SDGsの認知度は年々上がってきていますが、実際にどのような取り組みが行われ、どういった成果が上がっているのかイメージできない人は多いのではないでしょうか。今回は、あらためてSDGsの意味と概要、日本が行っている取り組みから、個人でできるアクションまで解説します。
SDGsとは?
さまざまな社会課題に国際社会全体で取り組んでいこうというSDGs。そもそもどういった理由で始まったのでしょうか。SDGsの意味と世界のスタンダードになるまでの経緯、具体的な内容を解説します。
SDGsの意味と起源
SDGs(Sustainable Development Goals)とは、持続可能な未来を実現するために、2030年までに達成するべき世界共通の目標です。もともとは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継的な取り組みとして立ち上がりました。
2015年9月に開催された国連サミットにおいて「持続可能な開発のための2030アジェンダ」として、加盟193カ国の全会一致で採択され動き出したのがはじまりです。
SDGsは、貧困・健康と衛生・エネルギー・環境・平和など17の項目と169のターゲットから構成されており、「誰一人取り残さない」社会をつくると宣言しています。
具体的な17のゴール
SDGs目標としてゴールに設定される17の項目は以下の通りです。
・貧困をなくそう
・飢餓をゼロに
・すべての人に健康と福祉を
・質の高い教育をみんなに
・ジェンダー平等を実現しよう
・安全な水とトイレを世界中に
・エネルギーをみんなに そしてクリーンに
・働きがいも経済成長も
・産業と技術革新の基盤をつくろう
・人や国の不平等をなくそう
・住み続けられるまちづくりを
・つくる責任つかう責任
・気候変動に具体的な対策を
・海の豊かさを守ろう
・陸の豊かさも守ろう
・平和と公正をすべての人に
・パートナーシップで目標を達成しよう
この17の目標は、さらに分野ごとに4つに分けられます。
目標1〜6:「社会」貧困・飢餓・健康福祉・教育、ジェンダー・水・エネルギー
この項目では、貧困問題、健康や教育、安全な水資源の確保など主に開発途上国への支援が必要な、世界の課題への取り組みが中心になっています。
世界では6人に1人の子どもが、極端に貧しい暮らしを強いられていると言われています。日本では特にジェンダー平等への取り組みが遅れており大きな課題です。
目標7〜12:「経済」雇用・格差・経済成長・生活インフラ
エネルギー問題、雇用や格差、経済成長や生活インフラの整備などが目標項目となっています。児童の強制労働などの問題を解消し、すべての人が働きがいのある人間らしい仕事をできるようにすることなどがターゲットに設定されています。
目標13〜15:「環境」気候変動問題、海と陸の資源、生態系維持のための自然の持続可能性
環境問題が中心となっている項目です。温室効果ガスを原因とする気候変動の対策、海洋ごみの問題解決、生物多様性の確保などが重要なターゲットとして掲げられています。
目標16、17:上記3分野に関する暴力の撲滅、ガバナンス強化、投資促進
目標15までの項目を包括的にとらえ、開発途上国も先進国も一丸となってSDGsを達成するため、枠組みを強化していくための内容となっています。
日本のSDGs取り組みと進捗
SDGsは国際的な取り組みですが、日本ではどのような取り組みが行われ、実際に成果は上がっているのでしょうか。国が政策によって推進しているSDGsの取り組みと進捗状況を見てみましょう。
政府の政策と実績
日本では、2016年に第1回「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合」が開催されました。当時の安倍首相が本部長を務め、全閣僚がメンバーとなり、日本におけるSDGsに関する取り組み事項の決定を行っていくものです。
政府では、SDGs関連の取り組みに、日本円にして合計約4,000億円を投じるとしました。それを受けて2019年に「SDGsアクションプラン2020」を策定し、以下の3つを骨子として取り組んでいくとしています。
SDGsと連携する「Society(ソサエティー)5.0」の推進
SDGsを原動力とした地方創生、強靭かつ環境にやさしい魅力的なまちづくり
SDGsの担い手として次世代・女性のエンパワーメント
2023年の報告書「Sustainable Development Report 2023」によると、日本のSDGs達成度は166カ国中21位という結果でした。中でも「目標4:質の高い教育をみんなに」「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」の二つは取り組みが順調で国際的にも高く評価されています。
一方で、「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」「目標12:つくる責任、つかう責任」「目標13:気候変動に具体的な対策を」「目標14:海の豊かさを守ろう」「目標15:陸の豊かさも守ろう」の五つは深刻な課題があるとされています。
