物流業界の脱炭素化への具体的なステップとは

地球温暖化の影響がますます深刻化する中、物流業界では脱炭素への取り組みが課題となっています。この記事では、物流業界のための脱炭素への具体的なステップ、その重要性について紹介します。

目次
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物流にとってなぜ脱炭素化が重要なのか

まずは、温室効果ガスの排出量と吸収量のバランスと物流業界の関係性、物流による二酸化炭素排出量について具体的なデータを用いて解説します。

カーボンニュートラルと物流業界

国土交通省によると、日本の二酸化炭素(CO2)排出量の部門別内訳において、運輸部門が19.5%を占めています。
また2018年度の日本全体のCO2排出量11.4億トンのうち運輸部門の排出量は2.1億トンです。中でも貨物自動車の排出量は運輸部門の36.6%に相当になりますので貨物自動車の排出量だけでも、日本全体のCO2排出量の約7%に匹敵します。
これらの数字から物流業界や物流部門の削減努力がカーボンニュートラルの目標達成において重要な役割を果たしていることが分かります。

物流によるCO2排出の現状と課題

物流によるCO2排出量の現状を把握する際に重要となるのがスコープ3開示要求です。
スコープ3とは、企業が自身の事業活動における間接的な温室効果ガス(GHG)排出量を評価し、開示することを求められる枠組みのことです。

スコープ3は、企業の価値連鎖(サプライチェーン)における排出量を指し、スコープ1(直接排出)やスコープ2(間接排出)とは異なり、主に事業者が制御できない供給チェーンの上流および下流に関連する排出量を含みます。
しかし現状では、他社を巻き込みながらスコープ3まで脱炭素に取り組んでいる企業はまだ少なくなっています。
スコープ3の取り組みは、サプライチェーン全体の持続可能性を向上させるために重要であり、企業は積極的に外部組織と連携し、協力関係を築く必要があります。

世界と日本の脱炭素政策と物流業界への影響

次は、世界や日本の脱炭素に向けての動向を紹介します。また、それによる物流業界への影響を考察していきましょう。

パリ協定と日本の脱炭素政策

世界的な脱炭素に向けての連携と行動を促しているのが「パリ協定」です。
パリ協定とは、2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択され、2016年に発効した気候変動問題に関する国際的な枠組みのことです。具体的には「地球温暖化を2℃未満に抑える」ための取り組みを目指しています。
各国は自主的な温室効果ガス削減目標(NDC)を設定し、定期的な報告と監視を行います。また、財政支援などの協力も促進され、途上国の脱貧困と持続可能な開発も重用視されている部分です。

日本では、経済産業省が2020年12月、関係省庁との連携により、「2050年カーボンニュートラルに向けたグリーン成長戦略」を策定しました。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出と吸収を合計してゼロにすることを指し、政府は具体的な目標として「2030年までにCO2排出量を25%削減し、2050年までには吸収分を含めて100%の削減を目指すこと」を掲げています。

炭素税と排出量取引制度の影響

脱炭素政策の中にでも物流業界に大きな影響をもたらすとされているのが、炭素税と排出量取引制度の導入です。

まず炭素税ですが、日本の炭素税(地球温暖化対策税)は289円/t-CO2で、EU内で最も高いスウェーデンの約14,400円/t-CO2と大きな差があります。
しかし、将来的には日本でも炭素税が強化される見込みであり、EUの最低水準である約3,000円/t-CO2が物流業界に適用される可能性が高くなっています。この場合、トラック輸送にかかる炭素税は総額2,300億円程度となり、1台あたり年間約1.6万円の炭素税が課されるため、物量業界の大きな経済的負担は避けられません。

次に排出量取引制度についてですが、日本ではCO2排出削減量をクレジットとして売買できる「Jクレジット制度」が企業の環境貢献への取り組みを促進しています。
しかし、落札価格は1887円/t-CO2であり、落札者数も限られていることが難点です。
これに対してEUの「EU-ETS」では、企業は割り当てを超過した排出量を4810円/t-CO2で取引することでCO2削減が促されています。これを受けて、日本でも強制力のある排出権取引の導入やJクレジットの拡充が行われる可能性は高いでしょう。

