今注目されているサステナビリティツーリズムとは?

地域活性化のための取り組みである「サステナビリティツーリズム」ですが、日本国内ではまだ広く認知されていません。この記事では、サステナビリティツーリズム定義や実践方法、その役割について見ていきます。

目次
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サステナビリティツーリズムとは?

まずは、サステナビリティツーリズムの基本的な定義と、その重要性について解説します。

サステナビリティツーリズムの定義と基本的な考え方

「サステナビリティツーリズム」とは直訳すると「持続可能な観光」という意味です。
定義としては、観光業の発展によって起こる、環境汚染や生活環境の悪化などの課題を回避しながら、地域の独自な自然や文化を活かした観光地づくりが、サステナビリティツーリズムにあたります。

なぜ今、重要なのか?

サステナビリティツーリズムが重用視されている一番の理由は「マスツーリズム(観光の大衆化)」と考えられています。

昔は富裕層の娯楽であった観光旅行ですが、第二次世界大戦後の経済発展によって幅広い層に広がり、より親しまれるようになりました。日本では1970年の大阪万博を機に大衆化が進みましたが、観光業の発展のための過剰な観光客の来訪や行き過ぎた開発によって「オーバーツーリズム(観光地の許容以上の旅行者により、地域の人々や資源に悪影響を与えること)」が起こり、深刻な問題となっています。
ゴミ問題・騒音問題・環境汚染・自然破壊によって、住民の生活環境や自然環境に過度な負荷が与えられてしまいました。それの改善策として生まれたのが、サステナビリティツーリズムであり、

実現のためには「環境や文化を守ること」「地域の人に配慮すること」「伝統文化を持続可能にすること」が重要です。
まず「環境を守ること」は、自然の本来の美しさを保護することを指します。観光は現代社会において一般的な娯楽活動として広く浸透していますが、地域の観光地化に伴い、本来の環境や文化が失われるという問題点もあるのが現状です。
例えば、木々の伐採やゴミの不適切な処理による環境汚染がそれに当たります。環境を維持、保護することで、結果的に観光の持続可能性を高めます。

次に「地域の人に配慮すること」も大切です。観光地化が進み、外部からの資本で経済的には潤うものの、ゴミ問題や交通渋滞、騒音などが発生し、地元の住民の生活の質が損なわれる可能性があります。サステナビリティツーリズムの実現に向けて、地元住民の生活環境を守るための措置も欠かせません。

最後に「伝統文化を持続可能にすること」についてですが、祭りを初めとする地域の行事、食文化、工芸技術など、何世代にもわたって受け継がれてきた伝統文化は、過疎や関心の減少などにより一度廃れてしまうと、再興が難しくなっています。伝統文化に焦点を当て、観光資源として上手く活用することで、新たな価値を見いだし、次世代への継承も可能になります。

実践方法とおすすめスポット

続いて、サステナビリティツーリズムを実践するための具体的な方法と、おすすめのスポットを紹介します。

実践できる具体的な方法

実践できるサステナビリティツーリズムの具体的な方法としては、アウトドアアクティビティと文化体験が代表的です。

まずアウトドアアクティビティですが、自然環境を活かして観光に組み込むことは、サステナビリティツーリズムのアプローチの一つです。川や湖でのカヌー漕ぎ、急流を下るラフティング、森林エリアでのツリークライミングなど、地域の自然を活用したアウトドアの楽しみ方があります。群馬県のみなかみ町では、激流のラフティングを観光資源として活用することで、観光客数の減少を食い止めることに成功しました。

文化体験もサステナビリティツーリズムの実践に当たります。
日本はその豊かな自然と長い歴史によって、陶芸、機織り、染物など、観光客が手軽に体験できる多彩な観光資源が揃っています。地元の専門家がインストラクターとして参加し、地域との交流を促進するというメリットも。
特に岐阜県は「日本の源流に出会える旅」を掲げて、世界遺産に登録された白川郷の合掌造り、多くの名建築・工芸品を生み出してきた飛騨高山など、文化の魅力を観光客に伝える様々な取り組みを展開。日本国内でもサステナビリティツーリズムを推進した先駆的な地域として高く評価されています。

また、山形県の出羽三山の「山伏修行ツーリズム」は、外国人向けに1400年の歴史を誇る伝統的な修行体験を提供しています。修行僧侶が山で体験した山伏修行を外国人に提供し、自然との一体感や山伏の精神文化を実際に感じられます。修行体験を通じて自然に対する新たな意識、国を超えた理解を促進することが目的です。参加者は自分自身を見つめ直し、共通の体験を通じて国際的な共感を築く機会となっています。

都会で環境や生態系を探求する取り組みもサステナビリティツーリズムの一つです。
銀座ミツバチプロジェクト」は、花の蜜を吸いながら受粉を助ける重要な花粉媒介者であるミツバチを身近に感じてもらい、自然環境の保護に欠かせないことを再確認するのが目的です。銀座は海外から多くの観光客が訪れるため、銀座ミツバチプロジェクトでも見学者を受け入れ、都内のアメリカンスクールで出張授業を行うなど、国際的な情報発信にも力を注いでいます。

