トラック輸送では、荷崩れにすることで積み荷が落下して、飛散してしまい、後続車や対向車にぶつかる事故が、残念ながら後を絶ちません。
荷物を安全に、かつ確実に目的地に届けることが使命のトラックドライバーにとっては、荷崩れは、絶対に避けなければならないトラブルであるとともに、プロのドライバーにとっては、恥ずべきトラブルでもあります。
物流におけるAI活用のメリットはさまざまあり、現在も日々進歩していますが、AIによって、荷崩れを防止することはできるのでしょうか?
本記事では、AI技術によって、どのように物流業界が変革しているのかを紹介するとともに、荷崩れ防止のためには、どのようにAIが活用されていくのかについて解説します。
AI技術による物流業界の変革
近年は物流業界でも「2024年問題」など、さまざまな解決すべき課題が山積しています。
それらの課題を解決するために、「AI」が広く活用され始めているのをご存知でしょうか?
物流業界は、日々進歩しているAI技術を活用することで、近年、劇的な進歩を遂げています。
AIを活用することで、倉庫作業が自動化されたり、効率化が図られたり、安全性が向上したりしています。
アメリカの物流は、日本の物流の10〜20年後の姿と言われますが、アメリカでは既にAIを広範囲で活用されていて、世界のAI市場の39%を北米が占めるほどに成長していて、日本の物流業界も、その影響を強く受けています。
まずは、物流業界が、AI技術によってどのような変革が起こっているのかについて、具体的な例をあげて説明します。
AIの導入メリット
AIは物流業界のあらゆる場面で活躍しています。
この章では、物流業界でAIを導入し、活用するメリットについて解説します。
物流業界で、AIを導入することにより、享受できるメリットには、おもに以下のものがあります。詳しく見ていきましょう。
在庫数量の適正化
AIの活用で、物流予測がより精度高く行えることで、販売予測数量から逆算して、必要な在庫数量を導き、余剰在庫や滞留在庫の軽減が可能になります。
人員配置の最適化
正確な物流予測が可能になることで、必要となる人員数が把握できるため、スタッフのシフトを効率的に組むことができます。
AIロボットで労働力不足が解消
倉庫内で荷物を運搬する「自律走行搬送ロボット」などの導入により、これまで人が行ってきた運搬作業などをロボットに任せることで、人が対応しなければならない業務が減るため、労働力不足が改善します。
配送計画・ルートの最適化
より効率的な配送ルートをAIが予測することで、ドライバーの業務時間の短縮が可能になり、ドライバーの業務が効率化されることで、ドライバーのモチベーションの低下を防ぐことにもつながります。
過疎地などへの物流を可能に
人手不足もあり、過疎地域への配送を定期的に行うことは簡単ではありませんが、ドローンを活用することで、配送が可能になります。
AIは、蓄積された膨大なデータを分析し、ディープラーニングする中で、最適な対応策を提案でき、さらに、AIロボットの活用によって、革新的なソリューションが生まれる可能性が高まります。
AIの活用実例
では、物流業界での、AIの活用の具体的な事例を紹介しましょう。
まず、倉庫業務におけるAIの活用事例を紹介します。
棚ごと商品を運ぶロボット(Amazon)
Amazonでは、棚ごと商品を運ぶ「自動走行ロボットDrive」を倉庫に導入しています。
このロボットは、商品棚の下に入り、棚を持ち上げ、作業員の前まで移動してくれます。入荷した商品の棚入れの作業や、受注商品の棚出し作業を行ってくれるため、従業員の作業の負担軽減や、作業の効率化が図れ、人手不足解消に貢献しています。
次に、検品業務におけるAIの導入事例を紹介しましょう。
AI画像認識技術で自動検品(NTTロジスコ)
NTTロジスコでは、AIによる画像認識技術を活用した、自動検品システムの導入をしており、機器本体の製造番号と、電源アダプターにある物品コードの撮影画像から、画像認識処理してテキスト化することで、自動検品を可能にし、検品ミス0%を達成しました。
配送業務におけるAIの導入事例も紹介しましょう。
AIで配送網設計の最適化(ファミリーマート)
ファミリーマートでは、AI技術を活用して、配送ルートの最適化に取り組んでいます。
人の経験と勘に頼らざるを得ない配送ルートの設計を、自社開発のAIで行うことで、効率的な配送が可能となるルートを提示できるようになっています。
荷崩れ防止のためのセンサーテクノロジー
荷物の破損トラブルの原因は、実は、荷崩れ・転倒によるものが4割を占めています。
荷崩れで破損してしまった荷物が、半導体や医療機器など、高価な精密機器だった場合には、納期に間に合わせる為のコストは莫大となり、会社の経営にも大きな影響を与えかねません。
荷崩れを防止するために、センサーテクノロジーなど、最新のAI技術が活用されています。
AIセンサーを活用することで、輸送中の荷物の状態が、どのような状態にあるのかをモニタリングし、異常な振動や傾きが起きたときに検知できます。
