脱炭素経営の全てを理解する!脱炭素経営成功の秘訣

近年、脱炭素経営が大きな注目を集めています。
この記事を通して、脱炭素経営の意味と必要性、取り組むメリットとデメリット、具体的な実施方法や事例を学んでいきましょう。

目次

脱炭素経営とは?

「脱炭素経営」とは、企業が経営活動の中で排出する二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを削減または中和する取り組みを意味します。
以下に、脱炭素経営の背景や目指すゴールについて、解説していきます。

脱炭素経営が求められる背景

脱炭素経営が求められる背景には、
・気候変動の進行
・国際的な取り組み
・企業への期待
があります。

気候変動の進行

地球温暖化による気候変動の影響が深刻化しています。
高温、干ばつ、豪雨、海面上昇などの異常気象が増える中、それらの影響は人々の生活や経済、生態系に多大な影響を及ぼしています。例えば、過去の50年間で地球の平均気温が0.15°Cずつ10年ごとに上昇しています。

国際的な取り組み

2015年に採択されたパリ協定では、気温上昇を産業革命前の水準から2℃以下、できれば1.5℃以下に抑えるという目標が設定されました。
パリ協定の目標設定の理由は、気候変動の深刻な影響を防ぐための国際的な取り組みを強化し、持続可能な未来を築くためです。
これを達成するために、日本でも、2050年までに脱炭素社会(カーボンニュートラル)の実現を目指しています。

企業への期待

消費者、投資家、ステークホルダー(利害関係者)からの圧力が高まっています。
サステナビリティ(持続可能性)や企業の社会的責任(CSR)が重視され、企業のCO2排出量や環境への取り組みが経営評価の一部となってきています。

企業への期待が高まっている背景には、気候変動や環境問題、社会的公正の課題に対する意識の高まりや、情報の透明性とアクセス性の向上などが挙げられます。例えば、インドネシアやブラジルでの熱帯雨林の伐採問題を受けて、多くの大手企業が持続可能な森林管理を実践する「FSC認証」の木材や紙製品の使用を公約したことなどが事例としてあります。

脱炭素経営の目指すゴール

脱炭素経営の目指すゴールは、
・CO2の削減
・サステナビリティの実現
・ビジネスチャンスの創出
があります。
以下にその内容と理由を解説します。

CO2の削減

最終的な目標は、企業の活動によるCO2の排出をゼロまたは最小限にすることです。気候変動による影響を最小限に抑えるため、そして国際的な合意や規制(例: パリ協定)に対応するためには、企業におけるCO2の排出を大幅に削減する必要があります。

サステナビリティの実現

環境だけでなく、社会や経済の側面からも持続可能な経営を追求することで、長期的な企業価値の向上を目指します。
企業が長期的に存続し、成長するためには、環境や社会との調和を図る持続可能な経営が不可欠です。資源の枯渇、環境破壊、社会的な不平等などの課題を無視してビジネスを進めることは、企業のリスクを増大させるだけでなく、将来の経営の持続性も脅かすことになるからです。

ビジネスチャンスの創出

脱炭素経営を積極的に推進することで、業界や社会でのリーダーシップを発揮し、企業ブランドの向上や新しいビジネスチャンスの創出を目指します。
環境問題や社会的課題への対応は、単に「リスクの回避」だけでなく「新しいビジネスチャンスの創出」をもたらす可能性があります。消費者の環境意識の高まりや、環境技術の進展、新しい市場の出現など、持続可能性を追求することで新しい商品やサービス、ビジネスモデルを生み出すチャンスが広がります。

脱炭素経営を推進するメリットとデメリット

脱炭素経営を推進するメリットは、企業イメージの向上、融資の受けやすさ、エネルギーコスト削減などがあります。
一方、初期投資や維持費にコストがかかるといったデメリットもあります。

脱炭素経営のメリット

脱炭素経営のメリットは、
・企業イメージの向上
・融資の受けやすさ
・エネルギーコスト削減
です。
以下にその具体例とともに解説します。

企業イメージの向上

信頼の獲得:企業が環境問題に取り組むことは、消費者やビジネスパートナーからの信頼を獲得する要因となります。Unileverでは、サステナブルリビングプランを推進し、環境への取り組みを強化していることで、消費者からの信頼や評価が高まっています。

ブランド価値の向上:脱炭素経営の取り組みは、企業のサステナビリティ活動の一環としてブランド価値を高める効果があります。
パタゴニアは、持続可能な素材を使用した商品の提供や、環境保護のためのキャンペーン活動を積極的に行っています。その取り組みにより、エコフレンドリーなブランドとしての評価を固め、消費者のロイヤリティを向上させました。

