世界規模でSDGsへの関心が集まるとともに、社会における持続可能性が重要視されています。そして近年、「循環型社会」という言葉を耳にすることも増えています。この社会実現のために、私たち一人一人が地球に対し責任感を持ち、日常における行動を変えていくことは必要不可欠であります。
循環型社会の真髄
前提として、循環型社会とは有限な資源を効率的に活用し、持続可能な形で循環させながらそれらを利用していく社会のことを指します。
循環型社会とは?
循環する社会とは、再利用・再生することで不可欠な資源を循環させ、環境への負荷をも低減させる社会のことです。
経済発展とともに「大量生産・大量消費・大量廃棄」が当たり前とされてきたことから、主要な天然資源の枯渇やエネルギーの価格高騰に加えて、廃棄物処理問題など、循環型社会に向けては多くの課題があることも避けられません。
あらゆる場面で過剰消費を抑制して環境負荷を低減しなければ、持続的で循環する社会成長を維持することは不可能です。現在、使い捨て社会から脱却し循環型社会を実現する取り組みが世界各国で行われています。
循環型社会のメリットとは?
では、循環型社会を目指していく主なメリットを挙げてみましょう。
・SDGsに基づいて、持続可能な社会を実現することが可能になる
・天然資源の枯渇時期を遅らせ、枯渇する事も回避できるようになる
・CO2やその他の温室効果ガスが低減される
・天然資源が廉価になり、サービスや商品の価格が低下する可能性がある
・資源採掘の人的要員、土地や水資源を有効活用が見込まれ、それらの余剰をその他の生産的行為に向けることが可能になる
上記を考慮すると、循環型社会実現の重要性は高まる他ないことがわかります。
私たち一人一人ができること
循環型社会を目指す上で、2000年から社会全体で高い意識が注がれている「リデュース・リユース・リサイクル」といった3Rという環境に配慮する取り組みがあります。最近では、これに「リフューズ・リペア」が加わった5Rが主流となっています。
消費者として私たちができること
冒頭で紹介した5Rは、消費者市場において今後スタンダードになっていくであろうとされています。
過剰消費や廃棄物を減らし、地球環境に優しい行動をとる大きなきっかけになる5Rという考え方は、今後も多方面で広めていく必要があります。
ひとつひとつの行動は小さくても、一人一人が少しずつ進めていくことは大きな成果になることが見込めます。まず毎日の行動で、モノを買う時や使用する時に、使い捨てにならないか・循環するモノであるかを意識していきましょう。
持続可能な消費のための5Rの実践
2000年に制定された「循環型社会形成推進基本法」にて、Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)の3つのRからなる3Rがあります。
その後、廃棄物問題や気候変動に後押しされ、その3Rに、Repair(リペア)・Refuse(リフューズ)という2つのRを加えた5Rが近年一般化しています。
Refuse(リフューズ)
・フリーペーパーやノベルティなども不要なら断る
・道で配られているチラシやサンプルも必要以上にもらわない
・買い物の際には過剰な包装を断る
Repair(リペア)
・壊れたものをすぐに捨てず、修理できるか調べる
・洋服や家具などのリメイクを楽しむ
・修理サービスを行っている店の商品を選ぶ
企業や政府の役割と取り組み
地球規模での気候変動や資源の枯渇など、環境問題はますます深刻化しています。それを受けて企業や政府は、循環型社会実現へ向けた取り組みを促進しています。
企業が取り組む製品の循環設計とリサイクル
循環型社会・経済への流れが世界的に加速している中、これに対応した生産・ものづくりを企業側は求められています。循環させやすいマテリアルの開発や採用だけでなく、長寿命化や回収・分離を第一に考慮した製品設計や製造に取り組む必要があります。
株式会社Nature Innovation Groupが展開する「アイカサ」は、JR東日本子会社と提携し、駅を活用した「傘シェアリングスポット」を導入しています。
日本における年間ビニール傘消費量と一人当たりの所有率は世界一位です。
そのうち6割が捨てられ地球に埋められており、「アイカサ」では傘をシェアすることで、この問題を解決しています。
シェアされる傘は、循環設計を重視しグラスファイバーを使った丈夫な作りで、何度も使用可能です。この傘シェアリングサービス一回の利用でCO2排出を692gも削減できます。
エネルギーの消費や地球環境への負荷を考え、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルで処理することが望まれています。そこで、製品を構成する素材の統一や接着レスなどの取り組みが進められています。
