ゼロカーボンとは?その達成への道筋をわかりやすく解説!

SDGsから始まり、カーボンオフセットやエコツーリズム、脱炭素社会等といった環境関連用語が次々と生まれています。
その中でもゼロカーボンは、世界各国一丸となり目標とするところであり、企業だけでなく個人レベルでも求められる重要な取り組みの1つです。

目次

ゼロカーボンとは?

まず、ゼロカーボンはCO2を主な要因とした温室効果ガス排出量をゼロにする状態、もしくは実質ゼロにするための取り組みを指します。

ゼロカーボンの定義

問題視されている温室効果ガスは、CO2やメタン、一酸化窒素、SF6などのさまざまな気体の総称です。特に、CO2(二酸化炭素)はあらゆる場で排出量の多い気体であるため、CO2削減の規制などが定められています。
そこで、ゼロカーボンでは主にCO2削減からはじまり排出量抑制、いずれは温室効果ガスの排出量を全体として完全もしくは実質ゼロにすることを指します。
また、ゼロカーボンは「カーボンニュートラル」や「ネットゼロ」と同意義であります。

ゼロカーボンの目指す目標

サステナブル・持続可能な社会を実現可能にするのが、ゼロカーボンの大きなメリットであり最終目標でもあります。
現時点で気候変動問題は、日本を含め世界全体で発生しています。気候変動の主な原因としては、森林伐採による自然破壊やCO2の大量排出等とされています。しかし現状で、あらゆる産業や工業での生産活動や電力やガスの使用を急に止めることは現実的ではありません。
それでもゼロカーボンを目指した取り組みや責任意識が個人や企業に広まれば、深刻な気候変動問題の解決につながる可能性も大いにあり、持続可能な社会の構築へと結びつきます。

ゼロカーボンのメリット

では、地球規模でゼロカーボンに取り組むことはどのようなメリットを得られるのでしょうか?

環境への影響

持続可能な社会目標・SDGsの17の目標を見ると、ゼロカーボンと直接関わりがあるものは目標07である「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」と目標13の「気候変動に具体的な対策を」の2つです。
また、自然災害や地球温暖化による海面上昇で住む場所を失ってしまうと、目標11の「住み続けられるまちづくりを」にも直接影響を及ぼしてしまいます。そして住居やオフィスの省エネ化や廃棄物の削減取り組みは、ゼロカーボンの取り組みにも繋がります。
このようにゼロカーボンは、環境保全はもちろん、サステナブルな社会づくりにも貢献します。

社会と個人のメリット

社会・企業におけるゼロカーボンへ取り組むメリットは、自社の価値向上に繋がることが目立ちます。
近年、サプライヤーである消費者、投資家や取引先などは、企業のゼロカーボン・脱炭素化への参加、取り組みに注目し環境と事業のバランスが取れていることを優先する潮流があります。そのため、環境活動に取り組んでいない企業はサプライヤーからの評価を引き下げられる可能性があり、消費者の購買意欲に関わる可能性もあります。
ゼロカーボンは、社会・企業の事業成長にとって不可欠な要素です。

また、個人の暮らしにもゼロカーボンは有意に働きます。
例えば、増加する省エネ家電の導入や省エネリフォーム、自家発電消費などは、家庭における光熱費の節約にもなり、快適で健康的な暮らしをもたらしてくれます。

ゼロカーボンの実現テクノロジー

つぎに、ゼロカーボン実現に不可欠な技術について見ていきましょう。

必要な技術と取り組み

再生可能エネルギー

有限資源である化石燃料とは異なり、資源が枯渇せず繰り返し利用できるのが再生可能エネルギーです。具体的には、太陽光や風力、水力エネルギーが挙げられます。これらのようにCO2を排出しない再生可能エネルギーを生み出すことは重要な技術であり、ゼロカーボンに大きく貢献することが期待できます。
将来的な再生可能エネルギーへの完全な移行のために、コスト低減を可能にしながら安定した他の技術(蓄電池や水素エネルギー)との組み合わせが重要視されます。

水素エネルギー

技術の発展とともに注目を集める水素エネルギーは、燃焼時にCO2を排出しないエネルギー源です。近年の活用例として、燃料電池自動車や家庭用の燃料電池、製鉄、発電所などで取り入れられます。そして、水素製造時にCO2が発生することのないグリーン水素は世界で非常に関心が高まっています。グリーン水素を利用することは、上記に挙げた再生可能エネルギーの欠点をも補うことができます。
太陽光や風力のように、気候や時間帯によって余剰が出てしまう再エネから水素を製造することで、エネルギーの安定化と保全につながります。

最新の取り組み

脱炭素実現のための最新テクノロジーとして、CO2を回収し貯留、有効利用する期待のCCUS技術があります。
ゼロカーボン達成にはCO2削減とともに、CO2を大気中に放出させない取り組みも重要です。このCCUSの技術は、工場や発電所から生成されるCO2を排気ガスの中から分離、回収して資源として再利用することを可能にし、CO2が漏れることのない地層に貯留します。
CO2を大量発生する火力発電所やゴミ焼却所などの分野において導入が可能であり、CO2を大幅削減できると期待されている最新技術です。
IEA(国際エネルギー機関)によると、CCUS技術は2070年までに累積CO2削減量の15%を担うことが可能と報告されています。

