トラックを安全に走行するために必要な点検や整備と聞くと車検を思い浮かぶ人が多いかもしれませんが、車検は車両が道路運送車両法の保安基準に適合されているか検査するものです。
比べて法定点検は車両の安全運行を確保するために定期的に検査が義務付けられています。ではどのようなスケジュールで検査を実施するのか、どのような検査項目があるのかなど詳しくご紹介していきます。法定検査以外にも日常で行う必要がある日常検査もご紹介しています。
トラックの定期点検の重要性と種類
車検とは異なる法定点検についてと日常点検を実施する際のチェックポイントをご紹介します。
法定点検の目的とスケジュール
トラックの法定点検は、装備不良による交通事故防止や排気ガスや騒音などが環境基準に満たされているか定期的に点検し必要に応じて整備を行います。定期的に行われるため定期点検とも呼ばれています。
事業用トラックの法定点検のスケジュールは2回あります。
・3ヶ月点検:点検項目数は50項目
・12ヶ月点検:点検項目数は100項目
点検は自動車整備工場で行うことができます。法定点検を怠ると道路運送車両法に基づき罰せられますので必ず行いましょう。
日常点検の実施とチェックポイント
日常点検は車両の安全運行を確保するために重要な作業とされています。
日常点検は毎日行うことが望ましいとされていますが、法定点検と比べて簡単な点検が多いため、怠ることなくしっかりと行うことが大切です。日常点検では以下の項目についてチェックしましょう。
車両の外観
車両のまわりを一周まわりながら目視で点検を行いましょう。
・ボディに損傷や変形がないか
・ガラスやライトに異常がないか
・マフラーに損傷や異常がないか
タイヤまわり
・タイヤの空気圧が減っていないか
・タイヤに亀裂やひび割れが起きていないか
・釘や異物がささっていないか
ブレーキまわり
・ブレーキの踏みしろが規定値を超えていないか
・異音がないか
エンジンまわり
・エンジンを始動させたときに異音や振動がないか
・スムーズに回転するか
灯火装置
・全ての灯火装置が正常に灯火するか
法定点検と日常点検の実施手順
法定点検を行うにあたって必要な準備や持ち物についてご紹介します。また、日常点検の手順もご紹介しています。
法定点検の準備と実施
法定点検は整備工場で受けることができるため、まず予約をしておきましょう。
検査日に必要な持ち物は以下の通りです。
・車検証
・検査費用
・過去の点検整備記録と点検整備ステッカーがあれば準備する
法定点検がなぜ重要なのかというと、車検(トラックの場合年に1回)だけでは車が正常に機能するかをカバーすることは難しいため法定点検を行うことによって、車の故障箇所が判明したり消耗品の交換を行ったりすることができ、急なアクシデントを防ぐことができます。
また、法定点検を受けたことでメーカー保証を受けることができるメリットもあります。
日常点検の具体的な手順とツール
まず点検前に必要な手順や注意点からご紹介します。
・平坦な場所で行いましょう
・タイヤに輪止めをかけましょう
・パーキング・ブレーキにしてギアをニュートラルにしましょう
・エンジンを止めてスタータ・キーを必ず抜き取りましょう
・エンジンが冷えた状態で行いましょう
・吸気ダクトに物を落とさないようにしましょう。
・エンジンの上に乗るときはバイブ類やエア・クリーナなどの補機類に足をかけないようにしましょう
・手入れ後はエンジンルーム内に工具などの忘れ物がないか確認しましょう。
・点検後はオイル漏れや水漏れがないか必ず確認しましょう。
日常点検の具体的な手順は以下の通りです。
1.車両の外観を点検する
2.タイヤを目視やタイヤゲージで点検する
3.オイル漏れやオイルの残量を点検する
4.ブレーキの効き具合を点検する
5.灯火装置を点検する
6.エンジンを始動させ異音や振動がないか点検する
必要なツールは以下の通りです。
・タイヤゲージ
・ドライバー
・懐中電灯
・エンジンオイルレベルゲージ
・警告灯
