日本の自動車産業が目指す脱炭素時代

世界各国が脱炭素化社会の実現へ取り組む中、自動車産業も今まで以上のCO2削減が必要になっています。
今回の記事では、脱炭素時代における自動車産業を取り巻く変化を踏まえて、脱炭素化に取り組む意義や事例、大きなカギとなる電気自動車の現状などをまとめます。

目次
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脱炭素と自動車産業

2020年10月、政府は「2050年までのカーボンニュートラル実現」を目指すことを表明しました。
日本のCO2総排出量は年間で約11.4億トン、その中で自動車を含む運輸部門は2.0億トンと約17.5%を占めています。
エネルギー部門や産業部門に比べると排出量は少ないですが、自動車産業のCO2排出削減は、十分な削減余地があり脱炭素社会の実現に向けた世界的な風潮の一つとなっています。

自動車産業の変化、CASEとは

「自動車業界において、100年に一度の変革をもたらす」というコンセプトで、新たな動向として注目されている「CASE」という言葉があります。
この技術トレンドは、「CASEを制する企業は、今後の自動車業界を制する」ともいわれるほどに、脱炭素時代の自動車産業の今後の展望のあり方に大きく関わっています。

まずCASEとは、Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとった造語で、カーボンニュートラ社会に向けた新しい車の開発の主軸となる考え方を表現しています。

「C」=Connected(つながり)
「走るIoT端末」として、自動車に通信機器やセンサーを搭載し、インターネットを介して外部の機器やサービスと「つながる」ことを指しています。

「A」=Autonomous(自動運転)
急激な発展を遂げている自動運転技術は自動化の度合いで分けられます。
「運転自動化・運転支援なし」のレベル0から始まり、「運転支援要」のレベル1・レベル2、「完全自動運転」のレベル5にまで分類されています。

「S」=Shared & Services(シェアリング/サービス)
車を共有利用する「カーシェアリング」や、一般のドライバーの自動車に相乗りしてガソリン代などを共同負担しながら移動手段とする「ライドシェアリング」などを指します。
近年、カーシェアリングの利用は日本でも普及しており、会員数は224万5156人にものぼっています。その一方で、日本でのライドシェアは法律の壁もあり、普及にまで至っていないのが現状ですが、海外では一般的であり広く利用されています。

「E」=Electric(電動化)
自動車運行に関しての電動化を指しています。電気エネルギー利用のモーター走行をするEVへの移行は世界各国で拡大しています。
日本ではガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車が潮流ですが、市場環境は変化し、各自動車メーカーがEVの開発に一層注力する動向を示しています。

電気自動車が担うカーボンニュートラルへの役割

2015年に合意された「パリ協定」を機に、2025年から2040年にわたり、多くの国が、新車販売において電気自動車100%、ゼロエミッション車100%で生産する目標を掲げており、脱ガソリン車産業を加速する方向で取り組んでいます。

運輸部門においては、自家用車のCO2排出量が群を抜いて多い問題を考慮し、電気自動車や燃料電池自動車が一般化すれば走行時のCO2排出がなくなり、カーボンニュートラル社会への実現への大きな後押しとなります。
しかし、製造過程、完成後の運搬、廃棄やリサイクルでの行程でのCO2排出にも注意する必要があります。このような全ての「ライフサイクル」でCO2排出を減らせばカーボンニュートラル達成は遠くない現実にもなり得ます。

電気自動車の現状

日本政府は、2035年までに乗用車新車販売における電気自動車の比率を100%にする目標を示しています。
それに併せ、公共用の充電器3万基を含んだ充電インフラの数を2030年までに15万基増やし、従来のガソリン車並みの利便性と一般化実現を目指しています。
そんな日本では、実際どのくらい電気自動車が普及しているのでしょうか?

日本の電気自動車普及率

あらゆる世界情勢のあおりを受けて昨年から電気自動車(以下EV)の販売比率は減退傾向にありましたが、3月から状態が回復。2023年5月時点でEV車の販売比率は3.7%となり、販売台数で見ると前年同月比2.6倍、一昨年比では3.7倍まで伸びています。

これらEVの販売スピードが急速に好調し、経済産業省からの「補助金切れ」が懸念されたことが自動車市場に影響し、2022年一時的に販売台数は落ち込みましたが、その後補助金の延長が決定し、販売台数は回復しました。
この因果関係を考慮すると、2023年以降も継続して行われる補助金が後押しして、さらにEVが市場上で増えることが期待されます。
政府はEV購入時に使える補助金であるクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)の予算額を大幅に増加しました。22年度2次補正予算で700億円、23年度当初予算案で200億円の合計900億円を23年度の補助金に充て、ガソリン車からEV車への乗り換えを後押しする方針を示しています。