環境保護の観点で、ゴミ意識を高める取り組みを行っている自治体もあります。
徳島県上勝町は、日本の自治体として初めて「ゼロ・ウェイスト」を宣言し「HOTEL WHY」という特異なゼロ・ウェイストホテルを設立しました。同ホテルは、町のゴミステーション内に位置し、宿泊者は宿泊中のゴミを自分で分別し、石鹸を自分でカットする体験ができます。ゴミについての新たな視点を得られ、サステナブルツーリズムに貢献しています。

世界のおすすめサステナビリティツーリズムスポット

世界のサステナビリティツーリズムスポットでは、国際認証を受けているアイスランドがおすすめです。
氷河によって形成された地形に存在する湾や入り江であるフィヨルドは、持続可能な観光資源です。フィヨルドは、季節ごとに変化するその風景をクルージングで探索できるため、自然に基づくサステナビリティツーリズムの優れた例として注目されています。

この他にも世界各国にサステナビリティツーリズムスポットが多くあります。
例えばニュージーランド・クイーンズタウンの「シャーウッド」ホテルでは、自給自足を重視したアプローチで、食材や電力の自家生産に力を入れています。ホテル内のレストランで提供される食事の99%はニュージーランド産、その内40%は自社農園生産です。提供される飲み物の60%は家族経営のワイナリーから供給され、輸送によるCO2排出を削減しています。

また、オーストラリアのクールジャマンでは、先住民・アボリジニの伝統的な生活を体験できます。アボリジニのガイドと共に地域を歩いて文化を学び、彼らの生活に触れる歴史的でユニークな体験となっています。アボリジニの土地の価値観や自然への尊敬を理解し、彼らの生活に共感するのが目的です。

さらに、クロアチアの首都・ドブロブニクでは観光客のマナー違反への対処として「Respect the Cityプロジェクト」が導入しました。クルーズ客船のスケジュールを調整し、ツアーアクティビティの日程を制限するなど、様々な規則を設定するものです。地元の住民も、歴史的な旧市街地や文化的建造物に対する尊重を守るよう奨励され、観光客と地元住民が協力し、都市の美しさを守りながら、持続可能な観光を実現するための一歩となりました。

政府と企業が果たす役割

政府と企業は個人に比べて、影響力があるため、環境への負荷削減、地元コミュニティ支援、透明な価格設定、文化尊重、教育と啓発の面で大きな責任を負います。
地域との調和を図り、文化や自然資源を保護して、旅行者にサステナビリティの重要性を伝える役割を果たさなければなりません。
以下では、サステナビリティツーリズムにどのように関与しているのかを解説します。

政府の取り組み

サステナビリティツーリズムに関する政府の取り組みとしては、まずパラオ政府による「パラオ誓約書」の取り組みが挙げられます。観光客がパラオに入国する際は、環境保護を誓約する文書に署名しなければなりません。

サステナビリティツーリズムの促進に向けては、国連も基準を設けています。
「サステナビリティツーリズム国際認証」は観光地における持続可能性を測る指標で、持続可能な経営、社会経済への影響、文化への影響、環境への影響の4つの基準で構成されています。

持続可能な観光地としての認証を受けるためには、国連が定めるこのサステナビリティツーリズム国際認証を満たす必要があります。
世界の地域では、スペインのバルセロナやカタルーニャ地方、アイスランドの西部フィヨルドやスナイフェルス半島、ニュージーランドのカイコウラなどサステナビリティツーリズムなどが、国際認証を受けています。

企業の責任と活動

企業の取り組みとしてはザ・リッツ・カールトン沖縄の体験型プログラム「Good Travel with Marriott Bonvoy」が参考になります。
このプログラムでは、海洋環境の回復支援として、宿泊客が海中に珊瑚を植える体験ができます。さらに、マングローブ保護、珊瑚礁の移植と保護、ビーチの清掃、地元コミュニティへの食料供給や文化交流など、地域社会への積極的な貢献を通じて、旅行者に独自の学びを得られるのも特徴です。

サステナビリティツーリズムの未来

最後に、サステナビリティツーリズムが未来にどのような影響を与えるか、そして今後のトレンドについて考察します。

持続可能な未来への影響

サステナビリティツーリズムは地球環境の保護、地域の活性化や文化の探求などを促進し、持続可能な未来の実現に大きく影響を与えます。
サステナビリティツーリズムの普及により、個人に環境への新たな認識が生まれ、未知の文化を学ぶきっかけとなるのです。さらに、地域の産業が活性化し、外国からの観光客も増加することで、インバウンド効果が生まれることも期待されています。

次に来るトレンドは?

サステナビリティツーリズムに次ぐトレンドには、観光業へのデジタル技術の活用が来ると考えられています。スマートフォンアプリや仮想現実(VR)などを活用して、自宅にいながら観光体験を行う取り組みを、既に行っている地域や施設も多く、旅行者が事前に目的地を探索可能です。デジタル技術を上手く活用することで、観光地の知名度向上、観光客の増加が期待できます。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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