融資の受けやすさ

ESG(Environmental, Social, Governance)投資の増加:ESGの観点から投資する投資家が増えてきており、環境への取り組みが良好な企業は投資対象として魅力的になります。TOYOTAは、環境への取り組みや持続可能性を評価され、グリーンボンドなどの環境関連の資金調達手段を効果的に活用しています。

緑色融資(グリーンローン)の受けやすさ:環境に配慮したプロジェクトやビジネスに対して、特定の金融機関から有利な条件での融資を受けられる場合があります。東京ガスは、持続可能な社会の実現を目指して、再生可能エネルギーやエネルギー効率の高い技術の導入を進めています。
これらのプロジェクトのための資金調達にあたり、特定の金融機関から有利な条件でのグリーンローンを受けています。

エネルギーコスト削減

エネルギー効率の向上:エネルギー使用の最適化や省エネ技術の導入により、必要なエネルギーの量を減少できます。

再生可能エネルギーの導入:太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入により、長期的なエネルギーコストの削減や価格の変動リスクを低減できます。世界中のAppleの施設は、2018年から100%再生可能エネルギーで運営されています。これにより、大量の電力コストを削減しているとともに、CO2排出も大幅に減少させています。

脱炭素経営のデメリットと克服方法

脱炭素経営にはデメリットもあります。

高い初期投資:新しい技術や再生可能エネルギー設備の設置などは、初期投資が高くなる場合があります。

維持費:一部のグリーンテクノロジー(再生可能エネルギー技術など)は、特定のメンテナンスや部品の交換が必要で、これが長期的なコスト増加の原因となることがあります。
例えば、太陽光発電では、ソーラーパネルの清掃やインバータの交換が必要となります。
ソーラーパネルの清掃費用は、施設の規模や清掃の頻度、地域によって変動しますが、家庭用のシステムの場合、自分で清掃するか、または数万円程度の費用で専門業者に依頼することが一般的です。また、インバータの交換費用は、家庭用の小規模システムで数万円から数10万円、大規模施設の場合はそれ以上の費用がかかることが一般的です。

デメリットの克服方法

助成金や税制優遇:一部の地域では、環境に配慮したプロジェクトや技術の導入を奨励するための助成金や税制の優遇措置が提供されています。以下にその例を挙げます。

助成金:太陽光発電設備の導入や設置コストの一部を補助する助成金

税制優遇措置:再生可能エネルギー研究開発のための助成金

投資税額控除:太陽光発電設備の購入や導入に関連する経費を、税金の計算上から一部控除できる制度

減税:太陽光発電で生成される電力を売却した際の所得に対する税率を低減する措置

固定資産税の軽減:太陽光発電設備の導入による不動産の価値上昇分に対する固定資産税の軽減

これらにより、初期投資や維持費の負担を軽減できます。

太陽光発電から得られる売電収入は、事業所得として認識されます。したがって、売電収入から太陽光発電設備の経費(例: 設備の減価償却費、保守・管理費など)を差し引いた金額が課税所得となります。例えば、ある家庭が年間で100万円の売電収入を得たとします。
しかし、そのうち設備の償却費やメンテナンス費用として30万円の経費が発生した場合、課税所得は70万円となり減税されます。

長期的なROI(Return On Investment)の評価:高い初期投資や維持費に対しても、長期的な運用によるエネルギーコストの削減やCO2低減による経済的メリットを考えることで、投資の価値を正確に評価できます。

脱炭素経営を成功させる具体的なステップ

脱炭素経営を成功させるステップは、以下のようになります。
・目標設定
・戦略策定
・実行
・モニタリングと評価
・継続的な改善と更新

TCFD、SBT、RE100などのフレームワークや具体的な手法を通して、成功事例を分析し、実際の取り組み方を解説していきます。

取り組みのフレームワークと手法

環境問題への対応を促進するための国際的なフレームワークや取り組みには、TCFD、SBT、RE100などがあります。以下の表は、各フレームワークやイニシアチブの主要な特徴や目的、手法を簡潔にまとめたものです。

・フレームワーク
・内容・特徴
・目的
・手法

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)

・金融安定委員会による気候関連の金融情報開示のタスクフォース
・企業の気候変動リスクと機会の管理と開示の推奨
・4つの領域(ガバナンス、戦略、リスク管理、メトリクスとターゲット)での開示推奨

SBT(Science Based Targets)

・2℃または1.5℃目標に合致するCO2削減目標の設定
・企業が具体的な削減目標を設定・達成するためのフレームワーク
・CO2排出の計測、目標設定、進捗報告と検証

RE100(Renewable Electricity 100%)

・企業が100%再生可能エネルギー利用を目指すイニシアチブ
・企業の再生可能エネルギー導入の促進とリーダーシップ取得
・100%再生可能エネルギーへの公約とその進捗報告

