【徹底解説】2050年の脱炭素化目標はどのように達成されるのか?

地球温暖化に影響を及ぼす二酸化炭素の排出量を削減するために、全世界で「脱炭素化」に向けた様々な取り組みが行われています。日本を始め、世界各国では2050年という目標期限を設定していますが、目標達成に向けて具体的にどのような取り組みが行われているのかを詳しく解説します。

目次
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2050年脱炭素社会実現の背景

2050年までに脱炭素社会を実現するという世界的な動きには、どのような背景があるのでしょうか。

温室効果ガスの問題とは

地球温暖化に最も影響を及ぼしているのが、二酸化炭素を始めとする温室効果ガスの問題です。

私たちは、石炭や石油、天然ガスなどの炭素(カーボン)を含む化石燃料を燃焼して、生産活動や生活に必要なエネルギーを得ています。このエネルギーの生成過程において発生する二酸化炭素が、温室効果ガスの中で最も排出量割合が多く、地球温暖化の最大の原因になっています。

「脱炭素化(カーボンニュートラル)」は、2050年までに大気中の二酸化炭素をゼロにしようというものです。ただ、二酸化炭素の排出量を減らすだけでは、その目標は達成できないと言われています。
そこで、自然界で行われる炭素固定を人工的に行う新技術の開発や、排出されたCO2を回収して地中に埋めるなどして、実質的にゼロの状態にしようという考え方が採られています。

国際的な取り組みとパリ協定

近年、地球温暖化はかつてない規模で進行しています。世界的な気候変動やそれに伴う災害による被害が深刻化する中、1つ1つの国々が共に手を取り合い協力して問題解決に取り組むことが求められています。
2015年にCOP21で合意、2016年に採択された「パリ協定」は、2020年以降の温室効果ガス排出削減等を掲げた新たな国際的な枠組みです。これは1997年に採択された京都議定書に代わるもので、気候変動枠組条約に加盟する全ての国が参加する、歴史上初めての公平な合意です。

パリ協定は、「産業革命以前に比べて平均気温の上昇を2℃、努力目標として1.5℃に抑える」ことを世界共通の目標として掲げ、これに対し各国が戦略を策定し5年ごとに削減目標を提出することになっています。

日本の脱炭素社会への取り組み

政府の目標と政策

日本では2021年10月に当時の菅総理大臣が、2050年を目標にカーボンニュートラルを実現する考えを表明。これに基づき、2019年6月に策定された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定されました。

温室効果ガス削減目標に対する具体的な施策がいくつか掲げられていますが、その中でも政府がとりわけ力を入れて取り組んでいるのが「再生可能エネルギー」の活用です。
環境省は、地域を主体とした再生可能エネルギーの導入を進め、次々と脱炭素を実現していく「脱炭素ドミノ」を生み出す方向性を示しています。
2030年までの10年間を重要と位置づけ、約310の自治体、人口規模で1億人超の「ゼロカーボンシティ」を実現する計画です。
そのために、再生可能エネルギーに関わる事業の税制優遇や補助金・融資などの各種支援制度を整備して、民間企業や団体が事業に参入しやすいような施策が取られています。

出典・参照:環境省庁 2050年カーボンニュートラル実現に向けた展開
https://www.env.go.jp/content/900495500.pdf

出典・参照:経済産業省 各種支援制度
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/support/index.html

現在日本では、二酸化炭素を排出する化石燃料を使用した火力発電の割合が、全体の電源構成の7割以上を占めています。2030年を目標に石炭火力発電の段階的な削減を図るため、水素・アンモニア混焼といった脱炭素型火力への置き換えを行い、石炭火力発電の引き下げを進めています。

出典・参照:経済産業省 2050年CNに向けたエネルギー構造の変化
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/052_05_01.pdf

企業の役割とチャレンジ・ゼロプロジェクト

地球温暖化が経済全体にも大きな影響を及ぼす中、企業が果たす社会的役割も新しい局面を迎えています。国の税制優遇や民間投資の喚起が後押しとなり、大企業を筆頭に脱炭素化に向けた様々な取り組みが広がってきています。
具体的な取り組み事例としては、電気自動車(EV)をはじめとしたエコカーへの乗り換えや、大気汚染や温室効果ガス抑制の観点から見たスマートモビリティの利用促進などが挙げられます。
例えば、日本郵政グループでは2025年までに3万台以上の車両をEV車(3.3万台)、低燃費車両(960台)に切り替えるとしています。

出典・参照:日本郵政グループ 環境マネジメントシステム
https://www.japanpost.jp/sustainability/environmental_management/

また、スマートモビリティの一環として注目されている新たな移動サービス「MaaS」により、公共交通機関の利用が活発化すれば、自家用車による排気ガスの排出が抑制されることも期待されています。

出典・参照:国土交通省 日本版MaaSの推進
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/japanmaas/promotion/

脱炭素社会の実現に向けた企業の技術革新や社会への実装・普及を促進するため、日本経済団体連合会は「チャレンジ・ゼロ」というプロジェクトを発足しました。
このプロジェクトは、企業がチャレンジするイノベーションの具体的な取り組みやその成果を積極的に公表していくものです。異業種も含めた企業同士、国や大学など産官学が一体となって、脱炭素化に向けて協働・連携していく枠組み作りを目指しており、現在194の企業・団体が参画しています。

