大規模な太陽光発電が可能になる「メガソーラー」システムですが、環境破壊への影響も懸念されています。メガソーラー発電がもたらす自然環境への影響、今後の日本のエネルギー戦略にどのように寄与するのか解説します。
メガソーラーと日本のエネルギー戦略
今後、電力の再生可能エネルギー化を押し進めていく必要がある日本にとって、大きな役割を期待されているのがメガーソーラーです。ここでは、メガソーラーの発展とエネルギー戦略との関係性、環境への影響について解説します。
メガソーラーの発展と日本のエネルギー需要
メガソーラーとは、主に産業用として活用される大規模な太陽光発電システムです。家屋の屋根に設置されることが多い住宅用の太陽光発電に対して、メガソーラーは未利用の広大な土地に数千〜数万単位の太陽光パネルを設置します。
メガソーラーは、100〜1,000軒分の家庭の電力を生み出せる大規模な発電システムで、Appleなどの世界的な大企業も、メガソーラー事業で成果を上げ、電力の再生可能エネルギー化100%を達成しています。
だた、日本ではメガソーラーの全発電量に占める割合は、まだまだ低いのが現状です。設置場所の確保など多くの課題があり、導入が進んでいません。とりわけ環境への影響を最小限に抑えるための対策は必須です。
メガソーラーの環境への影響
メガソーラーは再生可能エネルギーの一旦を担う発電システムとして期待されている面もありますが、一方で環境への深刻な影響が懸念されています。その1つが、メガソーラーの設置場所を確保するために行われる森林の伐採です。
現在日本では、太陽光パネルを設置する平地の場所がなくなりつつあり、山間部に設置されるようになってきています。通常メガソーラーの設置に必要な広さは1〜2ヘクタール程度です。しかし、再エネ開発(メガソーラーと風力発電)によって、2022年5月の時点で約23,000ヘクタールの森林が失われていることが分かっています。
森林の消失は、生態系が破壊され、周辺の希少動物が絶滅の危機にさらされるなど生物多様性を脅かす要因にもなっています。また、土砂崩れなどの災害や、廃棄された太陽光パネルから流れ出た有害物質による土壌汚染のリスクも深刻な問題です。
ただ、太陽光発電によって得られる経済的利益と環境保全はトレードオフの関係にあります。双方のバランスをいかに取るかという点を考えていかなければいけません。
出典・参照:一般財団法人 日本熊森協会 日本はすでに再エネで23000ha の森林を伐採済み(メガソーラー+風力発電)
メガソーラーの環境破壊への対策
メガソーラーによる環境破壊への影響は深刻ですが、完全にストップしてしまうのは建設的な対応ではありません。環境に配慮しながらメガソーラーを推進していくための方策を見ていきましょう。
環境に優しい太陽光発電の利用
メガソーラーの設置を進めながら環境を守っていく取り組みの1つに、ソーラーシェアリングという方法があります。ソーラーシェアリングは、農業と太陽光発電を同じ区画で同時に行う取り組みです。農地に支柱を立て、その上にソーラーパネルを設置することで、太陽光発電と農業を両立させることができます。既存の農地を活用すれば、森林を伐採する必要がありません。
たとえば、千葉県匝瑳市では、耕作放棄地となっていた農地をソーラーシェアリングに転用。メガソーラーの設置場所の確保はもとより、営農者の収入源を獲得できたことで移住者や定住者が増加するなど、地域の活性化にもつながっています。
出典・参照:千葉エコ・エネルギー株式会社 ソーラーシェアリングによる取組み事例紹介
また、破損などで不法投棄された太陽光パネルの問題を解決するため、2022年7月から太陽光発電設備の廃棄費用積み立てが義務化されました。従来は、積立費用や時期など発電事業者の判断に委ねられていたが故に、事業終了後に放置されるなどの問題が起こっていました。今後、固定買取制度を利用する事業者には、廃棄費用の外部積み立てが必要となるため、問題は解消されていく見込みです。
信頼できる太陽光発電業者の選び方
メガソーラーによる環境破壊を防ぐためには、環境面への配慮をしっかりと行っている信頼できる太陽光発電業者を選ぶことも重要です。
過去の施工実績などを確認し、信頼できる業者であるかの確認を事前にしておきましょう。また、自社で工事が行えて直接契約を結べるかという点も大事です。設備導入の工程を自社で一貫して把握・管理できない業者の場合、トラブルを起こすリスクがあります。
また、設置してからのアフターフォローもしっかりしているか確認しておく必要があります。太陽光発電は、10年以上という長いスパンで管理が必要な設備です。故障対応やメンテナンスが必ず必要になってきます。たとえば、出力保証や自然災害補償をしてくれる業者もあるので、どのような保証やアフターサービスがあるのかチェックしておきましょう。
メガソーラーの未来
メガソーラーは、環境への配慮や周辺住民の理解を得るなど多くの課題があります。メガソーラーの持続可能な進化のために、これらの課題を解決する施策や技術的進歩が必要不可欠です。メガソーラーの今後のヴィジョンを見ていきましょう。
メガソーラーの持続可能な進化のための施策
政府では、改正温対法(地球温暖化対策推進法)を効果的に運用し、エネルギー政策による企業や自治体への支援を年々拡充しています。環境省の地域共生型太陽光発電の推進もその1つです。
埼玉県所沢市の事例では、官民連携で遊休農地を活用したソーラーシェアリングを実施。また、調整池において水上メガソーラーを事業化しています。水上太陽光発電は、高温になりにくく発電効率が良いというのがメリットです。水上は設置可能な場所が多く、土地の造成工事も不要なため各地で導入が進んでいます。
また、廃棄物最終処分場をメガソーラーの設置場所として活用する事例も増えてきています。廃棄物最終処分場は、埋め立て終了後も排水管理やガス抜き等の維持管理をする必要があり、かつ用途が限定されるため、有効活用が課題となっていました。全国には約3,600ヶ所の処分場があり、その内半分近くはすでに埋め立てが終了しています。該当の処分場にメガソーラーを設置することによる、太陽光発電のポテンシャルは約700万kWと推定されており大きな効果が期待されています。大阪の堺太陽光発電所や、静岡の浜松・浜名湖耐用発電所などでは実際に大きな成果を上げています。
出典・参照:環境省 1.太陽光発電 (参考)所沢市の事例
出典・参照:環境省 廃棄物最終処分場への太陽光発電導入 事例集
日本の再生可能エネルギー戦略とメガソーラーの役割
脱炭素化という世界的潮流の中で、メガソーラーを含めた再生可能エネルギーの割合を上げていくことは、日本のエネルギー戦略にとって必須です。しかし、2022年の日本の全電力中に占める太陽光発電の割合は約10%と、普及状況は芳しくありません。この中には、家庭用の自家消費型発電も含まれるため、産業用途で使われているメガソーラーの割合はさらに少なくなります。
メガソーラーは、国のエネルギー政策による後押しや収益性の面でメリットも大きく、今後の再エネ戦略にとって重要な役割を持ちます。可能な限り環境への負荷に配慮しながら、地域とも連携を図り、官民が一体となって取り組んでいく必要があるでしょう。