脱炭素まちづくりの最前線|その具体的戦略と成功事例とは

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脱炭素まちづくりはなぜ必要なのか

近年、世界的に進んでいる「脱炭素化」。この背景にはCO2排出量の増加があります。

発電所、自動車、飛行機などは私たちの生活に欠かせないものですが、多くの場合でCO2を排出しています。

CO2は気候変動をもたらして地球温暖化が進んだり、限られた資源である化石燃料を消費せざるを得なかったりと問題点が多く、放っておけば将来の人類だけでなく地球上の生物の生命を脅かす原因になりかねません。

 

その対策として現在では、世界中が脱炭素に向けて動いています。脱炭素に向けての取り組みは再生可能エネルギーへの切り替えや廃棄物の削減など様々ですが、その中でも重用視されているのが、脱炭素のまちづくりです。

脱炭素社会への道のりを踏まえて、まちづくりの重要性について見ていきましょう。

 

脱炭素社会へ向けた動き

世界はパリ協定の発効などを通じて、積極的に脱炭素への道を歩み始めています。

その一環として、日本も2020年10月に温室効果ガスの排出を2050年までにゼロにする「カーボンニュートラル(脱炭素社会の実現)」を目指すことを表明しました。

このような取り組みは、私たちが直面している気候変動の問題に真剣に向き合い、持続可能な未来を築くための重要なステップです。脱炭素社会への道のりは困難ですが、実現に向けた取り組みはますます進んでいます。

 

脱炭素型の都市開発を実現するためには、私たちの生活スタイルの変革が不可欠です。

現在、家計支出の約60%は消費によるCO2排出に関連しており、エネルギー使用や商品の選択など、個々人の行動の転換が重要です。

また、デジタル技術の進歩により、家庭でのエネルギー使用状況や行動履歴を把握することが可能になりました。このような環境が整うことで、私たちの行動変容を促すことが容易になっています。

 

再エネルギーを活用したまちづくり

脱炭素まちづくりのためには、再エネルギーを活用することが重要です。

ここでは、再エネルギーの可能性と課題、具体的な手法であるオンサイトPPA事業について紹介します。

特に、エネルギーを活用したまちづくりの具体的な手法と事例、特にオンサイトPPA事業の解説とその効果について述べます

 

再エネルギーの可能性と課題 

再エネルギーは、脱炭素まちづくりにおいて大きな可能性を期待できます。

太陽光、風力、水力、地熱などの再生可能エネルギーは、持続可能な電力供給を提供する可能性があります。またこれらのエネルギー源はクリーンで無限に利用可能であり、CO2排出を削減できます。

 

ただし、再エネルギーの導入にはいくつかの課題があります。

まず発電量は天候や時間によって変動するため、安定供給が課題です。また設備の導入コストが高く、エネルギー効率の向上や経済的な競争力の確保が求められます。

さらに、再エネルギーの導入には土地利用や環境影響への配慮が必要です。

これらの課題を克服するために、技術革新や政策支援が重要です。効果的な政策措置と投資の増加により、再エネルギーは持続可能な未来の実現に向けた鍵となるでしょう。

 

例えば大和ハウスグループでは、再エネルギーへの取り組みの一つとして顧客に対して「オンサイトPPA」を提案しています。

「オンサイトPPA」とは、お客様の施設の屋根などを利用し、無償で再生可能エネルギー発電設備を設置し、発電した電力をお客様の施設に供給するサービスモデルです。


この取り組みにより、顧客は電力料金の削減と温室効果ガス(GHG)の排出削減が可能となり、施設で発電されたクリーンな電力を利用することで、従来の化石燃料に依存した電力供給と比べて、環境への負荷を低減できるのです。


オンサイトPPAは持続可能なエネルギー利用とビジネスの両面で効果を発揮し、顧客の経済的な利益と環境への貢献を両立させる取り組みとして注目されています。

 

市民の行動変容とまちづくり 

脱炭素まちづくりに向けて、市民一人ひとりの行動も重用視されています。

CO2排出量削減のためには、エネルギーの使用や商品選択など行動の転換が不可欠です。次は、市民一人ひとりの行動を促すための施策や、経営モデルについて解説します。

 