出典・参照:日本経済団体連合会 チャレンジ・ゼロ 参加企業・団体
https://www.challenge-zero.jp/jp/member/

個々人ができることと生活スタイルの変化

温室効果ガス削減への取り組みは、国や一部の大企業にだけ求められているものではありません。中小企業や個人の家庭内においても意識し、取り組めることは数多くあります。

省エネライフと電気自動車への移行

資源エネルギー庁は、節電を心がけることはもとより、省エネ家電への切り替えを始めとしたスマートライフへの移行など、家庭でできる省エネライフを推進しています。その他にも、ペットボトルなどプラスチックごみの廃棄を減らすため、マイ箸やマイバッグを利用することなども挙げられるでしょう。
ガソリン車から電気自動車への切り替えも盛んに叫ばれていますが、日本ではまだまだEV車の普及率は低い状況です。2022年のEV車の新車販売台数は全体の1.34%。アメリカでは同年の新車販売台数の5.6%がEV車、オランダやスウェーデンなど欧州の一部の国ではEVのシェアは19%を超え、EU全体でも10.6%に上ります。

日本でも今後政府の推進や国内メーカーの技術開発によって、EV車への移行・普及が進んで行くことは十分考えられます。

出典・参照:東京電力
https://evdays.tepco.co.jp/entry/2021/09/28/000020#Ⅰ日本のEV普及率

ESG投資と個人の役割

近年、ESG投資への関心が急速に高まっています。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮した経営を行う企業に、積極的に投資を行っていくというものです。
そのため、企業はより一層カーボンニュートラルに向けた取り組みを推進していくことが強く求められています。一方で投資を行う企業の株主など個人の視点、役割も重要です。ESG投資を行うことは、間接的に脱炭素化へ参画する役割を担うと言えるからです。

欧州の成功例とその要因

世界全体で進むカーボンニュートラルの取り組みですが、とりわけ欧州では各国独自の様々な取り組みがなされ数多くの成功事例があります。

欧州諸国の脱炭素進捗

2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするというパリ協定に基づき、EUでは2030年までに1990年比で55%以上の排出削減を達成する中期目標を掲げています。
1990年から2018年までの実績を見ると、EU全体で温室効果ガスの排出量は23%削減されている一方で、1990年から2019年までの30年間におけるEUのGDPは63%にまで拡大しています。
こうした現象は、EU以外のアメリカや日本など主要な先進国では一例もなく、脱炭素を進めながらも経済の成長を実現した極めて重要な成果と評価されています。
出典・参照:自然エネルギー財団 EUの温室効果ガス排出量(1990〜2018年)
https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_EuropeDecarbonization_JP.pdf

成功の要因と取り組み

スウェーデンでは、豊富な森林資源を活用したバイオマス発電によって温室効果ガスの排出量の大幅な削減を実現しました。また経済政策とも連動させ、脱炭素化と経済成長の両立に成功した都市も存在します。

出典・参照:海外電力調査会 各国の電気事業(2019年版)スウェーデン
https://www.jepic.or.jp/data/w2019/w09swde.html

デンマークは、カーボンニュートラルに加えて、エネルギー供給を100%再生可能エネルギーで賄うという高い目標を掲げている国でもあります。首都のコペンハーゲンは2025年までに世界初の「ゼロカーボンシティ」になることを目指し、渋滞緩和や公害の抑制を目的とした「グリーン・モビリティ」など独自の施策を行っており、炭素排出量の低減で成果を上げています。

出典・参照:国土交通省 デンマーク、フィンランド、タイの事例(移動)
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r03/hakusho/r04/html/n1312c02.html

ドイツでは、2030年までに自然エネルギーによる発電で総電力消費の65%を賄うことを法制化、遅くとも2038年には石炭火力発電の廃止を完了するとしています。民間企業にもその流れは広く浸透し、多くの電力会社がすでに再生可能エネルギーのみを供給している状況です。

出典・参照:自然エネルギー財団 ドイツの炭素戦略
https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20211201.php

欧州各国で脱炭素化が進み成果を上げている背景には、それぞれの国で独自の目標を掲げ、達成に向けた革新的なアイディアが生まれ実践されているからと言えるでしょう。

未来の展望と課題

脱炭素化に向けた未来のために今課題になっていること、それに対して私たちができることは何でしょうか。
脱炭素社会を実現するために、「パリ協定」を基点とした国際的な取り組みが全世界で行われています。日本もその一員として、国による様々な政策、企業の技術革新が求められており現在進行形で行われています。
しかし、欧州の成功事例からも分かるように、私たち一人ひとりが個人レベルの取り組みを小さなことからでも行っていくことが必要でしょう。

世界は18世紀後半の産業革命以来、急激な経済発展を遂げてきました。しかし、その目覚ましい成長と引き換えに、地球温暖化などの環境破壊が引き起こされてしまっています。
今後は、富や便利さばかりを追求する社会ではなく、私たちや未来の世代の人たちが生きる上で必要な環境を守りながら、豊かな暮らしができる「持続可能な社会」への進歩が必要だと言えるでしょう。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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