昨今脱炭素化が叫ばれている中、それをテーマにしたスタートアップ企業がぞくぞくと起業されていることをご存知でしょうか。知っているという方も多いと思います。
それだけ脱炭素社会というものに注目が集まっているということが分かります。
ここでは、脱炭素社会を実現するために起業するスタートアップ企業に焦点をあて、2050年の脱炭素社会実現に向けたスタートアップ企業の動向を解説します。
この記事を読めば、脱炭素を生業としているスタートアップ企業の概要について理解することができるでしょう。
脱炭素スタートアップ
日本では、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするというカーボンニュートラル宣言が表明されています。ここではその実現に向け、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするスタートアップ界隈の動きを紹介します。
東京都によるスタートアップへの支援
スタートアップが起業する環境を整備するためには国や自治体の支援が欠かせません。
東京都ではスタートアップ企業を支援するため、創業助成金という支援制度を用意しています。
これは、東京都内の中小企業 を支援するための助成金制度で、条件を満たし採択されると、人権費や、賃借料、広告宣伝費などの費用のうち、2/3を東京都中小企業振興公社に負担してもらえるという仕組みです。
スタートアップ企業を創業している方や、すでに創業していて資金繰りに心配のある方などに適した制度となっています。
脱炭素スタートアップの起業事例
次に脱炭素スタートアップ企業の具体的な起業事例を見てみましょう。
グリーン水素スタートアップ
燃焼時に温室効果ガスを排出しないエネルギーとして注目されているのが水素エネルギーですが、その中でもグリーン水素は、再生可能エネルギーを利用して生成される水素エネルギーです。生成時に温室効果ガスが発生することがなく多くの国で注目されているエネルギー技術です。
ただし、化石燃料を用いて生成される水素エネルギーと比較すると、コストが高くなるというデメリットがあり、まだ課題が山積している技術でもあります。
グリーン電力を急速充電
温室効果ガスを排出せず環境負荷が軽いモビリティとして注目されている乗り物に、電気自動車があります。電気自動車が普及してきているアメリカでは、100%再生可能エネルギーで動く仕組みが広がってきています。
アメリカ国内では、すでに850以上の充電ステーションが整備されており、電気自動車が身近な存在になってきています。それと比較すると、日本の電気自動車の普及はまだまだ遅れており今後の進展が望まれる分野です。
二酸化炭素を吸収するカーボンネガティブなコンクリート
排出された温室効果ガスの一種である二酸化炭素の削減方法として今注目されている技術に、他の気体から分離、回収した二酸化炭素を資源として利用するCCUSという技術があります。
その一例として、鹿島建設株式会社などが開発、商品化した二酸化炭素吸収型コンクリート「CO2-SUICOM」があります。
建設業にかかせないコンクリートの主原料であるセメントの生成には、多くの二酸化炭素の排出が伴います。
「CO2-SUICOM」は、二酸化炭素を吸収しながら固まるという特性があり、セメントの代替材料の一部として利用されてきています。
しかし、コスト面でまだまだ課題があり、従来のコンクリートと比較するとCO2-SUICOMは3倍の費用がかかるため、今後コストダウンが望まれるところです。
オープンイノベーションとスタートアップ
オープンイノベーションとは、開発技術や技術改革、研究開発や組織改革などにおいて、他社の持つ技術や知識などを取り込んで、自前主義から脱却するイノベーションのことを意味します。脱炭素社会を実現するためには、大企業とスタートアップが協業してオープンイノベーションを実現することが必要不可欠です。
ここでは大企業とスタートアップ企業の協業に必要な要素をご紹介します。
大企業とスタートアップの協業
大企業とスタートアップ企業が協業する時に重要となる要素は以下のようなものがあります。
時間の取り扱い
まず、大企業とスタートアップ両者の時間の取り扱い方に対する感覚を合わせることが重要です。
スタートアップ企業はフットワークが軽く、小規模な事業展開をスピーディーに推し進めることができることが特徴です。これは組織が大きく意思決定に時間のかかる大企業とは大きく異なる点です。
スタートアップは、大企業と連携することで意思決定に時間がかかるようになりチャンスを逃してしまうことが続いてしまうと、スタートアップ企業側が大企業との提携を解消することを考え始めてしまうでしょう。
大企業側もスタートアップ企業と連携する時には、意思決定のスピードに大きな違いがあることを事前に意識しておくと良いでしょう。
ビジョンの共有
両者でビジョンを共有することもスタートアップと大企業が連携する時にとても大切です。スタートアップ経営者の熱意に応えられるような人材の供給が大手企業側にできるのかもポイントとなります。
大手企業の経営陣、担当者や現場のスタッフまでのあらゆる階層でビジョンが共有できているかが、成功への架け橋となります。
互いの技術への理解
大企業とスタートアップ企業の持つ資金力や技術、ノウハウの違いをお互いに理解することも、大手企業とスタートアップ企業が連携を成功させるために重要です。
大企業は、スタートアップ企業の持つ新しい技術を取り込みたくて提携するケースが圧倒的に多いですが、スタートアップの先端技術を大手企業側が奪って我が物顔でその技術を利用するというスタンスでは、スタートアップ企業側とはうまくいかないでしょう。
お互いがお互いを尊重し、節度ある事業協業を進めることが必要です。
パートナーであるという認識
お互いが協業者であるというパートナーシップを持つことがとても大切です。大企業のスタンスがスタートアップを下請けのように扱う姿勢では、パートナーシップを維持することは不可能でしょう。
資金力や会社の規模の違いはあるけれど、同じ目標やビジョンを共有しているパートナーであることをよく認識することが、新規プロジェクトを成功へと導く鍵になります。
クリーンテックブームと脱炭素スタートアップ
クリーンテックとは、再生不能資源を減らしながら従来と同様の効果や機能を備えた製品やサービスを提供する技術やスタートアップ企業のことを示します。
ここでは、クリーンテックがもたらす新たなビジネスチャンスなどについて解説します。
新たなビジネスチャンスと市場の伸びしろ
第一次クリーンテックブームは終焉を迎えましたが、その後のデジタル技術の進化を受け第二次クリーンテックに火が付いています。
さまざまな業界で脱炭素社会に向けたスタートアップが起業し、再生可能エネルギー向け発電機や、二酸化炭素の排出量を計算するソフトウェアなど、デジタル技術を効果的に使った多くの新事業が創設されてきています。
グローバルではIPOを果たす環境関連スタートアップ企業もでてきており、今後日本でも、クリーンテックのユニコーン企業の誕生が期待されています。
脱炭素関連企業は今後の伸びしろが望める分野なので、転職するのもおすすめの業界となっています。