グリーンインフラという言葉を知っていますか?ここでは、その実際の事例や効果、課題について解説します。
グリーンインフラの重要性
グリーンインフラの定義、特性、その必要性について述べます。
地球温暖化や異常気象の問題にどのように対応しているかを解説します。
グリーンインフラとは?
「グリーンインフラ」とは、自然のエコシステムやその機能を活用した持続可能なインフラのことを指します。
「持続可能なインフラ」とは、長期的に持続可能な方法で環境、社会、経済のバランスを取りながら、人々の生活の質を向上させることを目的としたインフラを指します。例えば、伝統的なコンクリート製の道路や建物とは異なり、グリーンインフラは自然のプロセスを利用したり模倣したりすることで、都市の熱負荷を軽減したり、雨水を自然に浸透させることで洪水のリスクを低減するなどの恩恵をもたらします。
具体的には、水質浄化、洪水制御、炭素の吸収・貯蔵、生物多様性の維持、熱環境の改善などで、以下のようなものが含まれます。
森林:炭素の吸収・貯蔵、水源の保護、生物多様性の維持など。
湿地:水質浄化、洪水制御、生物多様性の維持など。
緑の屋根や壁:都市の熱環境の改善、雨水の管理など。
市街地の公園や緑地:生態系のハブとしての役割、レクリエーション、熱環境の改善など。
グリーンインフラの考え方は、コンクリートや鋼鉄などの「グレイインフラ」に代わるものとして、またはそれを補完するものとして提案されています。
従来のグレイインフラに頼るアプローチはしばしば高コストであり、長期的には持続可能ではない場合が多くある。対照的に、グリーンインフラは持続可能で、多くの場合、経済的、環境的、社会的に多面的な利益をもたらすとされます。
グリーンインフラが求められる理由
グリーンインフラが求められる理由は多岐にわたりますが、気候変動への対応は主な理由であり、地球温暖化や異常気象に対して、以下のように対応しています。
炭素の吸収・貯蔵:森林や湿地は、大量のCO2を吸収し、炭素を貯蔵する能力があります。これにより、大気中のCO2濃度を低減させ、地球温暖化の緩和に貢献します。
ヒートアイランド現象の緩和:都市部の緑地や樹木、緑の屋根や壁は、熱を吸収・放散し、周囲の気温を下げる効果があります。これにより、都市のヒートアイランド現象を緩和し、高温や熱波によるリスクを低減します。
海面上昇への対応:マングローブや塩性湿地は、海面上昇や暴風による被害を緩和します。これにより、沿岸部の地域生活やエコシステムが保護されます。
グリーンインフラの海外事例と効果
海外でのグリーンインフラの事例を紹介し、その実施によってもたらされた社会的・環境的効果について解説します。
ニューヨークのハイライン
ニューヨークのハイラインは、かつての高架鉄道を公園や遊歩道に変えた再開発プロジェクトです。マンハッタンのウエストサイドを走るこの緑の通路は、観光スポットとして人気があり、その実施によりいくつかの顕著な社会的・環境的効果をもたらしています。
社会的効果
ハイラインは、地域住民や観光客にとっての新しい公共空間として利用され、2019年には約800万人の訪問者があったと報告されています。
経済的活性化:ハイライン周辺の不動産価格が上昇し、新しい商業施設や住宅が増加しました。
2003年から2011年の間に、ハイライン沿いの不動産の価値は約20億ドル増加しています。
観光地としての人気も高まり、地域経済に新たな活力がもたらされました。
公共空間の提供:ハイラインは都市部での新しい憩いの場として、地元住民や観光客に広く利用されています。
これにより、市民の生活の質が向上しています。
文化・アートの促進:ハイライン沿いにはさまざまなアート作品や展示が配置されており、文化的活動の場としても機能しています。
環境的効果
生物多様性の増加:ハイラインには原生的な植物や花が植えられており、都市部の生態系としての役割を果たしています。
