海外先進都市が示すスマートシティの姿

2023年、世界中でスマートシティの実現に向けた取り組みが活発化しています。スマートシティとは、ICTやAIなどの先端技術を活用して、都市の課題を解決し、より持続可能で快適な都市を実現する取り組みです。

本記事では、スマートシティの実現例とその特徴、スマートシティがもたらす社会への影響、スマートシティを支えるテクノロジー、スマートシティの未来展望について解説します。

目次

スマートシティの実現例とその特徴

スマートシティを知るためには、実例を確認することが一番です。ここでは海外の代表的な事例とアメリカの事例をご紹介しますので、スマートシティがどのようなものであるのかについて把握していきましょう。

海外の代表的な事例

スマートシティはさまざまな自治体が取り組んでいますが、その中でも下記の都市は先進的な取り組みを行っており、注目を集めています。

・アムステルダム
オランダの首都アムステルダムは世界有数のスマートシティとして有名です。その特徴的な取り組みには以下のようなものがあります。

①自転車のシェアリングシステム「OV-fiets」の導入
②スマートグリッドの導入によるエネルギー効率の向上
③スマートビルディングの導入による環境負荷の低減

・ヘルシンキ
フィンランドの首都ヘルシンキは2012年に「世界で最もスマートな首都」に選ばれるほどスマートシティに関する評価が高いです。具体的な取り組みとしては以下のようなものが挙げられます。

①オープンデータの活用による市民参加の促進
②モビリティサービスの統合による利便性の向上
③デジタル教育の普及による人材育成

・バルセロナ
スペインの都市バルセロナは2016年に「世界で最もスマートな都市」に選ばれました。評価された取り組みには下記のようなものがあります。
①スマートビレッジの建設による持続可能な開発
②ドローンの活用による物流の効率化
③スマートシティの国際的な連携

もちろん、スマートシティの実例には他の自治体も挙げられます。興味のある方はスマートシティに取り組んでいる自治体をさらに調べてみましょう。

アメリカのスマートシティ事例

アメリカは州によって取り組みがかなり異なります。アメリカにある州の中でも下記の州はスマートシティ化に対する評価が高いです。

・ニューヨーク
ニューヨーク市は2030年までにCO2排出量を80%削減するという目標を掲げており、それを実現するためにスマートシティ化を推進しています。実際の取り組みは下記のとおりです。

①再生可能エネルギーの導入
②電気自動車の普及
③カーシェアリングサービスの拡大

・シカゴ
シカゴ市は2025年までにスマートシティ化を完了するという目標を掲げており、スマートシティ化をかなりの速度で進めています。取り組み例は下記のとおりです。

①オープンデータの活用による行政の効率化
②公共交通機関の統合による利便性の向上
③スマートビルディングの導入によるエネルギー効率の向上

・コロンバス
オハイオ州コロンバス市は2050年までにカーボンニュートラルを実現するという目標を掲げ、その一環としてスマートシティ化に取り組んでいます。特に力を入れている取り組みは下記のとおりです。

①スマートグリッドの導入によるエネルギー効率の向上
②スマートビルディングの導入によるエネルギー効率の向上
③再生可能エネルギーの導入

スマートシティがもたらす社会への影響

スマートシティ化はテクノロジーによって生活が便利になることが思い浮かびますが、実はSDGsとも深く関わってきます。では、SDGsとなぜ関わってくるのかを確認してみましょう。

SDGsとの関連性

まず、SDGsの目標1つである「貧困をなくす」はスマートシティ化によって達成に近づく可能性が高いとされています。なぜなら、スマートシティ化によって食糧生産の効率化、流通コストの削減、が実現し、より広い層にサービスや商品が届くようになるからです。また、教育もスマート化することで、今まで教育を受けることができなかった地域にも教育を提供することができ、水準が上がる可能性があるとも考えられています。

次に、「働きがいのある経済成長を促進する」といった目標も達成に近づくとされています。近づくとされている主な要因は下記のとおりです。

・スマート製造による生産性の向上
・スマート観光による雇用の創出
・スマートエネルギーによるエネルギーコストの削減

生活への変化とQOLの向上

スマートシティ化がなされると日常生活が大きく変化し、QOL(生活の質)が向上する可能性があります。実際に実現可能性が高いとされているものには以下のようなものが挙げられます。

・自動運転
・リモート診療
・スマートビルディング

スマートシティ化は徐々になされていくため実感が難しいかもしれませんが、これら技術は確実に実現化に近づいています。実際にスマートシティを体験したい場合は前述の自治体に長期間滞在してみましょう。

スマートシティを支えるテクノロジー

スマートシティはテクノロジーによって実現します。では、具体的にどのようなテクノロジーによって実現していくのでしょうか。スマートシティといった全体的な観点ではなく、それを支える技術についても確認しておきましょう。

データ連携基盤とIoT

データ連携基盤とはさまざまなシステムやデバイスから収集されたデータを一元的に管理・分析するための基盤です。スマートシティでは交通、エネルギー、環境、防災など、さまざまな分野からデータが収集されます。これらのデータを統合的に分析することで、都市の課題を把握し、解決策を検討することができます。

そして、そのデータを集めるための技術がIoTです。IoTはあらゆるものにインターネットの機能を付け、非常に多くのデータを収集していきます。現在、インターネットに接続されていないものを確認し、それがインターネットに接続されるとどのように生活が便利になるのかを考えてみましょう。

ICTとAIの活用

ICT(情報通信技術)とAI(人工知能)は、スマートシティの各分野で幅広く活用されています。まず、代表的な例である交通分野では自動運転車両や交通信号の制御にAIが活用されています。また、ビッグデータを活用した交通状況の予測や交通誘導サービスなども盛んです。

さらに、エネルギー分野ではスマートグリッドや再生可能エネルギーの導入にICTが活用されています。また、AIを活用したエネルギーの効率的な利用や災害時のエネルギー供給の確保なども積極的におこなわれています。

スマートシティの未来展望

現在でも進められてきているスマートシティですが、今後はさらに発展が進んでいく可能性が高いです。では、スマートシティは今後どのようになるのか確認してみましょう。

エッジコンピューティングとAI画像解析

エッジコンピューティングとはデータの発生場所に近い場所で処理を行う技術です。スマートシティでは道路やビル、公共施設などさまざまな場所にセンサーやカメラなどのIoT機器が設置されるため、エッジコンピューティングが不可欠です。しかし、これらのIoT機器から収集されるデータは膨大な量になるため、クラウドに送信して処理を行うとネットワークの負荷や遅延が発生する可能性があります。

AI画像解析とはAI技術を活用し、画像や映像から情報を抽出する技術です。スマートシティでは交通状況の把握や災害時の被害状況の把握など、さまざまな場面でAI画像解析が活用されています。しかし、AI技術は未だ発展途上であり、今後も精度などを高めていくことが必要です。

持続可能な都市開発の展望

スマートシティはエネルギーを効率的に利用することや環境負荷が小さくする制御をおこなうなど持続可能な都市開発に大きく貢献します。スマートシティは便利な生活だけでなく、持続可能性といった地球全体の課題に対しても関係していると認識しておきましょう。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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