運送業界や物流業界では他業種に比べデジタル化が進んでおらず、業務の生産性への問題を抱えていました。
そこでスタートアップ企業により開発されたデジタルツールなどを企業に導入し、商慣行の見直しや物流の効率化を目指しています。ではどのような取り組みがされているのでしょうか。物流業界の現状やスタートアップ企業の役割などもあわせてご紹介していきます。
トラック業界の現状と課題
トラック業界が直面している課題や現状について紹介します。
物流業界の主な課題
物流業界では様々な課題に直面しており、中でも以下のような課題があります。
・燃料費や人件費などの運送コスト削減
・環境に配慮した持続可能な物流システムの構築
・増加する労働力需要に対しての人員不足
・効率的なサプライチェーンの構築と管理
また、物流業界では働き方改革による「2024年問題」への対応も課題に挙げられています。
「2024年問題」とは、2024年4月1日以降、ドライバーの時間外労働の上限規制(年960時間)が適応されることにより物流業界の売上やドライバーの収入が低下し物流コストが増加する恐れがあり、デジタル技術や業務の自動化を導入し業務の効率化を図り、人の負担を減らす取り組みを行う必要があります。
日本の物流業界の現状
日本は超少子高齢化が急速に進んでおり2015年頃から全体の生産年齢人口が減少しています。中でもトラック業界で働く人の約45.2%が40〜54歳のため2027年には日本の物流トラックドライバー24万人分の労働力が不足するといった調査結果まで出ています。
これらの現状を打破するためには、物流システムの導入やAIやドローンを導入し新しい体制作りが必要不可欠でしょう。
日本の物流スタートアップの革新的取り組み
従来の物流業界の課題や問題を解決するために新しいアイデアや技術を開発し、課題に取り組んでいる海外の企業と日本の企業を紹介します。
海外の物流スタートアップの例
海外の物流スタートアップは、物流業界に画期的なアイデアと技術で自社の強みを活かし新たな市場機会を開拓している企業がいくつかあります。中でも注目されている企業をご紹介します。
flexport(フレックスポート)
アメリカに本社を置く貨物利用運送業者で、多くの貨物利用運送業者の中でもいち早くデジタル化に着手し、貨物輸送を効率的に管理するデジタルプラットフォームを顧客へ提供しています。
このプラットフォームは、注文管理・輸送・税関手続きだけでなく金融や保険などサプライチェーンの全ての側面をカバーしています。
同社が物流業界に与えた影響は
・輸送業界で手書きで行っていた作業や複雑化されていたプロセスを自動化させることで管理時間を大幅に短縮しコスト削減を実現
・様々な運送手段と提携し企業が世界中のどこにでも貨物を輸送させることを容易にさせた
また、同社は世界最大の小売業者であるAmazonとも提携し更なる飛躍を見せています。
https://forbesjapan.com/articles/detail/48514
Rivigo(リヴィゴ)
インドの物流業界でトップシェアを占めているスタートアップ企業です。
トラックの運行と管理にテクノロジーを活用しており、車両をテクノロジーと統合することでリアルタイムで車両の位置と状態をモニターできる車両管理を実現させました。
同社がインドの物流業界へ与えた影響は以下です。
・同社のAIテクノロジーで配送ルートの最適化により配送時間を50%削減・配達の遅延を30%削減させた
・燃費を最適化し排出ガスを削減するテクノロジーも活用しているため環境への配慮とエネルギー効率の向上可能になった
https://techblitz.com/rivigo/
日本の物流スタートアップの例
海外だけでなく日本でも新たなアイデアやテクノロジーを導入している企業がいくつかあります。中でも注目されている日本の物流スタートアップ企業を5つご紹介していきます。
株式会社オプティマインド
オプティマインドは『世界のラストワンマイルを最適化する』ことをテーマに掲げています。
ラストワンマイルとは、最寄りの配達所から消費者の自宅や受け取り場所の店舗まで届ける物流の最後の区間のことです。
ラストワンマイルが抱えている課題の中には再配達によるコスト増加や配達量と人員が見合っていないための人手不足などの様々な問題を抱えています。
そんな現状を、より快適に最適化された配達ができる『Loogia』を開発しました。
・走行データ学習型配車システムで誰でも簡単に最適な配車計画を作成可能に