TCFDは、気候変動に関する財務リスクを特定し、それを基に経営戦略を策定し、その情報を透明に開示するための枠組みです。具体的には、事業活動や資産に対する気候変動のリスクを評価し、その結果をもとに中長期的な経営戦略を策定、投資家やステークホルダーに開示します。

SBTは企業が2℃以下の気温上昇を目指すための具体的なCO2排出削減目標を科学的根拠に基づいて設定するためのイニシアチブです。この目標に基づいて具体的な行動計画を策定し、その進捗を定期的にモニタリング、見直しを行うことで持続的な排出削減を促進します。

RE100は企業が電力消費の100%を再生可能エネルギーで賄うことを目指すグローバルイニシアチブです。企業はこのイニシアチブに参加し、再生可能エネルギーの導入計画を策定、その取り組みの進捗を定期的に報告することで、環境問題への積極的な取り組みをアピールします。

具体的な成功事例

日本国内の企業におけるTCFD、SBT、RE100の取り組みの事例を紹介します。

TCFD

三井住友銀行はTCFDの推奨事項に基づいて気候変動リスクの評価や開示を進めています。具体的には、気候変動に関連するリスクや機会を金融業務にどのように組み込むかの方針を公表し、持続可能な経営の推進を目指しています。

(参考サイト) TCFD提言への取組

SBT

パナソニックは、SBTイニシアチブを通じて、2030年までに自社のCO2排出量を2016年比で30%削減するという目標を公表しています。そのための取り組みとして、省エネ製品の開発や生産プロセスの改善などを進めています。

RE100

リコーは、RE100のメンバーとして、2050年までに全世界のビジネス活動において100%再生可能エネルギーを使用するという目標を掲げています。日本国内でも、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入を進めています。

脱炭素経営の未来と企業の責任

グリーンテクノロジーの進化や政府、国際的な取り組みの動向を予測し、企業の責任と市民の役割について解説します。

脱炭素経営の未来

グリーンテクノロジーは、太陽光や風力の発電効率が上がり、新しいエネルギー貯蔵技術が出現する一方、輸送分野では電気・水素車の普及と自動運転の組み合わせでエネルギー効率が上昇します。
製造では環境に優しい材料の採用と再生エネルギー活用が増える見込みです。
政府の動きとしては、2050年のカーボンニュートラル政策が強化され、環境対応融資が拡大し、国際的な気候協力や新たな協定の動きが加速するでしょう。

グリーンテクノロジーの進化

エネルギー:太陽光発電の効率向上や、風力発電技術の進化、さらには新しい形のエネルギー貯蔵技術が商業化される可能性があります。

輸送:電気車や水素燃料電池車の普及が進むと共に、自動運転技術の組み合わせによってエネルギー効率の向上が期待されます。

製造:環境に優しい材料の使用や、再生可能エネルギーを利用した生産技術が主流となるでしょう。

政府や国際的な取り組みの動向

強化される規制:多くの国々が、2050年までのカーボンニュートラルを目指す政策を実施・強化していくことが予想されます。

緑色融資:環境に配慮したプロジェクトや企業への融資を優遇する政策やプログラムが拡大するでしょう。

国際協力:グローバルな気候変動問題を解決するための国際的な取り組みや協定(例:パリ協定の後継)が進められ、国際的な協力がさらに強化される可能性があります。

企業の責任と市民の役割

企業は、炭素排出量や環境活動の透明な開示を通じて、消費者や投資家の判断材料を提供すべきであり、持続的な環境技術や製品の開発、そしてステークホルダーとの連携を進める責任があります。一方、市民は環境配慮の消費選択を行い、環境情報の収集・共有を推進し、市民活動や政策への関与を通じて、環境問題への取り組みを後押しすべきです。

企業の責任

情報の透明性と開示:企業は自らの炭素排出量や環境への取り組みに関する情報を透明に開示すべきです。これにより、消費者や投資家が適切な判断を下す材料を得られます。

継続的なイノベーション:企業は環境に優しい技術や製品の開発に継続的に取り組む責任があります。これにより、社会全体のCO2排出の削減を促進できます。

ステークホルダーとの協働:企業はビジネスパートナー、顧客、地域社会と連携し、共通の目標に向けて取り組む必要があります。

市民の役割

意識的な消費選択:市民は日常の消費行動において、環境に優しい製品やサービスを選択することで、企業に対して環境への取り組みを促す役割を果たします。

情報の収集と共有:環境問題に関する情報を積極的に収集し、それを周りの人々と共有することで、より多くの人々が環境問題に関心を持つことを促進できます。

市民活動や政策への関与:市民はNGOや市民団体に参加する、選挙に参加するなどして、環境問題を取り上げる政策や取り組みをサポートできます。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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