近年スタッドレスタイヤの普及が進んでいますが、大型トラック用のスタッドレスタイヤとなると、タイヤチェーンと比べて出費は大きくなります。
さらに、長時間・長距離を常に走り続けるトラックは重量も重く、タイヤの磨耗が一般乗用車よりも激しいことが難点。
その点、タイヤチェーンは経済的で保管場所にも困らないコンパクトなので、雪道を走行する可能性があるトラックには魅力的です。
トラック用タイヤチェーンの基本
タイヤチェーンとは、積雪路面や凍結路の滑り止めとしてタイヤに巻きつけ走行するチェーンのことです。
近年普及しているスタッドレスタイヤの性能が上がり、チェーンなしで雪上や凍結路の走行はできますが、それでもタイヤチェーンの方が雪や凍結には強いのです。
2018年に国土交通省が、気象庁が警報を出すほどの大雪時は、「すべての車」にタイヤチェーンの装着を義務づける方針を発表しています。「スタッドレスタイヤを装着しているから大丈夫」ではなく、いざというときのためにタイヤチェーンについて知っておきましょう。
タイヤチェーンの種類と特徴
タイヤチェーンのラインナップは多く、大きく分けて「金属チェーン」「非金属チェーン」、新登場した「布製チェーン」があり、装着の仕方や走行状態も種類によって異なります。
金属製
耐久性が強い金属でできたタイヤチェーンは、凍結した路面でも安心して走行することが可能です。
ですが、凹凸があるので、走行中に振動が加わり乗り心地が悪くなる場合もあります。
非金属性
ゴムやウレタン製のタイヤチェーンは、振動がある金属製に比べると、よりスムーズな乗り心地です。耐久性と走行性を兼ね備えた最強のタイヤチェーンと言えます。デメリットとしては、金属製チェーンに比べて価格が高くなります。
布製
金属や非金属製のものに比べて、かなり軽く取り付けも簡単な布製タイヤチェーンもあります。扱いは初心者でも簡単ですが、耐久性に関してはやはり金属製・非金属性には劣るので、トラックの長時間・長距離には不向きかもしれません。
適切なタイヤチェーンの選び方
適切にタイヤチェーンを選ぶことは、安全運転の大きな要になります。
タイヤサイズの確認
タイヤチェーンを選ぶ時、まずチェックするべきなのは車両に合うタイヤサイズです。サイズが合わなければそもそも装着できない上に、仮に出来たとしてもすぐに外れたり車体を傷つけたりと事故の原因になる恐れがあります。
各タイヤサイズは側面に記載されており、タイヤ幅(mm)・タイヤの断面幅(%)、ラジアル、リム径(インチ)が自身で確認できます。
材質の種類
上記でもご紹介した通り、タイヤチェーンには金属・非金属・布製などさまざまな種類があります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを理解した上で、走行条件に合うものを選びましょう。
装脱着のしやすさ
チェーンを装着するとき、寒い屋外での作業になることがほとんどだと思います。場合によっては雪が降る中、せまい場所での作業になるかもしれません。トラブル防止のために、軽量で取り付け簡単な脱着もしやすいチェーンがおすすめです。
車両タイヤに合ってないタイヤチェーンを取り付けることは、タイヤの破損や大きな事故に繋がりかねません。素材の特徴を踏まえ、実際に使用する走行状況も考慮して選ぶと失敗しにくくなるでしょう。
このほかに、価格・収納のしやすさ・付属品についても確認しておくと、安全安心なタイヤチェーン選びにつながると思います。
タイヤチェーンの装着手順とコツ
トラックのタイヤチェーンの巻き方は、2種類の方法があります。
チェーンを広げてトラックを動かしながら巻く方法と、トラックは止めたままタイヤにチェーンをかぶせて巻いていく方法です。
どちらの方法を選んでも問題ないですが、使用するチェーンに合った取り付け方法で適切に行うようにしましょう。