・最適化された配車計画と配送ルートで人件費を削減
・配達時間15.0%.走行距離9.7%.CO2を14%削減
Loogiaは多くの物流業界へ導入されており、導入した企業は業務効率を20%・物流コストを10%削減できたようです。
https://www.optimind.tech/
株式会社ダイアログ
2013年から物流業界が抱えている様々な課題に対し多様なサービスを提供し解決へと導いています。
同社が展開している、クラウド型倉庫在庫管理システム『W3 mimosa』は2023年現在で日本国内で最も多くの導入実績を誇っている倉庫在庫管理システムの1つです。
このシステムの強みは
・入出庫管理だけでなく在庫・棚卸・受注・発注・顧客・分析の機能も備わっており倉庫管理作業を更に効率化させることが可能
・クラウド型のため初期費用も抑えられカスタマイズ性も優れているため企業のニーズにあわせてシステムの構築も可能
大手物流企業が『W3 mimosa』を導入し在庫精度も上がったため顧客満足度を向上させることができたようです。
https://www.dialog-inc.com/
Shippio(シッピオ)
日本初のデジタルフォワーダーで国際物流における貿易業務を伴う作業を効率化するクラウドシステムとフォワーディング業務をまとめて提供するサービスを行っています。
荷物の一括管理や最適なルート提案など備わっており、従来の国際物流の業務を自動化することで貿易業務を50%削減させ国際物流に大きく貢献しています。
Shippioを利用することで人の負担を減らすだけでなく、荷主と倉庫会社も繋がるオープンプラットフォームの構築にも取り組みを進めています。
https://service.shippio.io/
CBCloud株式会社
同社は物流DXプラットフォーム『CBCloud』を展開しており、荷物の位置情報や状態をリアルタイムで把握できる機能や、最適な配送ルートを提案する機能などを備えています。
導入企業も増え続けており2023年3月期には前年比2倍、プラットフォームを利用する荷物の総数は前年比2.5倍にもなりました。
他にも『PickGo』を運営しており、荷物を運んでほしい依頼主と配送ドライバーをマッチングしてくれます。
このアプリの強みは、各商業施設と連携しており軽貨物がメインの配送パートナーで登録ドライバー数は5万人を超えているため最短30分で配達完了することを実現可能にしました。
https://cb-cloud.com/
株式会社シマント
同社はデータウェアハウス(以下DHW)の開発や運用を進めており、物流業界においてもDHWを活用したサービスを提供し人手不足や配送コスト増加などの課題を解決できると考えています。
実際に今提供されているサービスは各メーカーからの発注フォーマットを変えずに物流事業者側でデータ統合できる取り組みを行い、手作業で行っていた作業を自動化させ配送効率を15%向上し、配送コストを10%削減させました。他にもドローンの配送の実用化を目指す取り組みや、カーボンニュートラル燃料の導入やリサイクルの推進などのサステナビリティの取り組みも新たに進めています。
https://simount.com/
トラック業界の未来とスタートアップの役割
テクノロジーの普及により未来にもたらす変化やスタートアップの役割について解説します。
テクノロジーの進歩と物流業界
テクノロジーの進歩は物流業界に大きな影響を与えています。
・物流プロセスの効率化と自動化が進みルート最適化や在庫管理の最適化が進んだ
・ブロックチェーン技術の進歩により製品の流れや在庫状況がリアルタイムで把握できるように
・個人や小規模事業者向けのオンデマンド配送サービスが拡大
・データ活用によって効率的な物流計画が可能に
テクノロジーの進歩により物流業界は、より効率的な働きができるようになりました。
スタートアップが担う役割
物流スタートアップ企業は以下のような役割を担っています。
・物流業化に新しいイノベーションをもたらし業界全体の進化を促進
・課題に対し新たな解決策の提案をすることで課題解決をアシスト
・テクノロジーを活用することで効率化を図り物流プロセスを改善
・顧客のニーズに合わせたサービスを提供することで新たなビジネスモデルを提供
・環境に配慮した物流システムを構築し未来へも貢献
物流スタートアップは柔軟性が高いため市場の変化に迅速に対応し、持続可能な発展に貢献する重要な役割を果たしています。