低炭素社会とは、企業などの経済活動や国民の日常生活において排出される温室効果ガスが少ない社会のことを指します。このような社会の実現のためには、近年注目される再生可能エネルギー導入や、燃料使用の効率化の高度な技術が不可欠になってきます。
低炭素技術とは?
2016年に発効したパリ協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃までに抑える努力をする」という「2℃目標」が示されました。
その実現のために、CO2などの温室効果ガス排出量を可能な限り減らす「低炭素化」に取り組む様々な技術が必要です。
気候変動の大きな要因である温暖化防止に向けて、太陽光や風力などの再生可能エネルギー・高効率発電・ボイラー・燃料電池・電気自動車・省エネ建築などの利用比率を上げることが今求められています。
これらの開発に伴う技術を低炭素技術とよびます。
低炭素技術の重要性
日本の優れた低炭素技術は途上国の中でもニーズが高く、地球温暖化外交においては不可欠です。リードするこれらの技術開発の過程で生み出されたイノベーションにより、企業間の競争力の強化が重要となります。
そして、高い経済成長を続けている国ではエネルギー需要も飛躍的に伸び、それに伴い環境負荷も増えています。
特に、CO2などの温室効果ガス排出量は大幅な増加傾向にあります。今後急増が見込まれているCO2排出の削減緩和を果たすため、低炭素技術の導入は急務となっています。
再生可能エネルギーの活用
気候変動を食い止め、地球環境を守るために世界が一丸となり温室効果ガスを排出しない「脱炭素社会」を目指しています。その運動を促進する中で重要なのが、再生可能エネルギーです。
再生可能エネルギーとは?
再生可能エネルギーとは、石油・石炭などの有限な燃料でなく、太陽光や風力、バイオマス燃料などをエネルギー源とするエネルギーを指します。
自然界において枯渇しない資源であり温室効果ガスの排出が少ない、または増加させないことが大きな特徴です。また、採れる場所が限られている化石燃料とは異なり、再生可能エネルギーは自然界で発生するエネルギーを利用するため、海外輸入に依存することなく国内での生産が可能です。
日本国内でより導入されている再生可能エネルギー技術は下記の3手法です。
太陽光発電
使用されるシリコン半導体には、太陽光が当たると電気が発生する特性を持っています。
この特性を利用し電気を作っているのが太陽光発電であり、日本では特に導入量が増えている発電方法です。2018年の導入実績は、中国・アメリカに次いで3番目の多さとなっており、現在日本の太陽光発電は全発電電力量の8.5%を占めています。
風力発電
風力発電機は、「ブレード」という羽に風が当たることで回転し、その発生エネルギーを電気へと変換します。日本国内の導入量は土地の広大な欧米の国に比べると遅れていますが、着実に増えていて、現在日本の風力発電量は全発電電力量の0.86%となっています。
水力発電
日本は水資源に恵まれている国なので、水力発電は昔から盛んに行われています。
水を高いところから低いところへと勢いよく流し、そこに設置された水車を回転させることで発電する方法が水力発電です。
国内のみで賄える貴重なエネルギー源であり、各地にあるダムでの大規模発電だけでなく、河川や農業用水などを利用した中小規模発電も含めて、幅広く行われています。現在日本の水力発電は、全発電電力量の7.9%を占めています。
再生可能エネルギーのメリット
現在、日本のエネルギー供給は石油や石炭に依存し、大きな割合を占めています。
しかし持続可能な社会実現に向け、これらを徐々に再生可能エネルギーに切り替えていく取り組みは、急を要されています。では、従来の化石エネルギーから再生可能エネルギーに切り替えるメリットは何なのでしょうか。
再生可能エネルギーの大きなメリットとして、温室効果ガスの排出がない、または増加を抑制できることです。地球温暖化を食い止めるために、温室効果ガスを減らしていかなければなりません。
次に、エネルギー自給率のUPにつながることも経済面でメリットと言えます。再生可能エネルギーは、地球上にあるものを活用したモノで、多くを海外の輸入に頼り資源の乏しい日本でも安定したエネルギー供給が可能になります。
エネルギー効率の向上
日々使用するエネルギーの効率向上は、温室効果ガス排出量の削減につながる一つの大きなカギです。
エネルギー効率改善の手法
まずエネルギー使用量の現状を把握します。そして空調、照明、製造設備やオフィス機器の見直し、また省エネ施設運営を積極的に進め、サービスの質や量は変えずに、エネルギー使用量を改善します。
建築物やインフラなどの社会全体の省エネ対策を進めるために、自治体の政策や補助金などのサポートが欠かせません。
エネルギー効率の向上がもたらす影響
・環境への利点
効率よくエネルギーを利用することは、化石燃料の抽出や燃焼による排出と汚染を減らすのに役立ちます。 その結果、空気や水を浄化し、自然環境を整えます。
・パワーグリッドの利点
エネルギー効率は、システムのピーク需要を削減しながら電力コストを安定させることで、電力網強化に役立ちます。
・経済的利益
エネルギー効率を意識することは、住民や企業が電気代を節約することも可能にします。 平均して最大25%も光熱費を節約できます。
グリーンビルディングの普及
世界グリーンビルディング協会の調査では、建造物からのCO2排出量は総排出量のうちの30%を占めています。そこで、低炭素社会を実現するCO2排出量の少ないグリーンビルディングに注目度が高まっています。
グリーンビルディングとは?