装着前の準備とチェーンの確認
トラックのチェーンを巻く際には、「張り・たるみ・ねじれ・固定」の4つを意識しましょう。そしてチェーンを巻く前に揃えておいたほうがよいアイテムとして、「滑り止め付きゴム手袋」と「頭に取り付けるヘッドライト」があります。
金属製チェーンを素手で取り付けると、ケガをする恐れがあります。また、夜間帯や暗い倉庫などで取り付けなければならない場合は、両手が空くヘッドライトがあると便利です。
準備が整ったら、一番重要なチェーンがずれないよう、しっかりと張り強度を確認しましょう。理想はチェーンとタイヤの間に指が入らないくらいまで張った状態です。また、このときにチェーンがねじれたり、片方に寄らず、タイヤの中心にきたりしているかも要注意です。
たるみやねじれがあるとチェーン本来の性能を発揮できず、必要以上に負荷がかかるのでチェーンを破損させる恐れもあり大変危険です。
装着の手順
トラックを動かして巻く方法
まず取り付けるタイヤの後方、または前方にチェーンを広げ、ねじれがないように敷きます。
次に、広げたチェーンの中心にタイヤがくるようにトラックを動かし、たるみがでないように整えながらタイヤにかぶせていきます。
最後にチェーンに取り付けられているフックを使用し、ゆるみが出ないように張りを調整します。
タイヤにかぶせて巻いていく方法
チェーンの内側と外側が逆にならないよう確認し、タイヤの上からかぶせます。
まず内側のフックを取り付けて、たるみがないように整えながら外側のフックも取り付けます。最後にチェーンバンドを均等に取り付けてください。
どちらの方法も、たるみが出ないように均等にタイヤに巻き付けることが重要。
また、実際に走行する前に数十メートル走行してみて、再度チェーンを確認し、ゆるみやズレがあれば張り直すようにしましょう。
タイヤチェーンの取り外しと保管方法
チェーンの装着は2通りありますが、外し方は共通です。
装着したトラックチェーンは、基本的に装着した順番と逆の手順をとることで取り外すことが簡単にできます。また取り外したチェーンは、ねじれの発生を防ぐために、フック部分を留めてまとめて保管しましょう。
正しい取り外し手順
チェーンの外し方は、取り付け手順を逆にしていく要領で作業します。チェーンの着脱時は安全なスペースを確保して始めましょう。
つなぎ目がタイヤ後方に来る位置で停車させる
まずタイヤチェーンのつなぎ目がタイヤ後方部にくる位置で停車します。
ゴムバンドやスプリングを外す
次にゴムバンドやスプリングを外していきます。またカムロックタイプの場合は、レンチを使いロックを緩めて外します。
タイヤの外側→内側のチェーンを外す
チェーンが緩んだら、まずタイヤの外側からチェーンを外していきます。
外側→内側の手順で行うと、チェーンが緩みやすくスムーズに作業できます。外側が外せたら、続けて内側のチェーンも外しましょう。
車体を動かしチェーンを取る
最後に車体を動かして、チェーンを回収して脱着は完了です。
保管とメンテナンスのコツ
チェーンを外し終わり収納する際は、走行中に雪で濡れることを念頭に置いて、水が漏れないような保管ケースを用意しておきましょう。
使用後はチェーンの素材によって収納方法が異なります。まず金属製チェーンは水洗いをし、乾燥させてから保管します。防錆剤を塗っておくとサビの発生を予防でき長持ちします。
非金属性やゴムタイプのチェーンは、水洗いやタオルで使用時の汚れを取り除き、陰干ししてから収納しましょう。また一点注意したいのが、ゴム素材は熱に弱いので夏場は高温になりやすい環境下での保管は避けましょう。
これら手順を踏まず、そのまま使用済みチェーンを車内や保管場所に置くと、水濡れやサビなどの汚れが付くので注意してください。
