日本企業がリードするゼロエミッション実践の具体例

地球環境保護の重要な取り組みの1つに「ゼロエミッション」があります。環境問題に関する話題で耳にすることが多いかもしれませんが、意味をよく理解していない人も多いのではないでしょうか。ここでは、ゼロエミッションという言葉の意味、ゼロエミッションを実践する企業や地域の具体的な取り組みと成果について解説します。

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ゼロエミッションの基本概念を理解する

ゼロエミッションとは、どういうことを意味する言葉なのでしょうか。言葉の定義と取り組む目的、また環境保護との関係も解説します。

ゼロエミッションの定義と目的

ゼロエミッションとは、廃棄物のエミッション(排出)をゼロにすることを指します。正確にいうと、「排出された廃棄物を別の産業で再利用することで、廃棄物の埋め立て処分量を実質ゼロにする」ことを目指すという考え方です。

現在ある埋め立て処分場だけで廃棄物を処理するのには限度があり、20年後にはキャパシティーを超えてしまうと言われています。その解決策として必要とされているのが、ゼロエミッションの推進と実現です。

ゼロエミッションは、東京に拠点を置く国際連合大学が1994年に初めて提唱したことによって広く知られるようになりました。しかし、それ以前から日本ではすでに存在していた考え方で、すでに現在では多くの企業で取り入れられています。

ゼロエミッションと環境保護

ゼロエミッションの推進は、ごみを減らすこと自体にも意味がありますが、ごみを処分する際に排出されるCO2排出量を削減する効果としても期待されています。

今、世界中で起こっている気候変動による災害や食糧難は、CO2をはじめとした温室効果ガスによる地球温暖化が直接的な原因です。このまま廃棄物の排出量が増え続けることで、処理する際のCO2排出量も増え、地球温暖化をますます進行させてしまうリスクがあります。ゼロエミッションの実現は、地球温暖化を抑止するためにも極めて重要なミッションなのです。

ゼロエミッションの具体例と効果

ゼロエミッションの取り組み方は国や企業、団体によってさまざまです。実際に行われている具体的な事例と効果を紹介します。

企業による取り組み事例

積水ハウスグループは、廃棄物のゼロエミッション化を実現した企業の1つです。新築施工現場で発生する廃棄物を27種類に分別し、資源循環センターでさらに60種類に分別。リサイクル鉄やアルミ、コンクリートなどは社外のリサイクル業社に委託、木粉や廃樹脂は自社でリサイクルして製紙業などで再利用されています。取り組みの結果、1棟当たりの廃棄物発生量を5年間で約4割削減することに成功しています。

アサヒビールは、廃棄物の再資源化100%を全工場で達成しています。工場で発生する年間約37万トンの副産物・廃棄物を、牛の飼料などとして再資源化。汚泥、スクリーンかすは有機肥料や堆肥として、ガラスくずなどは新しいビンの原料や建材などに再利用されています。徹底した分別、従業員への勉強会やリサイクル工場への視察などを行い、社内全体で意識向上に努めた結果ゼロエミッションの実現につながりました。

また、経済産業省では、ゼロエミッションの取り組み促進を図る目的で、積極的な取り組みを行う企業をリスト化する「ゼロエミ・チャレンジ」事業をおこなっています。リストにもとづきゼロエミ・チャレンジ企業として公表された企業は、投資家に情報共有されるため、企業イメージの向上が期待できます。
出典・参照:積水ハウスグループ 積水ハウスは「新築施工現場のゼロエミッション」を達成しました
出典・参照:JFS 廃棄物再資源化100%を達成したアサヒビール

地域・自治体による取り組み事例

環境省では、ゼロエミッションを基本構想として掲げた「エコタウン事業」を1997年に立ち上げています。この事業は、それぞれの地域特性を活かし、住民や地元企業と連携して
「エコタウンプラン」を策定し、廃棄物削減やリサイクル推進を行なっていく取り組みです。プランが国から承認されれば、エコタウンに指定され、財政支援を受けられるようになっています。

エコタウン認定第1号となった神奈川県川崎市では、リサイクル施設の整備や地区の共同リサイクルをいち早く行い、2012年には廃プラスチックの処理量10万トン以上を達成しています。香川県の直島町では、エコタウン認定を受けて島内に廃棄物処理施設を建設。隣にある豊島で長らく問題になっていた不法投棄された産業廃棄物の再資源化を実現させています。

現在エコタウン事業の承認を受けている地域は26地域あり、ほかの自治体でも地域特性を活かしたさまざまな取り組みが行われており、全国的なゼロエミッションの波及が期待されています。
出典・参照:川崎市 川崎エコタウン
出典・参照:香川県 製錬施設を活用するリサイクル事業(ハード事業)