グリーンビルディングとは、エネルギーや水、オフィス内設備に関して環境負荷の低い建物を指しています。
日本語では「環境配慮型建物」、英語では「サステナブルビルディング」や「ハイパフォーマンスビルディング」「グリーン・アーキテクチャー」などとも呼ばれています。
国内事例として、京都府の四条河原町に2019年12月開業した「GOOD NATURE HOTEL KYOTO」があります。
このホテルは複合施設「GOOD NATURE STATION」の4〜9階に位置し、グリーンビルディングの環境総合評価指標の認証制度である「WELL認証」のゴールドランク、「LEED認証」のシルバーランクを取得しています。
ホテル単独で「WELL認証」を取得したのは、「GOOD NATURE HOTEL KYOTO」が世界初です。また同ホテルでは2023年4月に、太陽光や風力などの非化石電源で発電された電力の環境価値を証書化した非化石証書を用いた、実質再生可能エネルギー100%の電力運営をすると発表しており、グリーンビルディングの率先した取り組みを始めています。
グリーンビルディングの効果と課題
グリーンビルディングは、様々なステークホルダーへメリットをもたらしています。
まず、施設運営にかかる経費を大幅に削減することができ、一般的な商業建築物と比較すると運営コストが約20%も低く、1年当たりで運転コストは約10%も削減可能です。
また、不動産評価額は平均して4%高いことも特徴であります。
他には、施設利用者の健康面や生産性への好影響であるというデータもあり、関わる人と環境に優しいグリーンビルディングは持続可能な社会生活実現に向けて中心的な役割を担う存在として期待されています。
主な課題としては、施設へ最新のシステムを導入することで予期せぬ不具合発生の可能性もある点です。
また、施設によっては想定よりも光熱費を削減できない・水消費量が変わらない・省エネ効果が低いといったケースもゼロではないため、リスク管理も徹底しておくことが必要です。
モビリティの変革
現代社会では、自動車や公共交通機関などの運輸部門が、世界のCO2排出量の16%を占めている事実があります。サステナブルな社会実現に近づくために、私たち一人一人が、環境負荷の少ない移動の仕方を見つめ直し、グリーン代替策を求めていくことが不可欠です。
低炭素モビリティとは
運輸部門によるCO2排出量は2001年の2億630万トンをピークに、この20年間は少しずつ減少傾向にあります。これは自動車部門の燃費向上や輸送量減少によるもので、2019年の数値では2億600万トンでした。
それでも日本におけるCO2全体のうち2割を運輸部門は占めており、低炭素化社会の実現には、モビリティにおける排出量削減が必須です。
モビリティの変革と課題
モビリティ変革での企業の取り組み例として、世界的輸送機器メーカーのHONDA(本田技研工業株式会社)では、二輪・四輪・汎用の幅広い商品の技術進化と、エネルギー生成商品の取り組みによって環境負荷低減を図りながら、電動化技術を用いた将来的な低炭素モビリティを提案しています。
具体的には、電動二輪車、四輪のプラグインハイブリッド車や電気自動車、電動カートなどに加えて、ソーラー充電ステーションなどの再エネ供給インフラなどを組み合わせた次世代パーソナルモビリティ実証実験を進めています。
また、他企業やビジネス現場での電動自動車「EV-neo」のリース販売を開始しており、地球規模でのCO2排出量低減モビリティの促進に努めています。
公共交通機関においては、CO2排出量などの環境負荷の大きさは乗り物によって異なり、自家用車に対してバスは約2/5、航空機は約3/4、鉄道・電車は約1/8と少ないです。
このため、人が移動する際に自家用車利用を控えて鉄道・バスなどの公共交通機関を利用すれば、当然CO2排出量の削減につながります。
しかし課題としては、公共交通システムの一つとして、各自治体でコミュニティバスやデマンド型乗合タクシー等の導入に向けた取組みが進んでいますが、1万人未満の人口規模の市町村における導入進歩状況は、人口規模の多い市町村に比べて低い傾向があります。環境に配慮しながらポストコロナ社会において地域特性に合わせた移動交通サービスの活性化を目指す必要があります。