深刻な地球温暖化が進み、世界的に脱炭素化の動きが加速する中、再生可能エネルギーの必要性が急速に高まっています。今回は、再生可能エネルギーの種類と特徴、最新の技術動向、日本および世界の再生可能エネルギー政策と将来の展望について解説します。
再生可能エネルギーの基礎知識
そもそも再生可能エネルギーとはどのようなエネルギーを指すのでしょうか。再生可能エネルギーの基本概念とその種類、具体的な特徴や活用事例について見ていきましょう。
再生可能エネルギーの種類と基本概念
再生可能エネルギーとは、太陽光や風力など自然界に常に存在しているエネルギーを指します。石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料が有限な資源であるのに対し、再生可能エネルギーは枯渇しない資源です。また、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出しません。さらに、どこにでも存在する自然エネルギーのため、海外から輸入する必要がなく、国内生産が可能です。
再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中およびその他の自然界に存在する熱(温度差熱利用、雪氷熱利用など)、バイオマスの7種類に大別されます。
各エネルギー源の特徴と活用事例
・太陽光発電
ソーラーパネルで太陽の光を取り込み発電する方法です。設置する地域に制限がなく、屋根などのデッドスペースへ取り付けられるのがメリットです。また、送電設備のない場所でも発電可能で、非常用電源としても使用できます。
・風力発電
ブレードと呼ばれる羽を風力で回転させ、そのエネルギーを電気に変換する方法です。陸上、洋上問わず設置でき、風さえあれば夜間でも発電できます。大規模な運用ができれば発電コストを抑えられるほか、エネルギーの変換効率が高い点もメリットです。
・水力発電
高所から低所へ流れる水の力で、設置してある水車を回転させて発電する方法です。天候や気候などの自然条件に左右されないため、安定したエネルギー供給を長期的に行えます。大規模なダムだけでなく、河川の水、農業用水、上下水道などの利用も可能です。
・地熱発電
地下にあるマグマの熱で発生した蒸気でタービンを回して発電する方法です。総発電電力量は少ないものの、安定して発電できる純国産エネルギーとして古くから注目されています。また、発電に使用した高温の蒸気や熱水は、農業や魚の養殖、暖房などにも再利用できます。
・太陽熱利用
太陽の熱を集熱器に集め、熱媒体を温めることで給湯や冷暖房などに活用する方法です。エネルギー源そのものの導入コストがかからず、システムが簡単なため専門知識が要らず手軽に導入できます。
・温度差熱利用
地下水、河川水、下水などの水源を熱源とするエネルギー利用方法です。ヒートポンプを用いて、水の持つ熱を給湯や冷暖房のエネルギーに利用します。熱源が身近にあるため、温室栽培や融雪用としての利用も可能です。
・雪氷熱利用
降った雪や冷たい外気で凍らせた氷を保管しておき、食品の冷蔵・冷凍や屋内の冷房として活用する方法です。適度な温度と湿度を保てるため野菜などの保存に多く利用されます。冷房として使用する場合、一般的なエアコンに比べてコストを大幅に抑えられるのがメリットです。
・バイオマス発電
バイオマス資源を直接燃焼したり、ガス化したりすることで発電する方法です。バイオマス資源には建築廃材や家畜の排泄物、食品加工廃棄物など様々なものがあります。燃料さえあれば安定して電気を供給できる点、廃棄物の減少や再利用につながる点がメリットです。
再生可能エネルギーの最新技術と展望
再生可能エネルギーの技術は、日々進化を遂げています。最新の再生可能エネルギー技術がもたらす社会への影響、世界の再エネ政策と日本の位置づけ、将来の展望について解説します。
イノベーションによる再生可能エネルギーの進化
従来の再生可能エネルギーだけでなく、イノベーションによる新しいエネルギー源の追求も着実に進められています。とりわけ、政府のエネルギー政策である第6次エネルギー基本計画において重要なエネルギーと位置付けられているのが、水素エネルギーと燃料アンモニアです。
水素には、グレー水素・ブルー水素・グリーン水素がありますが、再生可能エネルギーで製造されたグリーン水素は発電時にCO2を排出しないのが特徴です。また水素は、石油や天然ガス、メタノールやエタノール、下水汚泥、廃プラスチックなど様々な資源から製造できます。国内で資源調達できるため、今後の重要なエネルギー源として注目されています。
燃料アンモニアも同様に、CO2を排出しないエネルギー源です。アンモニアだけをエネルギー源にできるのが理想ですが、石炭に混ぜて燃やすことでもCO2の排出量を抑えられます。生産・運搬・貯蔵などの技術やサプライチェーンも確立されていることから、早期の実用化が見込める次世代エネルギーと目されています。
出典・参照:資源エネルギー庁 次世代エネルギー「水素」、そもそもどうやってつくる?