ゼロエミッションを実現する技術と方法

ゼロエミッションの実現を目指すにあたって、さまざまな課題を解消するための新たな再利用・リサイクル技術が開発されています。具体的な内容と廃棄物削減にどう貢献するのか解説します。

再利用とリサイクルの技術

日本では3R (Reduce, Reuse, Recycle)政策にもとづいて、廃ペットボトルやトレー、空き缶などを再資源化し新たな製品づくりに活かしています。この際に、純度の高い再生ペット樹脂とリサイクル製品を製造する廃ペットボトルリサイクル技術が使われています。サントリーホールディングスではこの技術を活用し、ペットボトルからペットボトルを再生する取り組みを行ない、石油由来資源を約90%、CO2の排出量を約60%削減することに成功しています。

また廃家電のリサイクル技術も高度化しています。廃家電は有害物質を含んでいますが、レアメタルなど有用な資源の宝庫です。秋田県北部のエコタウン事業では、非鉄金属製錬業などと連携を図り、熱・化学処理技術を使った有用金属の回収が行なわれています。このように、現在では高度な資源回収技術が実現しておきており、環境保全と資源の回収・確保を同時に行えるようになってきています。
出典・参照:秋田県 秋田県北部エコタウン計画について

再生可能エネルギーの利用

ゼロエミッションの実現には、CO2を排出しない新たな燃料や電力として再生可能エネルギーの利用と普及が不可欠です。中でも注目されているのが、バイオマスを含む廃棄物から高効率に電力・燃料を回収する技術です。廃棄物系バイオマスはそのまま埋め立てると環境汚染を引き起こし、焼却処理するにも多くの不都合があります。そこで、近年では堆肥化、メタン発酵、飼料化などの再資源化や、エネルギー利用が進んでいます。

京都市では、バイオディーゼル燃料製造技術を使い、廃食用油を市営バスや収集車の燃料油として再資源化しています。また神戸市では、下水汚泥の燃料化技術で取り出したバイオガスを都市ガスに導入する事業を行なっています。この事業によって年間1,200トンのCO2削減効果があると推計されています。
出典・参照:京都市 バイオディーゼル燃料化事業
出典・参照:国土交通省 こうべバイオガスの現状

ゼロエミッションの未来と課題

技術開発が進んできているとはいえ、ゼロエミッションを実現させるためには、今後ますます国や企業、わたしたち一人ひとりの意識的な取り組みが求められています。目標達成に向けた、今後の展望と課題について考察してみます。

日本のゼロエミッション戦略

日本のゼロエミッション技術は進化してきていますが、まだ解決できていない課題もあります。たとえば、廃棄物を再資源化するときに必要なエネルギーの確保はまだまだ不十分な状況です。また、廃棄物を再利用できる場所へ運ぶ際に必要なエネルギーを、CO2を排出しない別のエネルギーに変えていかなければいけません。

その上で鍵となるのは、やはり前述した再生可能エネルギーのさらなる普及・活用です。ただ、再エネの適地が少ない日本にとって、すべてを再エネに頼ることは難しい状況です。そこで注目されているのが、水素からアンモニアを生成しエネルギーとして活用する方法です。現状エネルギー最終消費の4分の3を占める化石燃料の使用から、オール電化を実現させること、加えて電源を脱炭素化することがゼロエミッション達成への近道といえるのではないでしょうか。

ゼロエミッションのグローバルな動き

世界では、ゼロエミッションに関して高い目標を設定し、よりシビアな対策を掲げている国が多くあります。特に自動車業界では、「ゼロエミッションビークル」などの環境に配慮した自動車の開発が世界的に進んでおり、日本でも日産やホンダなど多くのメーカーが研究・開発をおこなっています。

EUでは、自動車が排出するCO2の排出量を1走行キロメートルあたり95g以下に抑えるようメーカーに求めるCAFE規制を発表。2035年にガソリン車の新車販売を事実上禁止すると表明しました。メルセデス・ベンツなどでは、さらに早く2030年までに全新車販売をEVに切り替えるとしており、その動きは活発化しています。

イギリスでは、2050年までのゼロエミッション達成を目標とした「10-POINT PLAN」を発表。洋上風力発電の導入拡大や、ゼロエミッション航空輸送とクリーンな海上輸送の開発促進など10項目の取り組みを行うことを宣言しています。

2019年時点での温室効果ガス排出量の変化率を見ると、日本が1%増なのに対して、イギリスは37%減となっています。世界の事例にならい、日本でもさらなる対応が求められているといえるでしょう。
出典・参照:環境省 主な国別エネルギー起源温室効果ガス排出量の推移

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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