具体的なゼロカーボンの事例

企業や地域の特徴を活かし、ゼロカーボン達成に向けて実際に行われている取り組み事例をご紹介します。

成功した企業や地域の事例

阪急電鉄株式会社

関西地方の阪急電鉄では、国内初のゼロカーボンを導入した「カーボンニュートラル・ステーション」を実現しています。
年間で70トンも排出される二酸化炭素のうち、約36トン分は自社太陽光発電やLED照明の導入によって削減を可能にし、残りはカーボンオフセットなど証書の環境価値を購入することで相殺、ゼロカーボンを実現しました。

日立グループ

日立製作所では、2030年度までに自社工場やオフィスのCO2排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボン」の目標を掲げています。そんな日立グループの中で、先陣を切り4つの事業所においてゼロカーボンを達成したのが、日立ハイテクです。

2018年度から始まり、2021年3月までに日立ハイテク九州、日立ハイテクファインシステムズ、日立ハイテクサイエンス富士小山事業所、那珂地区マリンサイト(以下マリンサイト)の4事業所でゼロカーボンを達成し、合わせて1万7,939トンものCO2削減に成功しました。

埼玉県所沢市:地域の電力会社を設立

埼玉県所沢市では、ゼロカーボンシティ実現のために地域新電力会社「株式会社ところざわ未来電力」を設立しました。この地域電力会社では、廃棄物発電や太陽光発電などで得られたエネルギーを主な電源としています。
再生可能エネルギー発電で得られた電力は、所沢市内の公共施設で利用されているほか、民間の家庭にも供給されています。

ゼロカーボン成功の秘訣

やはり、大きなカギとなるのは100%再生可能エネルギーと言えるでしょう。
近年竣工時から再エネを活用し、生産工程で排出されるCO2もゼロにすることが出来ている実例が多くあります。
従来の化石燃料から再エネへの切り替えでゼロカーボンを達成したのが、前者でご紹介した日立ハイテクが良い例です。水力発電や地熱発電へと切り替えながら、太陽光自家発電設備も導入、社用車もガソリン車からEV (電気自動車)へ移行しています。
産業分野において、このような全面的な取り組みはゼロカーボンへの近道とも言えます。

ゼロカーボンへの取り組み方

では、まだゼロカーボン実現へ取り組んでいない企業や自治体は、まずどのようなことができるのでしょうか。

ゼロカーボン達成への手段

再生可能エネルギー由来の電力への切り替えと導入

再エネ利用は、ゼロカーボン達成へと目に見えて貢献するため、取り組みが不可欠です。
そして様々な分野の企業や自治体がとくに導入しやすいのは太陽光発電です。空いているスペースや屋上を活用し、ソーラーパネルなどを設置することで太陽光自家発電を運用できます。
再エネは環境にやさしいエネルギーではあるものの、設備設置・管理には費用がかかります。
そのため中小企業・経済的に余裕のない自治体にとっては取り組むことは容易ではありません。しかしその場合、契約している電力プランを再エネ由来の電力プランに変更することで、ゼロカーボンに貢献することは可能です。

カーボン・オフセット

そして近年広まりつつあるカーボン・オフセットという手段もあります。
人間の活動においてやむを得ず排出してしまう温室効果ガスを、植林活動に寄付するなどの温室効果ガス削減活動へ貢献することで、排出分を埋め合わせるというものです。
カーボン・オフセットとしている取り組みは、埋め合わせといえど、温室効果ガスの排出削減や吸収に大きく貢献しているという証明にもなります。

個人や組織のアクション

実現に向けてのゼロカーボンアクションプランとは、目標をより具体化し、取り組みを推進していくことを指します。
また、環境省が出したゼロカーボンアクション30は、再生可能エネルギー、モビリティ、住宅、食品ロス、サステナブルファッションなどの8カテゴリー30項目に分けてゼロカーボンにつながる行動を紹介しています。
脱炭素をハードルの高い問題と考えずに、個人や組織単位でライフスタイルの中で、できることから取り組んでみましょう。

アクションプランリスト(8つの分類、30の項目)
1. エネルギーを節約・転換しよう!(エネルギー関係)
2.太陽光パネル付き・省エネ住宅に住もう!(住宅関係)
3. CO2の少ない交通手段を選ぼう!(移動関係)
4. 食ロスをなくそう!(食品関係)
5.サステナブルなファッションを!( 衣類、ファッション関係)
6.3R(リデュース・リユース・リサイクル)( ごみ関係)
7.CO2の少ない製品・サービス等を選ぼう!(買い物・投資関係)
8. 環境保全活動に積極的に参加しよう!(環境活動関係)

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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