物流業界の脱炭素化の実行策

続いて物流業界の脱炭素への具体的な取り組みと、その効果を解説します。

具体的な脱炭素化施策とその効果

脱炭素化施策として特に効果が期待されているのが、再生可能エネルギーへの転換です。
特にバイオマス発電は木くずなどを利用し、カーボンニュートラルな発電方法として注目されています。
資源である木くずを燃やす際にCO2の排出するものの、成長過程で同じ量のCO2を吸収しているため、実質的にはCO2排出を増やすことはありません。
また、省エネ設備の導入も代表的な脱炭素化施策です。住宅、工場、公共施設に壁の高断熱化や太陽光発電の設置を施すことが、その一部となっています。
さらに、複数の企業が一つのトラックを利用する共同配送も、脱炭素の配送モデルとして推進されています。トラックの数を減らしてCO2の排出量を削減するだけでなく、空きスペースを有効活用できるというメリットもあります。

脱炭素に向けた物流ネットワークの再構築

物流ネットワークの再構築も脱炭素のために重要です。
CO2削減施策を検討する際は、オペレーションとハードの視点から施策を検討が推奨されています。
オペレーションとは、積載率向上・共同物流・拠点統廃合のような製品の運び方・持ち方を変えること、ハードとは、モーダルシフト(鉄道・船舶・EV車)・太陽光発電導入・EVフォークリフト導入のような設備投資のことです。
これらの施策を実行することで、効率的な経路設計や輸送手段の最適化、輸送距離や時間の短縮、排出量の削減が可能です。

物流企業が行うべき脱炭素へのアプローチ

物流企業が脱炭素化を達成するためには、脱炭素プランの策定と実行が重要です。具体的なアプローチ方法も見ていきましょう。

脱炭素施策の策定と実行

物流企業の脱炭素化を達成するためには、具体的な脱炭素プランの策定とそれを実行することが重要です。
プランの策定では、エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの活用、省エネ装置の導入などの取り組みを計画し、目標を設定します。そして、実行段階では、適切な技術の導入、従業員の意識向上、パートナーシップの構築などを通じて具体的な行動を起こし、脱炭素化を実現していく必要があります。

炭素排出量のモニタリングとデジタルプラットフォームの活用

脱炭素のための中長期的なアプローチとしては、CO2排出量をモニタリングと、外部環境の変化(物流コストの変動やカーボンプライスの変化)に柔軟に適応できるサプライチェーンの構築が必要です。
サプライチェーン構築のためには、ステークホルダーからのデータを収集し、統合するデジタルプラットフォーム(サプライチェーンコントロールタワー/DX基盤)を構築し、ガバナンスを強化することが有効的になっています。

物流業界の未来

最後に、脱炭素化の経済性と効率性を両立させる新しい物流業界の形について紹介します。また、脱炭素化がもたらす可能性やサステナブルな物流業界のビジョンも見ていきましょう。

脱炭素化と経済性の両立

脱炭素化と経済性の両立を図るため、物流業界では効率的なルート設計、共同配送、電動化、スマートテクノロジーの活用など、環境に配慮した新しい取り組みが進んでいます。これにより、輸送効率の向上やエネルギー効率の改善によるコスト削減が実現され、脱炭素化と経済性の両立を実現する新たな物流の形が模索されています。

サステナブルな物流業界のビジョン

物流業界の脱炭素化は、持続可能な未来の実現に欠かせません。再生可能エネルギー利用や電動化、効率化技術の導入は、CO2排出を大幅に削減し、環境に優しい物流を実現します。

サステナブルな物流業界の今後のビジョンとしては、クリーンな運送手段、デジタル技術の活用などが促進され、CO2排出削減とリソース効率化を実現しながら、社会と環境に貢献していくでしょう。

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この記事を書いた人

環境課題とAIなどの先端技術に深い関心を寄せ、その視点から情報を発信する編集局です。持続可能な未来を構築するための解決策と、AIなどのテクノロジーがその未来にどのように貢献できるかについてこのメディアで発信していきます。これらのテーマは、複雑な問題に対する多角的な視点を提供し、現代社会の様々な課題に対する理解を深めることを可能にしています。皆様にとって、私の発信する情報が有益で新たな視点を提供するものとなれば幸いです。

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