トラックのオーバーハングとは?安全運転と法規制のガイド

トラックやバスなどの車体が長い車両を運転する際は、オーバーハングを意識した運転が重要です。普通車を運転していると意識する場面が少ないオーバーハングですが、トラックと同じ道路を走っている場合にはよく理解しておく必要があります。

この記事では、トラックのオーバーハングに関する正しい知識、事故を避けるための運転方法、および法的な規制や安全対策について解説します。

目次

トラックのオーバーハングとは?

オーバーハングの理解はトラック運転において欠かせません。オーバーハングの基本的な定義と、トラックを運転する上でオーバーハングを意識する重要性について解説します。

オーバーハングとは何か?

オーバーハングとは、自動車の前輪および後輪(それぞれのタイヤの中心)の外側に張り出した部分を指します。前輪の中心部から外側をフロントオーバーハング、後輪の中心部から外側をリアオーバーハングと呼びます。主にトラックにおいてオーバーハングという言葉が使われるときは、リアオーバーハングを指すのが一般的です。

トラックやバスなどの大型車両は、リアオーバーハングが長いのが特徴です。大型車の場合、リアオーバーハングは最大で12m近くあります。一方、普通車などはオーバーハングが数cm程度と比較的短いため、あまり運転時に意識することはないかもしれません。しかし、トラックなどと同じ道路を走行する際には、一般車両のドライバーもオーバーハングに注意しておかなければ思わぬ事故に遭遇してしまう可能性があります。

なぜオーバーハングがトラック運転に重要なのか

トラック運転時にオーバーハングが重要な理由は、右折・左折時にオーバーハングが反対車線にはみ出してしまい、他の車両や障害物と接触するリスクが高まるからです。中型のトラックでもリアオーバーハングは60cmほどあり、普通車と同じ感覚でハンドルを切ると非常に危険です。

また、電柱や木材などを積んでいる場合は、さらに注意する必要があります。もし積載物が車体からはみ出していれば、その分オーバーハングが長くなっているのと同じだからです。

トラックのオーバーハング事故を避ける:実際の事例と対策

トラック運転時は、オーバーハング事故を避けるため十分注意が必要です。左折や右折時、停車時におけるオーバーハングによる事故事例と、それを防ぐための具体的な方法を紹介します。

左折・右折時のオーバーハング事故とその防止策

・左折時の事故例と対策
左折時のオーバーハング事故で最も多いのは、隣の車線の車にリアオーバーハングが接触してしまうケースです。実際の事故事例として、トラックが左折しようとした時に、隣の右車線を走っていたバスに、積んでいた電柱の先端がぶつかってしまったというケースがあります。

左折時には、道路の左側に車体を寄せることで、オーバーハングの膨らみを最小限に抑える必要があります。ただし、過度に寄せ過ぎると脱輪や巻き込み事故につながる可能性があるため、適度な距離感を保つこと必要です。曲がる前に速度を落とし、ミラーを使って確実に安全確認を行いましょう。

・右折時の事故例と対策
右折時は逆に、左側の車線にいる後続車にリアオーバーハングが接触してしまうケースが多く見られます。特にトラックが左折するタイミングで、隣の車線の車が追い抜こうとしている場面が最も危険です。

右折時には、ハンドルをゆっくり切ることで、オーバーハングの膨らみを抑えられます。そもそも右折の場合は、対向車線の分だけ道幅に余裕があるので、そこまでハンドルを大きく切る必要はありません。

左折時・右折時に共通する注意点は、ミラーを使った後方確認の徹底です。片側のミラーだけではなく、左右両方のミラーを使って安全確認をしっかり行いましょう。

停車時のオーバーハング現象と安全対策

右折・左折時だけでなく、車線変更やカーブを曲がる際も同様に注意が必要です。トラックのドライバーが注意するのはもとより、一般車のドライバーも無理な追い抜きなどは避けましょう。

さらに停車している状態から発車する場合も気を付ける必要があります。特に歩道ぎりぎりの路端に停車している場合や、すぐ隣に他の車が駐車されている場合などです。ミラーによる後方確認、目視による周囲の確認など、人がいないかどうかもよく確認してから発車するようにしましょう。