リサイクル技術の向上そのものだけでなく、リサイクル工程で投入される前の分離技術なども不可欠であり、プラスチックの種類や複合材か否かでも異なるリサイクル技術が今後は求められます。
政府が取り組むポリシー策定と法規定の強化
長きにわたる、大量生産・大量消費・大量廃棄型社会の在り方やライフスタイルを見直すことが国民や企業には求められています。
そして、社会における物質的循環を確保することによって、天然資源の枯渇が抑制され、環境負荷の低減を図った「循環型社会」を形成するために政府はあらゆる法を制定しました。
・循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)
・廃棄物の処理、清掃に関する法律(廃棄物処理法)
・資源の有効利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)
・容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)
・特定家庭用機器の再商品化法(家電リサイクル法)
・建設工事にかかわる資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)
・食品循環資源の再生利用促進に関する法律(食品リサイクル法)
・使用済自動車の再資源化に関する法律(自動車リサイクル法)
・使用済小型電子機器の再資源化促進に関する法律(小型家電リサイクル法)
・国による環境物品等の調達の推進に関する法律(グリーン購入法)
これらを遵守することで、天然資源の不用意な消費や廃棄を抑制することに繋がり、その結果として環境負荷が大幅に低減されています。
実例として、容器包装リサイクル法の施行後、一般廃棄物の最終処分量は減少傾向になり、一般廃棄物最終処分場の残余年数は平成7年度で8.5年であったものが、令和3年度では23.5年へと増加しています。
また、一般廃棄物リサイクル率も、平成7年度の9.8%から令和3年度には19.9%と着実に改善されています。
国際社会との連携
現代社会において、優先課題である循環型社会の実現は、国際社会との連携なしには達成は困難です。
国際的協力の重要性
著しい経済発展などにより、これに伴う気候変動や環境破壊の拡大が懸念されています。
世界各国において、従来の生産・消費・廃棄の方向性を大転換し、抜本的な政策改革を推進していくことが重要です。G8で制定された「3Rイニシアティフブ」を受けて、各国と共有しながら、国際社会全体で循環型社会の形成に向け、それぞれの特性を活かしリーダーシップを取っていくことが不可欠です。
世界が進めるSDGsと循環型社会の取り組み
2015年に国連で採択されたSDGs、これは持続可能な社会に向けて世界中のすべての国が取り組むべき目標となりました。しかし、その取り組む手段やSDGs目標期限までの達成度は国によって千差万別です。
例えば、福祉国家でありSDGs達成度1位であるフィンランド。
循環経済・社会の旗手として国際的な地位を築いており、同国の「廃棄物の有効利用」に注目が集まっています。フィンランドの大手製紙・木材製品の総合林産企業であるUPMは、紙やパルプ、合板を製造する際に発生する廃棄物や残りカスを有効活用するプロジェクトを立ち上げました。
製造時に出る残りカスをバイオディーゼル「UPM BioVerno」に精製し、それらはあらゆるディーゼルエンジンに使用可能であり、年産能力は1億2000万リットルに達しています。この「UPM BioVerno」は二酸化炭素の排出量を最大80%も削減することができます。
製造過程で出る廃棄物をくまなく再利用することを目標とし、フィンランド国内の全工場で数年以内に、海外支社では2030年までに達成することを目指しています。ですが、2023年時点ですでに廃棄物の約90%がリサイクルされているということです。
次いで、SDGs達成度ランキング2位に位置するスウェーデンでは、国が主体となり持続可能な社会の推進を長年行っています。
たとえば、同国発祥の世界的に有名である家具量販店のイケアでは、率先してSDGsの実現に力を入れています。生産製品の60%以上に再生可能な素材が利用されていることや、エネルギー利用高効率の家電製品を展開するなど、環境を意識した製品づくりで循環型社会を目指しています。また、自然環境・労働環境・ジェンダーなどの多側面からSDGsを推進しています。
循環型社会におけるSDGsへのスウェーデンの取り組みは、多くの日本企業の参考になるはずです。