ヒートアイランド現象の緩和:都市の緑化は、都市部の気温上昇を抑える効果があります。
ハイラインのような緑地は、ヒートアイランド現象の緩和に寄与しています。
緑の交通ネットワーク:ハイラインは、都市部を歩いて移動するための新しいルートとして提供されており、自動車の利用を減少させる可能性があります。
バルセロナの街路樹整備
バルセロナは、持続可能な都市開発と市民の生活の質向上を目指して、グリーンインフラの一環として街路樹整備を積極的に行っています。
社会的効果
美観の向上:緑豊かな通りは都市景観を美しくし、市民に心の安らぎをもたらします。
憩いの場:緑地は市民の休憩や憩いの場として提供されます。
環境的効果
ヒートアイランド現象の緩和:街路樹は太陽の光を遮り、都市の温度上昇を緩和します。
空気の浄化:樹木は大気中のCO2を吸収し、酸素を放出することで、空気質の改善に寄与します。
騒音の減少:樹木は騒音を吸収する効果があり、都市の騒音環境を改善します。
グリーンインフラの日本事例と効果
日本国内のグリーンインフラの事例を取り上げ、それらの事例が地域や社会にどのような影響を与えているかを解説します。
IKE・SUNPARK
日本国内のグリーンインフラの事例として、「IKE・SUNPARK」があります。
IKE・SUNPARKとは愛称で、正式名称は、「としまみどりの防災公園」です。
この公園は、かつて造幣局があった池袋の地域に位置しており、木造の家が密集しているエリアの南と東にあります。
この地域では以前から公園化の要望があり、豊島区は造幣局の移転を機に、防災の中心地として公園を整備することを決定しました。
公園は日常と災害時の双方で役立つ多機能な緑の空間として整備され、地域の活気と防災能力の向上、そして魅力的な都市開発を目指しています。
その具体的な、公園施設の仕様や機能は、以下の通りです。
(参考サイト) 国土交通省サイトより抜粋
里山グリーンインフラネットワーク
印旛沼は、千葉県に位置する日本の重要な湿地帯の一つです。
印旛沼とその周辺地域は、グリーンインフラの考え方を取り入れた様々なプロジェクトが行われてきた地域として知られています。
近年では、印旛沼流域で活動する様々な関係者が組成した「ネットワーク」を通じて、新しいプロジェクトや取り組みが提案され、実践活動が進行中です。
例えば、「遊休たんぼ活用研究会」では耕作放棄された水田の活用方法を研究しており、さらに他のプロジェクトでも、里山の多機能性や環境対策についての研究が行われています。
(参考サイト) 国土交通省サイトより抜粋
グリーンインフラの課題と未来
グリーンインフラの現在の課題(例えばメンテナンスの手間や初期整備費用)と、未来に向けた可能性や展望について解説します。
グリーンインフラの課題
グリーンインフラは導入や維持にいくつかの課題が存在します。以下はグリーンインフラの主な課題です。
初期投資の高さ:
グリーンインフラの設置や初期整備には、従来のインフラと比べて高いコストがかかることがあります。この初期投資の高さが、都市や地域での導入をためらわせる要因となることがあります。
維持・メンテナンスの手間:
植生や水系の管理には継続的なメンテナンスが必要で、これには専門的な知識や技術が求められます。定期的な管理が不十分だと、機能が低下するリスクがあります。
長期的な効果の不確実性:
グリーンインフラの効果や持続性は、場所や環境、時間によって変わるため、長期的な効果を確実に予測するのは難しくなります。
グリーンインフラの可能性
グリーンインフラには上述のような課題が伴いますが、その提供する多岐にわたる環境的、経済的、社会的利益を考慮すると、その可能性は課題をはるかに上回るものと言えます。
気候変動の緩和、生物多様性の保全、健康増進などの展望は、都市の持続可能性と住民の質向上のための鍵となるものです。
よって、持続可能な未来を追求する上で、グリーンインフラの積極的な導入・展開は極めて重要な取り組みと結論付けられます。