荷崩れが起きそうな状況をリアルタイムで把握でき、即座に対応することが可能となります。
また、画像認識技術とAIのディ―プラーニングを活用することで、荷物の配置状態を分析することで、荷崩れのリスクを予測します。
現在では、荷崩れ防止のためのセンサーテクノロジーである「ティルトウォッチ」を活用する輸送業者も増えています。
ティルトウォッチの原理と効果
ティルトウォッチ(TILTWATCH)は、アメリカのSpotSee社が開発した、転倒・横積み禁止対象物の、輸送管理に適した傾斜検知製品です。
使用方法は、梱包箱の側面の右隅に1枚、裏面の同じ位置に1枚貼りつけます。
箱が落下した場合には、ティルトウォッチ中央部にある窓が、赤く変色するため、傾きがあったかどうかを、目視で簡単に確認できます。
対象となる貨物に、貼り付けるだけという簡単なものですが、輸送業者への注意喚起となります。
ティルトウォッチの利点と実用例
ティルトウォッチは、一度赤く変色すると、元に戻すことができないため、作業者に対して、転倒などを起こさないように抑止力となり、転倒や荷崩れなどによる、商品の破損トラブルを防ぐ効果があります。
実用されている分野は、半導体製造装置や医療機器、太陽光発電パネルや音響機器、セラミック製品、美術品などの、高価な荷物の運送時に、幅広く使われています。
具体的な実用例としては、半導体製造装置のメーカーで使用されており、ティルトウォッチ
を導入したことによって、輸送状況を可視化できています。
多少のコストアップはあるが、今後の輸送方法の改善策を検討する上での判断材料になり、返品や回収よりはコストは安く、梱包方法を変えるなどの自助努力をするようになったと、効果を実感されています。
AIとセンサーの未来的統合
最後の章では、AIとセンサー技術が、物流業界をどのように変えていくか、また、センサー技術の今後の進展について解説します。
物流業界における未来予測
センサーはAIと組み合わせることで、さらなる相乗効果を発揮します。
とくに、インターネットにつながることで、IoTセンサーとして、急速に発展を遂げています。
今までは収集が難しかったり、収集に莫大なコストがかかったビッグデータを、大量に簡単に収集できたりするようになりました。
IoTセンサーによって集めた大量のデータは、AIによるデータ分析を加えることで、効率よく、しかもスピーディに活用できるようになっています。
これにより、多くの分野で、IoTセンサーとAIを組み合わせることによって、自動化、また自動化による省力化が進んでいます。
今後、物流業界において、AIセンサーの活用はさらに進んでいくと考えられ、将来的に、さまざまな変革を物流業界にもたらすと予測されます。
革新的なセンサー技術の発展
IoTセンサーには、現在さまざまな種類があります。
光や音、温度、加速度など、さまざまなデータを取り扱えるようなセンサーが開発され、活用され始めています。ここでは代表的なセンサーを紹介します。
・加速度
・光
・環境(温度・湿度)
・イメージ・画像
現在、上記のようなセンサーが活用されています。
加速度センサーは、対象となる人やモノ自体の、速度の変化を検知するセンサーです。
データの分析により、対象となる物に振動が加えられた事実、そして、どの程度の衝撃が加わったかという情報が収集できます。
使用例としては、自動車のエアバッグに内蔵されています。
光センサーは、赤外線や紫外線など、さまざまなスペクトルの光を検知します。
使用例として、自動ドアなどに用いられている、人感センサーに組み込まれています。
具体例としては、株式会社サニックスが行っている、太陽光発電設備の通電状況を、IoTセンサーで遠隔監視できるシステムがあります。
太陽光発電設備が、落雷や暴風、汚れなどにより故障発電量が低下した際に、パソコンやスマホでリアルタイム監視できます。
温度や湿度など、周囲の環境がどのように変化したかを検知するのが環境センサーです。
使用例としては、エアコンや冷蔵庫に搭載されている、温度センサーがあります。
具体的な使用例としては、京セラ株式会社が進めている、IoTセンサーを活用した農業支援があります。AIによりIoTセンサーで集めた莫大なデータを分析することで、水や肥料を効率よく供給することが可能です。
イメージセンサーや画像センサーは、可視光の強弱を、電気信号に変換することで、画像データとして取得できます。
主にカメラに利用されていて、画像処理技術を組み合わせることで、自動運転技術に活用されています。
具体的な使用例としては、日立物流のIoTセンサーとAIを用いた運行事故防止システムがあります。このAIセンサーは、ドライバーの運転前後や、運転中の心拍数などの身体的なデータを、車両に設置したドライブレコーダーから得ることで、ドライバーが、疲労などにより、注意力が低下することで起きる事故リスクを予測し、管理者へ通知できます