出典・参照:資源エネルギー庁 アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先
世界の再生可能エネルギー政策と日本の役割
2015年に採択されたパリ協定に基づき、世界では再生可能エネルギーの利用推進を軒並み強化しています。たとえばスウェーデンでは、豊富な自然と水資源を最大限に活用し、いち早く再エネの導入を推進。EU全体で掲げられた温室効果ガス削減の目標を予定よりも4年早く達成し、2017年には再生可能エネルギーの割合を54.5%にまで引き上げています。
日本でも2050年のカーボンニュートラルに向けて様々な取り組みがなされていますが、国内の再生可能エネルギーの比率は2020年時点で約19.8%となっています。3割以上を実現しているドイツやイギリス等に比べて、大きく水を開けられているのが現状です。ましてやGDPが世界3位の経済大国であり、CO2を多く排出している日本は、先陣を切って再生可能エネルギーへの転換を図っていく責務があると言えるでしょう。
出典・参照:海外電力調査会 各国の電気事業(2019年版)スウェーデン
出典・参照:資源エネルギー庁 7.再エネ 主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較
出典・参照:IG証券 世界の国内総生産(GDP)ランキング トップ10
再生可能エネルギー導入のメリットと課題
再生可能エネルギーの導入は環境面、経済面において大きなメリットがあります。その一方で抱えている様々な技術的課題を解決していくことも必要です。
環境と経済への影響
再生可能エネルギーを導入する環境面での最大のメリットは、温室効果ガスを排出しない、増加させないという点です。温室効果ガスは地球温暖化の大きな要因であり、パリ協定では
温室効果ガスの具体的な削減目標が掲げられています。再生可能エネルギーへの切り替えは、この目標を達成する上で必達事項だと言えるでしょう。
経済面のメリットは、エネルギー自給率の向上につながるという点です。日本のエネルギー自給率は先進国の中でも極めて低く、2018年時点でわずか11.8%にとどまっています。エネルギーの大半を海外からの輸入に依存しており、国際情勢などの影響でエネルギーを安定供給できなくなるリスクを常に抱えている状況です。そのため、再エネの導入を積極的に推進し、エネルギー自給率を上げていかなければいけません。
出典・参照:関西電力 日本のエネルギー事情 エネルギー資源の乏しい日本
技術的な挑戦と解決策
再生可能エネルギーは様々な可能性を秘めている一方で課題も多く存在します。たとえば太陽光発電や風力発電は天候や気候に左右されやすく、供給の不安定さがウィークポイントになっています。この課題を解決する技術として、VPP(バーチャルパワープラント)が注目されています。VPPとは、再生可能エネルギーや蓄電池、電気自動車などの小規模なエネルギーリソースをIT技術で制御・集約し、一つの仮想発電所として機能させる技術です。
VPPにはデマンドレスポンスという電力の需給バランスを調整する仕組みがあり、エネルギーを無駄なく効率的に使えるようになります。また、点在する小規模な発電設備から電力を集めて供給できるので、災害時の大規模な停電リスクを軽減する効果も期待されています。すでに世界中で先行事例があり、世界最大のVPPとして知られるオーストラリアのSA VPPなどを始め、着々と普及が進んでいます。
また、日本は依然としてCO2を排出する化石燃料にエネルギー資源を依存しており、なおかつ前述したように国内自給率が低い点が大きな課題となっています。その中で注目されているのが、CCS・CCUS技術です。CCS・CCUSとは、工場などから出るCO2を大気中に排出される前に回収し、地中深くに貯留する技術です。回収・貯留したCO2を再利用することで、排出を実質ゼロにすることが可能になります。
国内では、北海道苫小牧市での実証実験や、ENEOSとJ-POWERによる共同事業など様々な関連プロジェクトが進められており、今後も多くの企業の参画が予想されます。