日常点検は法律で義務付けられているわけではありませんが、日頃から安全にトラックを走行するために全てのドライバーが行う必要があります。日常点検を行うことで、トラックを長く安全に乗ることができ、トラブルを未然に防ぐことができます。
点検時に注意すべきトラックの部分
主要部分となるパーツの点検方法についてご紹介します。
タイヤとブレーキの点検方法
タイヤとブレーキは安全な走行を左右する重要な部品です。そのため点検は適切な手順でしっかりと行いましょう。
タイヤの点検方法
タイヤの点検を行う際は必ずタイヤが冷えているときに行ってください。
タイヤゲージで空気圧を測り適正値にない場合は空気入れを使用して調整します。接地面全週や側面に亀裂や損傷がないかを目視で点検し、タイヤの溝も確認します。その際に交換時期を表すスリップサインが現れていたらすぐに新しいタイヤに交換しましょう。
ブレーキの点検方法
パーキング・ブレーキ・レバーを戻した状態から静かに引き、引きしろが多すぎたり少なすぎたりしないかカチカチ音を聞き、レバーの引きしろが想定範囲を越えていたら整備工場に持っていきましょう。
他にもブレーキシューやディスクローターなどの消耗品が劣化していないか点検も行い、劣化していたら交換が必要です。また、ブレーキランプが点灯するか、またブレーキフルードの量を確認しましょう。
エンジンと電気系統の点検方法
エンジンの異常は車両故障にも繋がります。電気系統も切れていると夜間や悪天候の際に事故を引き起こしかねないのでしっかり点検しましょう。
エンジンの点検
エンジンを始動させ異常な振動やアイドリング回転を行ったときに異音がでないか確認しましょう。また、オイル量や冷却水も適正量になっているかの確認や、バッテリ液量の確認も欠かせません。
バッテリ液量が不足していると水素ガスの量が増えエンジンを始動させたときに爆発する恐れもあります。他にもエンジンオイルの汚れも確認し、汚れている場合は交換が必要です。
電気系統の点検
まず全ての灯火装置が正常に点灯するか確認を行い、灯火していない箇所があれば交換を行います。そのままにしておくと重大な事故に繋がりかねないため、必ず交換してください。
タイヤやエンジンなどの交換は自分で行いにくいですが灯火装置の交換は車両によりますが比較的簡単に行えます。
1.エンジンを停止してライトをオフ
2.交換する箇所のバルブカバーとバルブを外す
3.新しいライトのバルブとバルブカバーを装着
4.ライトを点灯させて正常に点灯するか確認
作業自体は簡単ですが、安全に作業するために作業中はバッテリーの端子を外し静電気によるショートなどに注意してください。
トラックの点検に関する法律と規制
トラックの定期点検に関連する法律や規制、重要性について紹介します。
道路運送車両法に基づく点検の義務
トラックの法定点検に関連している法律や規制は以下の通りです。
道路運送車両法
道路運送車両法第47条では、自動車の使用者は点検および整備を行い保安基準に満たし維持しなければならないと義務付けられています。
道路運送車両法第48条では、自動車の使用者は定められている期間ごとに国土交通省令で定められている技術上の基準により自動車を点検しなければならないとされています。
これらを怠ると6ヶ月以下の懲役または30万以下の罰金が科せられることがあります。
必ず実施するようにしましょう。
道路運送車両法施行規則
道路運送車両法施行規則第35条の2では、トラックの法定点検の点検項目を定めています。
点検項目はいくつかに細かく分けられ
・ブレーキ
・タイヤ
・エンジン
・灯火装置
・ボディの損傷
・排気ガスや騒音
ここから更に細かく分けて点検されます。
点検記録と報告の重要性
点検整備記録簿は、トラックの点検結果と整備内容が記録されている大切な書類です。
道路運送車両法では点検整備記録簿の一定期間の保管が義務付けられており、事業用トラックの場合は1年間保管しなければなりません。
それだけでなく、過去の点検記録を残しておくと車両の状態を把握しやすくなり第三者に伝えるための手段にもなります。車検や監査の際にも提出を求められることがあるため、車検証と一緒に保管しておくと良いでしょう。