雪道運転の安全対策
雪道は通常の天候の路面状態よりも危険性が高まり、慎重に運転する必要があります。
長距離運転に慣れた熟年トラックドライバーでも、雪道運転に不慣れな方もいるでしょう。安全運転のコツや、雪道・積雪の種類や状態別の注意点について理解しておきましょう。
タイヤチェーン装着時の走行テクニック
近年普及するスタッドレスタイヤを装着していれば、状態の悪い路面でも走れますが、雪道での走行パワーはタイヤチェーンが大きく上回ります。
そんな強力なタイヤチェーンですが、積雪路面以外で走行するとチェーンが切れて事故につながる恐れがあり大変危険です。
積雪が頻繁に起こる高速道路には、タイヤチェーンを着脱する場所が事前に設けられています。雪が一段と降り深くなる手前の地点や、長いトンネルに入る前後、サービスエリア・パーキングエリアなどに設けられているので、タイヤチェーンを使用する際は、着脱場所のチェックも欠かさずしておきましょう。
また走行中の路肩でチェーンを着脱すると、他走行車を巻き込むトラブルも起こりかねないので要注意です。
緊急時の対応と安全運転のポイント
雪道は見通しが悪く滑りやすいため、状況に配慮した安全運転がドライバーには求められます。
ゆっくりと発進する
急発進すると、凍結路面ではスリップしやすいので、ゆっくり発進しましょう。
急なハンドル操作や車線変更をしない
急なハンドル操作の方向転換や車線変更もスリップにつながる恐れがあります。
エンジンブレーキのうまく利用する
雪道で安全に停車するためのコツがあります。エンジンブレーキを使用して速度を徐々に落としてから、フットブレーキを優しく踏みましょう。
日陰や橋の上、トンネル出口付近はアイスバーンに注意する
上記地点は特にアイスバーンが発生しやすい場所です。これらの場所へ侵入・通過する際は、十分に速度を落として走行しましょう。
ヘッドライトはロービームに
吹雪やホワイトアウトで視界が悪くなったときは、ヘッドライトをハイビームよりロービームに切り替えると見えやすくなります。
リアフォグランプを活用する
同じく吹雪やホワイトアウトで視界が悪い場合は、後続車の視界不良による追突を防ぐため、フロントのフォグランプ・バックのリアフォグランプを点灯させて、自分の走行位置を周囲へ知らせます。
車間距離を普段より広めにとる
走行距離を保つことは常に求められますが、雪道は路面が滑りやすく、通常よりもブレーキがきき始め停車するまでの距離が長くなる傾向があります。車間距離は広めにとりましょう。
万が一、安全運転を心がけていても雪道を走行中にトラブルが起き、立ち往生してしまったら、専門のロードサービスに救助を依頼し、車の中で待機するのが基本。
そのように雪道でトラブルにあった場合、具体的に次のような流れで対応を行いましょう。
ハザードランプを点灯したまま停車
交通の妨げになるのを避けるために、車はハザードランプをつけて路肩に寄せて停めてください。ホワイトアウトの場合は、フロントのフォグランプ・リアフォグランプを点灯させ、周囲に車両の存在を知らせましょう。
マフラー周辺は除雪して排ガスを逃がす
積雪時にエンジンをかけたまま車内で待機する際は、マフラーの排気口が雪でふさがれないように注意しましょう。
排ガスが外気に出ず、車内に充満すると一酸化中毒を引き起こす危険があります。雪が激しい場合は、短時間で排気口が雪で埋まることがあるので、寒いですがエンジンを止めて待つのが賢明です。寒期の長距離運転は毛布や防寒着をあらかじめ車に積んでおくと安心ですね。
定期的な換気
待機中は、エンジンの入切にかかわらず、車内の空気を入れ換えるために、定期的に換気するようにしましょう。
これらを徹底して、想定外のトラブルが起こっても、二次被害が起きないように安全に待機しましょう。