海外諸国の後れを取る日本のEV車

補助金の予算額が高くなりEV購入のハードルも下がってきている日本ですが、海外のEV普及率状況と比べるとまだ差は大きいです。特に欧州と中国は、EV普及が著しく進んでいます。
イギリス政府は2030年にはガソリン車の新車販売を禁止することを発表、EUでは欧州議会が2035年にガソリン車の新車販売を禁止すると発表しました。この目標を達成するために、各国では環境規制を強化し、自動車メーカーが販売台数におけるEV割合を大きく引き上げ、EV補助金の増額などで普及を後押ししたことでEV普及が急速に進んでいます。

他国に比べ、日本のEV普及が遅れている原因として、ハイブリッド車の技術力・シェアにおいて日本のメーカーが世界一なことが影響しています。
ハイブリッド車の時代がしばらく続いて欲しいというのが日本の自動車メーカーの本音であり、EVシフトを積極的に進められていない理由の一つです。

電気自動車以外の視点

ガソリン車の大量普及は、巨大な環境への負をもたらしました。
大量に普及したこれら自動車が消費する石油の量は、地球規模での気候変動に影響を及ぼす温室効果ガスを発生させました。私たちは、この気候変動危機を回避し、脱炭素化社会へのために、自動車のもたらした環境問題やCO2排出ついて知る必要があります。

自動車が排出するCO2の割合

国土交通省の統計によると、2021年度における日本の二酸化炭素排出量(10億6,400万トン)のうち、運輸部門からの排出量(1億8,500万トン)は17.4%、そして自動車全体では運輸部門の86.8%(日本全体の15.1%)を占めています。
具体的に、1kgの距離を移動するためのCO2排出量は、乗用車では147g、飛行機は109g、バスは51g、電車は19gとなっており、 移動手段の中で乗用車が最も環境負荷が大きいのです。

脱炭素化を実現するための視点

上記の結果からも、公共交通機関は自家用乗用車に比べて輸送距離あたりの排出量が少ないことが分かります。
脱炭素化社会への実現のためには、可能な限り電車で行けるところには電車で、徒歩や自転車を積極的に使うこと、そしてEVへのシフトチェンジは不可欠です。
生産側は、中長期的な視点を視野に戦略を見直さなければいけないでしょう。EVを作るとしても、日本のように火力発電由来の電力で製造された自動車および自動車部品は、Lライフサイクルアセスメント評価としては厳しく、国内における再生可能エネルギーの普及と低価格化が進まなければ、自動車生産を低コストの再エネで賄える海外拠点工場で行わざるを得なくなります。これにより、国内の工場閉鎖につながる可能性も指摘されています。
再エネ調達を踏まえたEV生産戦略の見直しは重要な視点となっていくでしょう。

日本の自動車メーカーの取り組み

現在、自動車業界は「100年に一度の大変革期」に突入しています。
自動車のあり方そのものの根本的な変化が求められ、その大きな要因としてカーボンニュートラル社会の実現があることは間違いありません。

温室効果ガスの排出をゼロに

脱炭素社会に向けて、「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」という国の方針を踏まえて、今後の日本でのEV普及率はアップしていくことは間違いありません。

脱炭素化の加速を進める手段として、すべての運輸産業においての電気化に大きな期待が寄せられていますが、温室効果ガスの中でも特にCO2は運行時に出るものだけではなく、製造や輸送、電気エネルギーを作り出す過程で多く排出され、それらも含め削減を考える必要があります。
CO2排出量の大きい産業部門やエネルギー部門をも取り巻く運輸産業は、温室効果ガス排出ゼロへの大きなカギとなります。

日本では2035年までに新車販売される車の100%を電動車にするという方針が定められています。
この「電動車」にはハイブリッド車や燃料電池自動車も含まれているため、今後すべての新車が電気自動車として販売されるわけではないという点に注意が必要です。
しかしこの方針と潮流により、電気自動車の新車販売台数が増えることは確実であります。
普及拡大への取り組みとして、充電インフラの整備はもちろん、補助金等の税制優遇や研究分野への支援を行うことで、電気自動車の広まりを後押しします。
2035年以降は新車販売できるのは電動車のみになり、おおむねEV主体になることは予測されます。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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