特に大きな課題を抱えているのがジェンダー平等に関する項目です。世界経済フォーラムが毎年発表している「ジェンダーギャップ指数」の2023年度ランキングでは、日本は146カ国中125位で先進国の中では最低レベルでした。引き続き具体的なアクションプランに基づく対応が必要です。
出典・参照:Sustainable Development Report 2023 Rankings
出典・参照:Sustainable Development Report 2023 Japan
出典・参照:内閣府男女共同参画局 ジェンダー・ギャップ指数(GCI)2023年
企業によるSDGsの実践
2017年11月、経団連は行動憲章を改定し、 「Society 5.0の実現を通じたSDGs(持続可能な開発目標)の達成」を内容に盛り込みました。行動憲章の改定は、日本国内の企業に大きなインパクトを与え、企業全体で連帯してSDGsに取り組むことが求められるようになりました。
花王では、SDGsが採択される以前から、日本の課題となっているジェンダー平等に向けた取り組みを積極的に行ってきました。1990年代にはすでに育児支援制度を確立し、女性の結婚や出産後の働き方を改革。育児と仕事の両立を実現するための施策を現在でも行っています。
その結果、2019年には女性管理職比率が21.2%にまで上昇。またグループ子会社2社の社長に女性が就任するなど女性が活躍できる企業のケースモデルを作り上げています。世界的にも取り組みが評価されており、ジェンダー平等の取り組みが優れている世界の企業に贈られる「男女平等指数」(ブルームバーグ社主催)に5年連続で選出されています。
エネルギー問題をイノベーションで解決する取り組みも多くの企業で行われています。NTT東日本では、データセンターの電力使用量を抑えるため「アイルキャッピング」という技術を導入・推進しています。アイルキャッピングとは、効率的な空調環境を作り出す気流制御技術で、空調消費電力の約20%を削減できます。
またLED照明や太陽光発電、壁面緑化や遮熱・断熱コーティングの採用などによって、建物全体の電力使用量も削減。ほかにも、室外機への散水システムの導入で、空調消費電力をさらに約30%削減しています。
出典・参照:花王 2019年度の成果 コーポレートカルチャー
出典・参照:花王 花王、ジェンダーに関する情報開示と男女平等への取り組みが評価されブルームバーグ社の「男女平等指数」に5年連続で選定
出典・参照:NTT東日本 具体的な取り組み
個人がSDGsに貢献する方法
SDGsに貢献できるのは国や企業だけではありません。わたしたち個人個人が取り組めるものもたくさんあります。
日常での小さな一歩
個人にとって、SDGsは決して途方もない取り組みではありません。1人が行えるどんなに小さなことでも、100人で取り組めば大きな力になります。以下、個人で行える代表的なSDGsの取り組みです。
・マイボトルやマイ箸、エコバッグを持ち歩く
・環境に配慮した商品、認定シールが貼られた商品を買う
・地産地消を心がける
・フェアトレード商品を買う
・ネット、本、イベント参加などでSDGsを知る・学ぶ
・SNSでSDGsについて積極的に情報発信する
・家庭で再生可能エネルギー由来の電力に切り替える
また、個人でできるユニークな取り組みとして「ミミズコンポスト」があります。これは、木箱などに入れたミミズに、調理くずや食べ残しを与えて堆肥にしてもらうというものです。この堆肥を利用して食物を育てる、またミミズコンポストを行うというような循環の仕組みができるだけでなく、ごみの減量にもつながります。ダンボールなどで簡単に行えるほか、家庭用にも多く市販されており、海外では広く普及している方法です。
地域社会でのSDGs活動
地域社会では、SDGsの取り組みが地域活性化にもつながるため、積極的に推進されています。政府による「まち・ひと・しごと創生」構想も、地方創生の取り組みの1つです。2014年に閣議決定されたこの地域支援策では、2015年から2019年の5年間にわたる総合戦略と、2060年を目標とした中長期ビジョンが策定されました。これをもとに各自治体で取り組みが進められています。
秋田県の小坂町では、環境に配慮したまちの実現、農家の所得向上や地元企業のビジネスチャンス拡大などを目的に「バイオマス(再生可能な生物由来の有機資源)タウン推進事業」を立ち上げました。この取り組みによって、「菜々の油」という新たな特産物の開発に成功。また、企業との連携により生ごみの堆肥化を実現でき、循環型社会構築に貢献しています。
新潟県妙高市では、公共交通機関など環境にやさしい交通手段の利用を促進するエコモビリティを積極的に導入。カーシェアやデマンド型(利用者の要求に応じて運行)など、DXによる先進的な交通サービスを取り入れ、自家用車で発生するCO2削減に貢献しています。
個人の集合体である地域社会の中でも、わたしたちが協力できることは数多くあります。小さな一歩でも、できることから行動していくことが大切です。
出典・参照:総務省 秋田県小坂町「バイオマスタウン推進事業」
出典・参照:妙高市 生命地域妙高のエコモビリティチャレンジ