逆に歩行者の立場でも、近くにトラックが駐車している場合には十分注意しておく必要があります。急に発進しても避けられるように、車両から距離を取って歩行するなど自分の身を守る行動を心がけましょう。

法律に基づくオーバーハングの規制と遵守ポイント

オーバーハングは道路交通法ではどのように規定されているでしょうか。具体的な規制内容と、これらの法規を運転中にどのように適用すべきかを説明します。

道路交通法におけるオーバーハングの規定

オーバーハングは、国土交通省による「道路運送車両の保安基準」によって長さが規定されています。

「自動車(ポール・トレーラを除く。)の最後部の車軸中心から車体の後面までの水平距
離(空車状態の自動車を平坦な面に置き巻尺等を用いて車両中心線に平行に計測した長
さをいう。以下この条、第100条第6項及び第178条第6項において同じ。)に関し、保安基準第18条第1項第3号の告示で定める基準は、最後部の車軸中心から車体の後面までの水平距離が最遠軸距の2分の1(物品を車体の後方へ突出して積載するおそれのない構造の
自動車にあっては3分の2、その他の自動車のうち小型自動車にあっては20分の11)以下
であることとする。」

引用:国土交通省「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第22条(車枠及び車体)6」より一部抜粋

この規定遵守を前提にしたうえで、ドライバーはオーバーハングを意識した運転をする必要があります。

安全運転における法規制の理解と適用

上記の法規の適用は、荷台から突出するような荷物を積むときは、規格オーバーにならないようにしなければならないことも意味しています。ただでさえオーバーハングが長いトラックは、積荷のはみ出しに十分注意が必要です。また、一部の大型特殊車両ではさらに明確なオーバーハングの規定があります。

特例8車種*のセミトレーラー連結車は、リアオーバーハングが3.2mから3.8mまでの場合、全長17.5m、3.8mから4.2mまでは全長18mまでが規定の車両サイズです。また、自動車運搬用車両の場合、貨物を積載していない状態で17.0mまで、貨物のはみ出しは1.0mまでと決まっています

*特例8車種:1バン型、2タンク型、3幌枠型、4コンテナ用、5自動車運搬用、6あおり型、7スタンション型、8船底型

出典・参照:国土交通省 自動車運搬用車両に関する長さ規定の新設

サイズ別:オーバーハングとトラックの種類

トラックは大きさによって小型、中型、大型の3種類に大別されます。オーバーハングの長さの目安は以下の通りです。

小型トラック:数cm程
中型トラック:60cm〜100cm
大型トラック:100cm〜120cm

それぞれのトラックの特性と、運転する際に留意すべき点をみていきましょう。

小型トラックのオーバーハング特性

小型トラックのオーバーハングは、普通車とほぼ変わらないため、右折・左折時に反対車線へ車体がはみ出ることはほとんどありません。そのため、普通車と同じように曲がってもあまり問題ないといえるでしょう。

ただし、全く気にする必要がないわけではなく、トラックに物を積んでいる場合は、その積載物がオーバーハングしている可能性があります。積載物がはみ出している場合は、その点を意識した運転を心がけましょう。

中型・大型トラックにおけるオーバーハングの違い

中型トラックのオーバーハングは大体60㎝〜100㎝程あるので、常に意識して運転する必要があります。また、中型トラックは標準的なサイズのほかに、ロングトラックや、中型と大型の間にあたる増トントラックなど様々なサイズが存在します。車両によってオーバーハングに差が生まれる点は注意が必要です。

大型トラックになると、オーバーハングは約10mから最大で12mにもなります。リアオーバーハングの振り出しはもちろんですが、フロントオーバーハングも長くなるため前方にも注意が必要です。ミラーとの接触事故や、歩行者・バイクの巻き込みを起こす可能性があるので、細心の注意を払う必要があります。大型トラックは死角が増えるため、高い運転技術と、細かい目視確認が必要不可欠です。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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