコは、自動検品システムを提供しています。
これは、撮影された画像からレンタル機器の製造番号と電源アダプターの物品コードをテキストに変えた後に、システム上で自動的に検品するという製品です。導入することでミスの少ない検品を行えるようになります。

中国に拠点を置いているSirius Roboticsの日本法人であるシリウスジャパン株式会社では、最先端のロボット技術とAIを組み合わせた自立移動型ロボットを提供しています。
このロボットは倉庫内のレイアウト変更を行わずに、現状のままで導入できることが特徴です。
ロボット以外のインフラへの投資は不要で、最短2時間ほどで設置できるという強みもあります。

株式会社AITは、中国や東南アジアを中心に特化した、幅広い物流ノウハウを持っている総合物流企業であり、顧客のニーズに適した優良サービスを提供しています。
海上輸送や航空輸送や通関業務、国内配送などの出荷から納品までのトータルサポートを実施しています。
新サービスであるWINによって、web上にて輸入案件などを一元管理して、業務効率化しています。

物流業界向けAI製品

物流業界向けのAI製品についても紹介します。
株式会社ブレインパッドは、物流業務で必要となる人員の質と量を予測するための「予測システム」を開発しました。このシステム開発によって、人員コスト削減のほか人員配置の最適化を図る機能も開発したことで、業務のスピードアップとともに不要な業務の削減も可能にしています。
人手不足が目立っている物流業界にとっては、とてもメリットのあるAI製品となるでしょう。

ラピュタロボティクス株式会社の「AMR」は、倉庫内のAIがピッキング作業を終えた商品を指定の場所まで運ぶ役割を担っています。これにより、人件費を削るほか、ピッキング作業の効率化を図れ、長期的な経費削減も見込まれています。
また、「AMR」が移動している際には、人を感知するセンサーが反応し、従業員に道を譲るなどといった工夫がされていて、安全性も長けています。
人とAIが協働するという観点でこれからも注目されるかもしれません。

佐川急便では、Loogia(ルージア)というルート最適化サービスを導入しました。
集配業務にて使用されている端末とリアルタイムにて最適な集配順序を予測するLoogiaを連携することによって、従来アナログで行われていた集配順序の決定をシステム化することに成功しています。
このシステム化よって、ドライバーは業務効率化を実現しています。

Amazonでは、倉庫に導入された棚ごと商品を運ぶ自動走行ロボットを導入しています。
走行自動ロボットは、商品棚を作業員のところまで運んでくれるため、作業員は倉庫内を歩き回る必要がなくなります。
これにより、作業効率が上がり、従業員の負担問題や人手不足といった課題を解消できる可能性が秘めていると考えられます。

サントリーロジスティクスは富士通社と共同で「AIによるフォークリスト操作を判定するシステム」を導入しました。
ドライブレコーダーの映像を元に、従業員のフォークリスト操作を特定してくれます。危険操作として定められている3厳戒の操作シーンを抽出し、必要のない場面では動画を倍速処理しています。
このシステムを導入することで、操作全般の安全操作水準が上昇することでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

目次