行動変容を促す施策とその効果 

市民一人ひとりの行動変容を促すためによく取られるアプローチが、促進したい行動にインセンティブを付けるという方法です。

地域通貨やクーポンなどの換金可能な報酬だけでなく、行動をゲームのように楽しみながら継続させる取り組みも効果的です。

最近ではナッジなどの手法の活用も増えています。ナッジとは、人々の行動を特定の方向に誘導するために、選択の環境や情報提示を工夫する手法のことで、望ましい行動へと導くことができるのが利点です。

 

まちづくりとEBPM 

地域でのまちづくりの政策決定や施策の立案に科学的な根拠を活用するために「EBPM(Evidence-Based Policy Making)」があります。

EBPMは政策の有効性を評価し、地域モデルの構築を促進するための方法として活用されています。

この手法を推進する上で、市民目線での施策検討や行動データの効果検証は重要なポイントです。

 

まず市民目線での施策検討は、市民の実際のニーズや課題を把握するために必要です。

市民の声や意見を集めることで、直面している問題や望んでいる改善点を把握し、それを根拠として施策を立案することができます。

 

また行動データの効果検証によって、その成果や効果を客観的に評価することができます。地域で行われた特定の政策の効果を検証するために、その政策の導入前と導入後のデータを比較するのが一般的です。

このような手法を使い、脱炭素まちづくりを進めることが大切です。

 

日本と世界のまちづくりの成功事例 

最後に、海外や国内の具体的な脱炭素まちづくりの成功事例を紹介します。

 

ロンドンの地下鉄排熱活用事例 

イギリス政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目標として掲げています。この目標の一環として、2025年以降の新築住宅におけるガスボイラーの設置が禁止されることが決定されました。

また、ロンドン北部のイズリントン地区では、地下鉄から発生する排熱を家庭や企業の暖房に活用する世界初のプロジェクトが進行中です。


現在、ロンドンの暖房需要の38%に相当する熱が地下鉄で浪費されていると推定されており、この排熱を冬場の代替熱源として活用することで、効果的なエネルギー利用が可能となります。これらの取り組みによって、イギリスは2050年までに持続可能なエネルギー体制を確立し、地球温暖化防止に向けた重要な一歩を踏み出すことが期待されています。

 

ニューヨークの建物エネルギー効率可視化プロジェクト 

ニューヨーク市は2030年までに建物の40%、2050年までに80%のカーボンニュートラル化を目指しています。その一環として、2020年10月から「大型建物のエネルギー効率の可視化」の取り組みが開始されました。

 

この取り組みでは、約2,300平方メートル以上の建物を対象に、水とエネルギーの利用・排出や効率性を基準に算出し、A~Dの4段階で評価し、建物入り口に等級を掲示することが義務付けられています。管理会社が実施しない場合には罰金が課せられます。

 

2024年には、このエネルギー効率化対策は次のフェーズに入り、一定のエネルギー効率改善指標にそぐわない建物にも罰金が課せられる予定です。建物周辺を通る人々にも建物の等級が見えるようになり、建物所有者に等級の改善を促す効果が期待されています。

これにより、建物のエネルギー効率改善が促進され、ニューヨーク市のカーボンニュートラル化目標の達成に向けた重要な一歩となるでしょう。

 

横浜ブルーカーボンの海の力活用事例 

神奈川県横浜市はSDGs未来都市として、さまざまな気候変動対策に取り組んでいます。

その中でも注目されているのが、海草や海藻類による炭素吸収・固定である「ブルーカーボン」と海洋でのエネルギー利活用によるCO2削減の効果である「ブルーリソース」を活用した独自のカーボン・オフセット認証取引制度である「横浜ブルーカーボン」事業の運営です。

この取り組みは、世界でも唯一のブルーカーボンを活用したカーボン・オフセット認証取引制度として注目されています。

 

脱炭素まちづくりについて、その重要性と促進するための方法を解説しました。脱炭素のためには、再エネルギーの活用など企業や自治体の行動だけでなく、市民一人ひとりの行動変容が不可欠です。紹介した世界の成功事例も参考にしながら、脱炭素のためにできる取り組みを行っていきましょう。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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